この記事は2023年6月5日に「The Finance」で公開された「2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>」を一部編集し、転載したものです。


2023年4月25日(火)、セミナーインフォ主催 ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」が開催された。

金融業界にもデジタル化の波が押し寄せ、大きな変革が求められている。
Pegaのお客様は近年の不透明な社会環境においてもDXを推進し、多くの企業・組織において競合を引き離し、顧客サービス向上のための革新を継続されている。

本セミナーでは、国内メガバンク、クレジット業界のお客様、海外大手金融機関事例をご紹介し、お客様がPegaで実現されたDXについて解説した。
基調講演では、アフラック生命保険様をお招きし、業務変革を支えるDX推進のお取り組みについてご紹介いただいたほか、事例講演では、SOMPOひまわり生命様より開発期間、コスト大幅削減につなげたPegaの活用方法についてお話しいただいた。
業務のスマート化を促進し、コストや開発期間の削減から収益向上につなげるためのインサイトを得られるセミナーとなった。

「業務変革を支えるアフラックのDX推進」

2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=mapo/stock.adobe.com)

【講演者】松尾 栄一 氏
アフラック生命保険株式会社
執行役員

<アフラックとは>

『「生きる」を創る。』をブランドプロミスに掲げ、1974年に日本初のがん保険とともに創業した。2022年3月時点で、契約者数は1,473万人、保有契約件数は2,368万件だ。

社員数は5,099名、そのうちIT・デジタル部門は約470名、協力会社より約2,440名を迎え一緒に働いている。本日は弊社の規模感を念頭に置いて、ご清聴いただければと思う。

<アフラックのDX推進(DX@Aflac)>

アフラックでは3本の柱を軸に「DX@Aflac」の名のもと、DXを加速している。

1つめはコアビジネス、生命保険事業に資する領域だ。お客様のニーズをとらえた新たな商品やサービスを、デジタル技術を活用して提供することが中心になる。

2つめは、データエコシステムの構築、ヘルスケアサービス、スマートシティなど生命保険事業領域の枠を超えた新たな領域だ。これら2つの領域において、新たな価値の創出を目指す。

3つめの柱として大事にしているのが、DX推進態勢の基盤となるインフラ、組織、人財、管理だ。プラットフォームの構築のみならず、シンプルかつ柔軟性のあるITアーキテクチャの実現、データ分析基盤の強化、専門組織の設置や文化の醸成、人財の育成を基盤としてDX推進に注力している。

<ADaaS-顧客接点における変革>

弊社は顧客接点における変革を進めている。リアルとデジタルを融合し、いつでも・どこでも・だれでも必要なサービスを受けられる仕組みを構築し、お客様に感動的なユーザー体験を提供することが、弊社の目指すDXの全体像だ。

たとえばリアルな代理店店舗では電子申込、XRデバイス、アフラックミラー(店舗用)やARサービスを提供し、デジタルの代理店ではオンライン相談、AIを活用した募集人の紹介、バーチャルセミナーなどのサービスを提供している。

このようにすべての顧客接点において一貫性をもった体験価値を提供するのが、ADaaS/Aflac Digital as a Service(以下、ADaaS)だ。ADaaSはお客様、販売代理店、ビジネスパートナー・行政・自治体など各ステークホルダーを一つのプラットフォーム上で連携させるクラウド型サービスであり、必要な人が必要な時に必要なだけ利用できる。
ここではADaaSの主要サービス5つをご紹介する。

1. アフラックミラー

いわゆるスマートミラーであり、お客様との新たな接点を創出する。店舗用は販売代理店業務のサポートを目的としており、相性診断や保険料のシミュレーション、ゲームなどのコンテンツを含む。アフラックミラーで関心をひき、保険の相談など店内への着座につなげるものだ。

自宅用のアフラックミラーは顔の表面温度や脈拍が測定できる機能やエクササイズ動画など健康増進に関連するさまざまなコンテンツを提供しており、お客様の運動促進やQOLの向上に貢献することを目指している。

※アフラックミラーはゼネラ株式会社が提供主体であり、弊社はその取り組みの支援として保険や健康に関わるアプリを提供する

2. ARサービス(商品紹介・自己紹介)

保険相談のきっかけやお客様との接点を創出することを目的に、ARを活用したサービスを提供している。チラシや名刺、メール等にある二次元コードをスキャンすると、3Dでアバターが登場して音声や動画で保険の内容を紹介する。また、営業社員や募集人が手渡す名刺に印刷された二次元コードをスキャンすると、3Dで本人映像が映し出され、声と動きで自己紹介をする。このサービスは募集人のことを鮮明に覚えていただけるとして好評を得ている。

