TOB(株式公開買い付け)合戦に巻き込まれた末に、外資系投資ファンドと組んで株式を非公開化したユニゾホールディングスが4月末、経営破綻した。同社は元東証1部上場で、もともと、みずほ銀行系の中堅不動産会社。非公開化のために借り入れた約2000億円の資金返済を優先したことが致命傷となり、最悪の結末を迎えた。
一方、同じみずほ銀行系の不動産会社にヒューリックがあるが、今や業界準大手の一角を占めるまでに成長を遂げた。
実はユニゾ、ヒューリックはいずれも敵対的TOBの洗礼を受けたことで共通する。何が今日の両社の明暗を分けたのか?
前代未聞の従業員買収があだに
ユニゾは4月26日、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、同日付で保全・監督命令を受けた。負債総額は約1262億円で、今年最大の倒産劇となった。
事の発端は2019年7月にさかのぼる。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)がユニゾへの敵対的TOBを開始し、これに対抗する形で、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループがユニゾ経営陣の賛同を得てTOBに参戦。HISのTOBを阻止することに成功した。
ところが、今度はユニゾ側が突如、フォートレスのTOBへの賛同を撤回し、反対に回ったため、再び敵対的TOBの渦中に身を置くことに。ここからユニゾの迷走が始まった。フォートレスのTOBは7カ月に及ぶ異例のロングランとなった末に不成立となったが、これで終わりではなかった。
ユニゾは従業員による買収(EBO)を通じて株式を非公開化する策に出たのだ。株式市場から退出する非公開化は、“究極の買収防衛策”とされる。
非公開化の際、当該企業の経営陣による買収(MBO)というケースはあるが、従業員による買収は上場企業として前代未聞だった。
この時、約2000億円の買収資金を用立てたのが米投資ファンドのローンスター。当初、HISがTOBで提示したユニゾ株の買付価格は1株3100円。それがユニゾ従業員による買収段階では6000円に吊り上がった。結果、買収資金は雪だるま式に膨らんだ。
非公開化後のユニゾを襲ったのがコロナ禍。ホテルの宿泊需要が消失し、オフィスビルの稼働率も低下した。こうした中、ユニゾは米国ファンドへの資金返済のため、手持ち不動産を次々に売却。資金繰りは綱渡り状態が続き、破たん懸念がかねて取りざたされていた。
みずほ、TOB騒動を静観
ユニゾは旧日本興業銀行系の常和興産を前身とする。東証2部を経て2011年に東証1部に昇格(2020年6月上場廃止)。2020年まで約10年間、ユニゾ社長を務めた小崎哲資氏は旧興銀の出身(みずほ銀行副頭取、みずほフィナンシャルグループ副社長などを歴任)。現在の山口雄平社長は三和シャッター工業などを経て、2012年にユニゾに入社した。
前任の小崎氏の社長在任中は、みずほ銀行の融資シェアを意図的に落とするなど、古巣との距離を置いた。このため、ユニゾがTOB合戦の標的になった際も、みずほグループとして救いの手を差し伸べることもなく、静観を決め込んだとされる。ユニゾは非公開化に伴い、みずほグループから離脱した。