コスト削減の方法
ここからは、実際にコスト削減を進めていくための方法を説明する。いくつかのステップを踏む必要があるため、手順通りに見ていこう。
社内の課題と現状コストの把握
まずは、社内の課題と現状コストを把握することから始めよう。ムダなコストを把握するには「どのコストがどれだけかかっているのか」について業務別で確認することも大切だ。ただコストは、大きく直接コストと間接コストに分けられる。このうち複数の製品やサービスにまたがる間接コストは、把握しにくい場合が多い。間接コストを把握するには、ABCという方法がある。
ABCとは「Activity Based Costing(活動基準原価計算)」の頭文字を取ったものを指す。製品やサービスごとの間接コストをアクティビティ(活動)単位に分割し、各アクティビティがどれだけ資源を消費するかを「リソース・ドライバー」で設定すればよい。
コスト削減の目標設定
現状コストを把握し削減可能なコストを確認できたあとは、削減目標を設定する。いつまでにどれくらいのコストを削減するのか、できるだけ数値で明確化させるのがポイントだ。目標を数値で提示することで従業員もコスト削減の必要性や進捗状況を理解しやすくなり、モチベーション低下も防ぎやすいだろう。
ただし目標数値が高すぎるとかえってモチベーションが低下しかねないため、注意が必要だ。目標となる数値を設定したあとは、具体的な削減方法や手段についても検討しよう。
コスト削減目標の共有・実行
コスト削減は、経営者側からのトップダウンではなく社内の全員がコスト削減意識を共有するほうが成功しやすい。削減目標およびその方法を社内で共有し実行しよう。このとき、その目標数値設定の根拠や、部署間での公平性を従業員に対してきちんと説明することが大切だ。
コスト削減の分析・改善
コスト削減の実行が始まったあとは、実際にどれくらいのコストを削減できたか期間を設定して進捗の確認・共有を行う。最初に設定した方法で効果が現れない場合には、問題点の分析が必要だ。削減手法や目標設定など改善点を見いだし修正する。コスト削減に成功するには、実行・分析・改善の反復が欠かせない。
【工場・建設業・飲食業】事業現場別コスト削減を進めやすくするIT推進アイデア
効率よくコスト削減をするためには、IT化を推進するのもおすすめだ。ここでは、すぐに取り組みができるようなコスト削減のアイデアを工場(製造業)、建設業、飲食業に分けて紹介していく。
工場(製造業)
工場(製造業)の場合、IT活用により工場内のムダをなくすことができれば、品質維持や作業効率化、生産性向上を図りながらコスト削減を推進しやすい。例えば、実績データ入力には音声認識入力技術の導入、検査仕様書などのデジタル化などで作業時間や場所のムダをなくすことも選択肢の一つだ。
音声認識入力にするとハンズフリーで自動入力され、帳票への手書きやExcel利用の場合に比べて入力や集計作業時間の削減や効率化が図れる。また検査仕様書は、バーコードやQRコードを読み取ることで仕様書が画面に表示されるようなり、管理する手間や保管場所から探して現場まで持ってくる時間の削減につながる。
工場や作業現場が複数に分かれている場合でも共有化しやすくなるため、大幅なコスト削減も期待できるだろう。
建設業
建設業では、業務管理システムの導入によりコスト削減を図りやすくなる。例えば、資料や帳票類をデータにして作業現場で必要な資料などタブレット上で確認できるようにしておけば、現場に持ち出す必要や紛失リスクをなくせるだろう。また保管や管理にかかる手間や印刷費用も削減できる。工程管理など工事に関するすべての情報をIT化してクラウド上で管理するのも効果的だ。
営業・現場・経理など各部門の進捗状況を共有できるため、情報伝達や業務効率の向上も期待できる。また「誰がどの作業をしているのか」といった現場の状況把握がしやすくなるため、作業員の安全・健康面でのリスク回避や労災防止につなげやすい。中長期的な視点からも不要なコスト削減ができそうだ。
飲食業
飲食業では、業務時間や仕入れのムダをなくすことでコスト削減を推進しやすい。そのためには、レジ業務や予約管理、仕入れ管理などのIT化がおすすめだ。すでにキャッシュレス決済を導入している飲食店は多いかもしれない。しかしこれに加えてPOSレジを導入し、レジでのやり取りデータをクラウド上で管理できるようにするとレジ業務の効率化が図れる。
また売り上げデータをパソコンやスマホ上で確認できるため、売り上げ分析もしやすい。加えて、仕入管理システムを導入すれば発注・仕入管理にかかる時間や人員を削減できる。仕入品が自動的にデータで管理されるため、入力の手間やミスを大きく減らすことができるだろう。過去分の発注実績を簡単に確認できるため、過剰発注防止や仕入れコスト削減につなげやすい。