3. XRデバイス(VRゴーグル・ARグラス)

お客様にがんやがん検診、介護のことを考えるきっかけにしていただくことを目的に、VRゴーグルやARグラスを活用したサービスを提供している。3Dコンテンツでがんに関する映像コンテンツやクイズ、授業を楽しんだり、介護を受ける方の食事のしづらさを疑似体験したりすることができる。このサービスの提供を通じて、がんの「早期発見・早期治療」の大切さや、介護に関する理解を深めていただくことができる。

4. デジタルほけんショップ

デジタル空間上に開設した保険ショップで、相談予約ができたり、保険や健康に関する情報を収集したりすることができるサービスだ。がん保険に興味がわいた方に対して、AIを活用して募集人とマッチングするサービスを導入し、オンラインもしくはリアルな保険相談につなげていく。

近い将来は、メタバース空間上にデジタルほけんショップを開設する予定だ。若年層をはじめ、これまで当社との接点が少ない層にアプローチしていく。

5. AIを活用したマッチングサービス

生命保険事業の領域ではお客様の趣味嗜好、相談ニーズを考慮し、最適な募集人をAIが提案する。AIによるマッチングの結果、会話がスムーズに運ぶと見込んでいる。

また、このソリューションを活かして、保険以外の領域で、たとえば介護を受けたい人と介護者や医師をマッチングするサービスが提供できるかを検討中だ。

<保険契約管理業務の抜本的再構築>

保険契約管理業務の抜本的再構築の目的は、①感動的なユーザー体験の創出、②コスト削減、③業務継続性・安定性の確保だ。

この目的を実現するために、次の6つの原理原則を定めている。①デジタルファースト、②時間・場所を問わないアクセス、③ヒトとAIの協業、④災害・変化に強い業務基盤、⑤業務・経営指標の見える化、⑥データに基づいた理解・応対だ。

保険契約管理業務の抜本的再構築を達成すると、販売代理店とお客様双方の負担軽減につながる。実際に場所や時間を問わずに保険契約申込の手続きができる「いつでもデジモ」なら、申込手続きから最短3日で契約が完了する。給付金請求においてもAANETを介した手続きから、わずか1日で支払いが完了するケースもある(コロナの影響などがない最短のケース)。

以上のような業務改革には、デジタルツインの導入を検討している。デジタルツインを活用して現在の業務プロセスを徹底的に可視化した上で、シミュレーションをし、予測をする。これらをメタバース上でさらに見やすくし、使う側が課題を特定・分析することによって既存フローの最適化を目指す。

今後はメタバース空間にオフィスを再現し、アバターを介した従業員同士のコミュニケーションの活性化を目指して、取り組みを進めていく。

※AANET:販売代理店における業務で必要となる各種機能や情報を搭載したポータルサイト。契約保全手続きや、顧客情報の参照が可能。

<業務変革をサポートする社内システムのDX>

新型コロナウイルス感染症への対応が、弊社の取り組みを強力に推し進めるトリガーになった。保険金・給付金の支払い業務、申込・請求手続きやお問い合わせでお客様をお待たせしない、さらに従業員の健康を守るためにリモートワークを推進するための新たなファシリティマネジメントなどの取り組みの必要性から社内システムのDXが加速した。

業務を在宅で行うとなると、セキュアな環境が必要になる。そこで従来は2段階だったセキュリティレベルを3段階へと変更し、在宅でも中レベルの業務を遂行できるようデータや環境を整備した。

在宅やサテライトで業務を行うとなると、紙の管理は阻害要因となる。そこでペーパーレス化の検討開始から2020年末までの6か月間で、全体の60%にあたる2,400帳票の電子化に成功した。

オンライン相談も、2020年2月の検討開始からわずか6か月で他社に先駆けてサービスの提供を開始した。スマートフォン上で手続きが完結するサービスを開発したことで、時間や場所に制約されない新しい保険申込プロセスを提供できるようになった。

コールセンター業務のリモート化にも取り組んだ。社用iPhoneを各オペレータに配り、在宅環境でもお客様や販売代理店からの問い合わせに対応できるようにしたものだ。働き方改革を実現する環境整備として、5,000名を超える全社員にも社用iPhoneを2020年12月までに急ぎ配布した。

