携帯苦戦の理由は「平成」のままのビジネス感覚
そもそも楽天の携帯事業が苦戦しているのは、基地局の整備費用のせいではない。ビジネスモデルが古いのだ。自前の携帯電話回線を整備して利益を上げられたのは、携帯キャリアがドコモの「iモード」をはじめとするモバイル通信の情報プラットフォームを独占していた時代の話だ。
「ガラケー」と呼ばれるフューチャーフォン全盛期が、そのピークだった。携帯キャリアはアプリや情報サービスを提供する事業者からプラットフォーム使用料金、携帯ユーザーからデータ通信料金を「両取り」して莫大な利益を上げることができた。
ところが2007年に米アップルが「iPhone」を発売し、スマホ時代が到来すると様相は一変。プラットフォームの主導権は携帯キャリアから、アップルと「アンドロイドOS」を提供する米グーグルへ移行。国内携帯キャリアのプラットフォーム事業は、事実上消滅している。
残る収益源はデータ通信料金のみだ。アップルやグーグルが携帯キャリア事業に参入しないのは、儲からないから。設備投資は重い半面、競争が激しく通信料金の値上げは期待できない。ソフトバンクまでは、ぎりぎりガラケー時代の恩恵を受けられた。しかし、楽天はスマホ時代に入ってからの参入で、いきなり「儲からない市場」に飛び込んでしまったわけだ。
携帯キャリアが儲かったのは「平成」まで。「令和」の時代に利益をあげるのは、そもそも難しかったのだ。楽天とのローミング契約を拡大したKDDIも、「令和」の新たな収益源としてスタートアップのM&Aに力を入れている。楽天の失敗は「平成」の経営感覚で携帯キャリア事業に参入したことにある。
文:M&A Online