コスト削減の注意点

業績改善・財務体質強化につなげるために、ムダな費用を見直しコスト削減をするとはいえ、むやみに実行すればよいわけではない。削減するコストの種類や削減の仕方によっては、売り上げ減少など逆効果となるリスクがあるため、注意が必要だ。例えば、コスト削減に伴い製品やサービスの質が低下すると客離れが起こり売り上げにマイナスの影響を与えかねない。

また労働効率が悪くなれば現場レベルで不平不満が生じたり、従業員のモチベーションが低下したりといった可能性も考えられる。現状を改善するためのコスト削減には、多少の痛みが必要になるものだ。しかし現状やコスト削減の必要性を従業員にも理解してもらい、全社一丸となってコスト削減に努める配慮も必要である。

コスト削減の取り組みの成功事例

効果的なコスト削減を行えるよう、コスト削減に取り組み、業務・業績改善に成功している中小企業の事例をいくつか紹介しよう。

・現場に即したITツールの活用で作業時間、人為ミス、コストの削減に成功
金属プレス加工製造業のA社は、生産管理のシステム化により時間あたりの出来高や生産ラインごとの一人あたりの生産性などについて見える化を実施。これにより業務効率の改善が進み、残業手当の縮小につなげた。次いでデジタル化を間接部門にも広げ、単純作業の合理化に着手。具体的には、給与明細を電子化し、従業員のパソコンや携帯端末へ配信した。

これにより1ヵ月あたり半日分の作業時間の短縮に成功。用紙やインク、封筒、のりなどの消耗品費が削減した。同社では、IT化する際に現場の問題点や改善事項を徹底的にヒアリングしている。最終的に現場が何を望んでいるかを意識したことが成功へつながったと振り返っている。

・柔軟な働き方への対応により、優秀な人材定着、通勤手当削減に成功
サービス業のB社は、新規採用・新人育成にかかるコスト面での課題を認識し、既存社員を定着させることに注力した。社員それぞれの事情や要望を考慮し、働きやすい環境づくりに着手。この際、「社員の利益は会社の利益にもつながる」ことを全社員の意識に働きかけ、理解を得ることに注力した。

例えば、社内に乳幼児がいる場合、おむつ替えの一時的な時間ロスや、他の従業員の集中力妨害といったリスクがある。しかし子どもの病気などで急きょ欠勤となった際の業務対応などに比べると当事者を含めた会社全体での利益はより大きい。結果的に採用・育成コストや通勤費などの削減はもちろん、優秀な人材の定着、労働意欲の活性化に成功した。