安定的なサービスレベルを維持するために、2,000名を超える協力会社20社からの要員にも、在宅あるいはサテライトで働ける環境を用意した。緊急事態宣言の実施が終了してからも、優秀な人材に定着してもらうためには働き方の選択肢を提供すべきという観点から継続している。

<DX推進を支えるDX人財育成>

DXを推進する上で、極めて重要なのが「DX人財」だ。弊社ではDX人財を「テクノロジーの知識を有し、ビジネスに変革をもたらすことができる人財」と定義している。

弊社ではDX人財を2つに分類している。主にビジネス部門に所属し、ビジネスとテクノロジーの双方を理解してDXを推進する「ハイブリッド人財」と、主にIT・デジタル部門に所属し、テクノロジーとデータを使いこなす「テック人財」の2つであり、両者が隔たりなく一体で働くことを目指して育成している。

また、DXを推進するために必要な能力や特性を16種類のケイパビリティとして定義し、レベルごとにカリキュラムを設定して育成している。知識を習得して演習を受け、OJTを通じて実践力を養うのが特徴だ。ケイパビリティごとに、DX人財として社内認定していく。

2022年は150名を認定する計画に対して243名を認定した。2024年末までには、社員の30%である1,500名をDX人財にすることを目指している。

※2023.05.19時点では17種類のケイパビリティ

<結びに>

本日は、弊社のDXの取り組みについてご紹介した。DXを最大限に活用し、働く人の幸せと業務効率化の向上の双方を実現していきたいと考えている。

実際に弊社だけの力で実現するのは難しい状況だ。社内外の多くの皆さんと連携し、新しい働き方を追求・実現していく所存だ。

「大手金融機関事例から学ぶAIを活用したプラットフォームで実現する業務効率化」


【講演者】笹沼 満 氏
ペガジャパン株式会社
ソリューション コンサルティング マネージャー

【講演者】勝俣 花菜 氏
ペガジャパン株式会社
シニア ソリューション コンサルタント

<Pegaとは>

本社Pegasystemsは1983年創業、今年で40周年を迎える。日本支社であるペガジャパンは、2011年に設立された。インテリジェントオートメーション、カスタマーサービス、1:1(ワンツーワン)カスタマーエンゲージメントの3つの柱において高い費用対効果を得ている。

創業者のアラン・トレフラーが金融機関を対象に事業を始めたことから、弊社の事業は金融業界に強い。現在は保険会社トップ10社のうち7社、グローバルメガバンクのトップ25社のうち18社ほか、ヘルスケア、通信事業者や製造などの業界で採用されている。

「Build for Change」を掲げ、社会情勢の変化に備えるプラットフォームを提供しているのが特徴だ。

<Build for Change-変化に備えるプラットフォーム>

Center-out アプローチ

Pegaの重要なコンセプトは、ビジネスプロセスを中心にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を進める「Center-outTMアプローチ」だ。変化への対応では、チャネルとバックエンドシステム、プロセスの3つに分けて考える必要がある。

チャネルを中心にアプリケーションを開発するとビジネスロジックが各チャネルに埋め込まれることになる。しかし再利用できないことから、チャネルごとにアプリケーション更新が必要となり時間とコストがかかる。しかも顧客はチャネルを移動するたびにバラバラの体験をすることになり、顧客満足度も低下する。バックエンドシステムにおいては、基幹システム、ERPやCRMなどが提供するテクノロジーを中心に開発すると、ビジネスプロセスを合理化できない。

これらを解決するのが、Center-outアプローチだ。すべてのチャネルで利用可能なAIやルールである「ブレーン(頭脳)」から始め「プロセスオートメーション」でエンドツーエンド(以下、E2E)の自動化を実現し「ケースマネジメント」で着実にタスクを完了する。

チャネルには「DX API」で接続するため、変化に対応する際にチャネルごとのコーディングは不要だ。バックエンドシステムには「Live Data」で接続してデータを仮想化する。これによりバックエンドに変化があっても、ビジネスプロセスの変更は不要となる。

2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=The Finance)

Pega Infinity

Center-outアプローチを実現するソリューションが、Pega InfinityTMだ。ローコードプラットフォームとテクノロジーの上に、業界別アプリケーションと業務別ソリューションが提供されている。

金融や保険といった業界別にビジネスモデルやデータモデルを含むアプリケーションのテンプレートを提供しており、必要に応じてローコードで拡張・カスタマイズが可能だ。業務別ソリューションとは、次にご紹介するPegaの3つの柱を指す。

