インボイス制度導入のメリット・デメリット
次にインボイス制度導入のメリット・デメリットについて見ていこう。
インボイス制度のメリットは取引先の確保
インボイス制度の代表的なメリットには、以下の3つがある。
- 取引先の確保ができる
- 電子インボイスも導入すれば、業務の効率化も可能
- 制度への対応に当たり、補助金が活用できる
・取引先の確保ができる
買手である取引先が仕入税額控除を適用するためには、インボイスが必要だ。そのためインボイス制度を導入している事業者と取引する必要がある。もし売手である自社がインボイス制度を導入しないと、今の取引先(買い手)から仕事を受注できない可能性がある。
一方、取引先にとっては仕入税額控除を適用するため、相手先を選定するうえで「インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)かどうか」が大きなポイントになる可能性も高い。その場合、自社がインボイス制度を導入することで新たな取引先が見つかることもあるだろう。
・電子インボイスも導入すれば、業務の効率化も可能
電子帳簿保存法の改正などにより、メールなど電子データで受け取った領収書や請求書などは、一定の要件を満たせば、紙に印刷せずに電子データとして保存できる。(2024年からは電子データでの保存が義務化される)
実は、電子データで受け取ったインボイスも電子データとして保存が可能だ。電子データ形式の適格請求書(電子インボイス)の送付や保管をすれば、請求書を印刷して保存したり、得意先へ郵送したりする必要がない。
また紙の請求書のように保管スペースもいらないため、経費の削減や業務の効率化も可能となるメリットがある。
・制度への対応に当たり、補助金が活用できる
インボイス制度の導入には、一定の経費が必要になるケースもあるが、制度への対応に当たり補助金を活用できるメリットがある。例えば、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金の活用が可能だ。
【IT導入補助金】
中小企業・小規模事業者がITツールを導入した費用について、一定金額を補助するものだ。IT導入補助金のなかに「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」がある。これは、インボイス制度の対応のためのITツール導入についても適用できるため、要件を満たす場合は積極的に利用したい。
【小規模事業者持続化補助金】
中小企業・小規模事業者が販路開拓などの取り組みをする場合に、経費の一部を補助するものだ。この補助金は、インボイス制度の導入など今後直面する制度変更に対応するために設けられている。そのためインボイス制度の導入を進める場合は、小規模事業者持続化補助金を適用できる可能性が高い。
インボイス制度のデメリットは負担の増加
インボイス制度の代表的なデメリットは、以下の2つだ。
- 消費税の納税義務が発生する
- 業務の負担が増加する
・消費税の納税義務が発生する
免税事業者がインボイス制度を導入すると消費税の納税義務が発生する。以下の具体例で消費税の負担額を見てみよう。
【具体例】
・売上:990万円(内消費税額90万円)
・仕入れや経費:550万円(内消費税額50万円)
※すべての支出でインボイスの交付を受けていると仮定
このケースにおける納める消費税は、以下の通りだ。
- 売上にかかる消費税90万円-仕入れや経費にかかる消費税50万円=納める消費税額40万円
原則毎年の課税売上高が1,000万円を超えない場合は、消費税の免税事業者になるため、上記の40万円は今まで納める必要はなかった。しかしインボイス制度を導入した場合は、こういった消費税を納める必要がある。つまり今までより40万円の負担増となってしまうというわけだ。これは、小規模の事業者にとっては、大きな負担となる。
ただし2023年10月1日~2026年9月30日までは、売上の消費税額の8割を仕入税額控除にできる「2割特例」がある。この特例を使うと、「売上にかかる消費税×2割」を納税額とすることが可能だ。つまり上記の具体例で特例を受けた場合、「売上にかかる消費税90万円×2割=18万円」となる。特例により納める消費税が40万円から18万円となり22万円分の負担を抑えることが可能だ。
しかしそれでも今まで免税事業者だったものからすると負担増になるのには変わりない。
・業務の負担が増加する
後述するが、インボイスにできる請求書や領収書、レシートには、記載すべき事項が決まっている。そのため請求書などのフォーマット変更が必要だ。ほかにもインボイスの発行や保存など多くの業務負担が発生する。