自宅をいったん売却した後に、その自宅に住み続けられる仕組み「リースバック」が注目を集めている。自宅を持ち家から賃貸物件に切り替えるイメージだ。売却によってまとまった資金が手に入るため、リタイア後の資金調達という側面から魅力が認知されている。

本記事では、リースバックの仕組みやメリット・デメリットについて解説していく。

「リースバック」の仕組み

所有不動産を活用して資金調達 ! 「リースバック」を高齢者が利用するメリットとは ?
(画像=Imagepocket / stock.adobe.com)

リースバックとは、自宅など所有権がある不動産を不動産会社や投資家に売却し、同時に売却先と賃貸借契約を締結することで、そのまま同じ物件を使い続けられる仕組みを指す。

一般的に不動産を売却すれば買い主の所有物になってしまうため、売り主は別の物件へ引っ越すことが必要だ。しかしリースバックの場合は、賃貸借契約に切り替わるため、自分の所有物ではなくなっても引っ越さずに自宅に住み続けることができる。

その他にも近年は、リタイア後の世代などに向けた商品として「リバースモーゲージ」という商品が少しずつ知名度を上げている。これは、自宅を担保に融資を受けて自宅に住み続ける仕組みで、死亡後に不動産の所有権が移転するものだ (借り入れ分を相続人が返済するなどの選択も可能) 。

どんな人に向いている ?

リースバックを利用する大きなメリットの一つが相続対策につながることだ。不動産は、現金や株式など換金性が高い財産と異なり、相続時に分割しにくい性質がある。例えば子どもや配偶者など相続人が複数いる場合、物件を共有名義で登記すること自体は可能だ。

しかし、共有名義の人が別々の場所に住んでいる場合、物件の一部を持つことはできても使用する (住む) ことはできない。また事情が変わって売却する場合は、共同所有者の同意が必要となるため、手続きが煩雑になりがちだ。

その点、リースバックを利用し生前に自宅を売って所有権を手放しておけば、相続の対象となる財産を整理できる。場合によっては、スムーズな相続につなげられる可能性もあるだろう。

相続税が払えない ?

2015年度の相続税に関する法改正では、以下のように基礎控除額が変更された。

・改正前:5,000万円+1,000万円×法定相続人数
・改正後:3,000万円+600万円×法定相続人数

例えば法定相続人が3人の場合なら改正前の基礎控除額は8,000万円だったが、改正後は4,800万円となる。課税対象が拡大したことに伴い相続税の課税対象者の構成比は、改正前の4.4% (2014年) から8% (2015年) に倍増。2020年には8.8%まで増えている。1割近くの人に相続税が発生しているため、決して金持ちだけがかかる税金ではないことは認識しておきたい。

特に相続財産に金額の大きな不動産が含まれる場合は、注意が必要だ。それでは、相続税の課税対象になるとどのようなことに困るのだろうか。基本的に相続税は、現金で納める必要があることから、遺産に現預金が少ない場合は問題となる。例えば財産の多くが不動産で相続人がまとまった現金を持っていない場合は、相続税を納められない。

相続税の納付期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」であるため、現金がなければ不動産を売却して納税資金を捻出することも必要だ。ただし不動産は瞬時に現金化できるわけではなく、売却にはそれなりの時間がかかる。しかし、リースバックであれば手間をかけず費用を事前に用意することができるのだ。

もちろん相続税には「物納する」という制度もあるが、結局不動産を手放すのなら精神的・時間的に余裕のあるうちに準備を進めたほうが賢明だろう。

ほかにもメリットあり

リースバックによりまとまった資金が手元に入ることで、シニア層はリタイア後の生活資金も確保できる。また、住宅ローンの返済にまとまった資金が必要な人にとっても、リースバックの仕組みは役立つ可能性があるだろう。

すでに触れたが、それなりに年齢を重ねたうえで住環境を大きく変えることは、精神面や経済面で大きな負担を伴う。まとまった資金を得てそのまま同じ家に住み続けられるのであれば、引っ越し費用もかからない。しかも自分の所有物ではなくなるため、マイホームとして持ち続けている間は払い続けなければならなかった固定資産税の支払いも不要になる。

家の大きさによっても異なるが、固定資産税は年間数十万円かかるケースも少なくない。そのため、この負担を軽減できればリタイア後の生活にゆとりが出るだろう。

注意したいデメリットも

リースバックには「物件名義が変わる」というデメリットもある。物件名義が変わってしまうと自宅を資産として相続人に引き継がせることはできない。ただし「数年後に子どもが買い戻す」といった条件付きのリースバックもあるため、そういった商品を利用することでこのデメリットは解消できるだろう。

また、リースバックでの売却価格は一般的な売却に比べると低くなりやすい。これは、不動産会社が物件購入および売却時に行う修繕費用などが織り込まれているためだ。加えて、見かけ上はマイホームと変わらないが、実際は賃貸契約となる点にも注意したい。例えば、賃貸借契約の満了時に契約が更新されず、退去を迫られる可能性もあることは頭に入れておこう。

メリット・デメリットの比較検討を

リースバックの利用でまとまった資金を得られることは、大きなメリットだ。しかしリタイア後の生活にゆとりを持たせるつもりが、一転して住居を失ってしまっては元も子もない。そうならないためにも、リースバックのメリットやデメリット、自分の資産状況をしっかりと踏まえたうえで利用を検討することが大切だ。

(提供:大和ネクスト銀行


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