<業務別ソリューション-Pegaの3つの柱>

インテリジェントオートメーション

AIを活用してワークフローを自動化するソリューションだ。PegaプラットフォームやRPA製品が含まれており、一般的なワークフロー製品では扱えない複雑な業務プロセスを得意とする。

多くの企業は自動化を目的として複数のシステムやプラットフォームを活用しているが、その効果は限定的・局地的だ。しかしPegaを導入して統合的に管理すれば、必要に応じて人に作業を割り当てつつE2Eで自動化できる。実際にForresterでも非常に高い評価を受けている。

カスタマーサービス

コンタクトセンターあるいはコールセンター向けのソリューションだ。通常、オペレーターのデスクトップでは複数のアプリケーションを立ち上げており、業務が複雑になりがちだ。

Pegaのデスクトップでは、360°ビューを実現している。電話応対はもちろん、チャットや画面共有セッションも1つの画面で対応可能だ。複数のチャネルでの対応履歴も1つに統合されるほか、Next Best ActionのリコメンドなどAIが業務効率化を支援する。

1:1カスタマーエンゲージメント

AIを活用したNext Best Actionプラットフォームだ。AIを駆使して顧客のプロフィールや行動履歴からリアルタイムに学習し、顧客ごとにパーソナライズした提案が可能になる。会社のビジネス上の都合で提案したい商品や製品も考慮することで、顧客とビジネス双方の価値を最大化できる。

<Pegaの差別化領域>

Wrap & Renew

Wrap & Renewは、Pegaが推奨する導入方法だ。Pegaでは多くのプロトコルに対応したシステム連携コンポーネントを標準で提供し、ビジネスプロセスを中心に据えて既存のフロントとバックエンドを活用する。

フロントとバックエンドを刷新するタイミングをずらすことで、遅延なく着実にDXを推進できるわけだ。

Situational Layer Cake

Pegaだけが独自で持っているのが、再利用を高めるテクノロジー「Situational Layer Cake」だ。これにより、変化に備えることが可能になる。

世界60カ国で保険サービスを提供するAIG様のケースでは、Pegaの上に保険金サービス共通のOne Claimというフレームワークを構築した。その上に、自動車や医療などの商品に依存した差分を共通部品として構築し、さらに各国の差分を実装している。

もし変化によって新たな機能や規制を追加する場合、それぞれのレイヤーの対象部品を更新するだけで、それを参照しているサービスは自動的に新しい機能や規制を利用できる。


では次に、勝俣氏がデモをご紹介する。

<住宅ローン契約デモ>

住宅ローンの申込から契約までのプロセスを、Pegaに載せるとどのように見えるか。銀行の公式サイトに、Pegaで作成したフォームの埋め込みが可能だ。必須入力項目の設定はオプション1つで定義できるほか、テキスト形式以外にも入力方法を選択でき最適なフォームを作成できる。

「申し込む」をクリックすると「事前審査申込」フォームに遷移し、Pegaのケースマネジメントが始まる。Pegaでは定義されたワークフロー(以下、ケースライフサイクル)に従い、各担当者が自分に割り当てられた作業を進めて業務を完遂する。

契約者の信用スコアは、外部の審査機関とのAPI接続を介したシームレスなデータ連携によって算出される。事前審査の承認可否がビジネルロジックによって判断される裏では、連携されたRPAが動いて基幹システムに対して顧客情報を更新する。

端末ごとにレイアウトが自動で最適化されるので、マルチチャネルエクスペリエンスを提供可能だ。左側に固定情報、中央に作業領域、右側にウィジェットが表示されるほか、タスクは個人、グループ、能力などに応じて割り当てが可能で優先度の高いものから表示できる。

2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=The Finance)

すべての審査が完了すると、契約者宛に「DocuSign」を介した電子署名の依頼通知がメールで届く。文書の確認ボタンをクリックすると連携されたDocuSignが自動で起動し、電子署名をして完了ボタンをクリックすれば住宅ローンの契約は完了だ。

開発ポータルの1つ「App Studio」は視認性が非常に高く、業務ユーザーとIT部門が協働しながら開発を進められる。ケースライフサイクルが定義されているのでローコードで新しいステップを追加でき、保存すれば即時、開発画面に反映される。

2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=The Finance)

Pegaなら齟齬を減らし開発後の手戻りを抑制し、真に価値を提供できるアプリケーションを構築可能というわけだ。  

では次に、笹沼氏が成功事例をご紹介する。

<事例紹介>

グローバルのAflac様では個人と団体向けの顧客サービスアプリケーションが別々だったため、非効率とトレーニングの課題があった。コンタクトセンター・ソリューションによる単一化とセルフ対応化に取り組み、一般的な問い合わせのチャットボット対応86%、チャットボットの封じ込め率61%を実現したほか、新型コロナ関連の問い合わせ機能を2週間で実装した。

MUFG様では、業務の自動化や複数チャネルへの対応とシステム開発の内製化などに着手した。チャネルごとに段階的に自動化を進め、住宅ローン関連の業務量75%削減と事前審査プロセスの劇的な短縮を実現した。

トヨタファイナンス様では業務のデジタルシフトを推進され、PCI DSSに対応したPegaプラットフォームを活用して開発生産性は約2倍に、開発納期は約2分の1に、インフラ調達は1〜2週間を実現した。

みずほ銀行様ではグローバルコーポレート業務のペーパーレス化や標準化に着手され、業務効率化および業務品質を大きく向上させたほか、ユーザビリティの高いシステムの構築に成功した。Situational Layer Cake技術を駆使したことから、第1フェーズの導入期間はわずか3か月間であった。

<結びに>

6月に「PegaWorld iNspire2023」が4年ぶりにラスベガスで開催される運びとなり、世界中の大企業が参加して80件以上の事例が紹介される。

今回の基調講演を通じて、AIを活用した意思決定とワークフローの自動化を実現するローコードプラットフォームについてご理解いただけたら幸いだ。

「~開発期間、コスト大幅削減~SOMPOひまわり生命のローコード開発導入事例」


【講演者】金田 幸男 氏
SOMPOひまわり生命保険株式会社
情報システム部 IT開発グループ

<SOMPOひまわり生命とは>

1981年創業にアイ・エヌ・エイ生命として事業をスタートした。現在はSOMPOグループ中核4事業である国内損保、国内生保、海外保険、介護シニアに加えて、新たにデジタルやヘルスケアの領域においても事業戦略を展開し、約2,000万人の顧客を抱えている。

ひまわり生命は国内生保事業を担い、SOMPOグループの中でも大きな役割を果たしている。

VISION-健康応援企業

生命保険といえば、かつては万が一の際に死亡保険金をお支払いする、残された家族のために入るものであった。近年では医療保険やがん保険など入院費用のために入る自分のための保険が主流だ。

今後、保険はどう進化していくのか?弊社では健康寿命を長くすること、つまり健康でなくなることが新たなリスクになると考えている。そこで健康応援企業になるというビジョンを6年前より掲げ、商品開発を行ってきた。

健康応援企業が提供する価値

万が一の際の金銭的サポートに加えて、毎日の健康に寄り添っていく。金銭的リスクだけでなく、健康でなくなるリスクを減らす。このようなコンセプトのもと、保険機能(インシュアランス)と健康応援機能(ヘルスケア)を組み合わせた「インシュアヘルス」という新たな価値を提供している。

2016年以降は次々と健康サービスアプリを、2018年以降はインシュアヘルス商品の提供を開始し、現在は第9弾のがん保険まで発売済みだ。

インシュアヘルス商品の特徴は、禁煙などの条件を満たすことで保険料を安くする、差額の保険料をキャッシュバックするなどが挙げられる。健康になることで顧客にメリットのある保険を、市場に提供しているというわけだ。

保険商品自体の概念を変える新しいチャレンジの1つがネットによる保険商品の提供と考え、今回お話しするネット商品基盤が必要となった。

<ネット専用商品の開発の背景>

弊社ではネット商品第2弾のLinkxPinkプロジェクトの際に、ローコード開発の取り組みを行った。結果としてネット向け商品の開発期間を半減し、コストを従来の6分の1に圧縮できた。本日は、高速・低コストをなぜ実現できたのかをお伝えしたい。

商品開発に至った背景には、デジタル化の急激な進行と消費者の行動の変化がある。消費者はピンポイントでほしいものをスピーディに手に入れられるようになったことから、保険市場においてもスピーディな商品投入が求められている状況だ。

しかし当時は、商品開発上の課題がいくつかあった。商品開発を行うシステム基盤は、あくまで従来の対面販売用の商品開発プラットフォームであったからだ。基幹システムの改修に、非常に多くのコストがかかる。また従来のウォーターフォール型開発手法においては、1年を超える開発期間を必要としていた。

そこで弊社では、高速・低コストで市場投入するための新たな仕組みとして既存の基幹システムとは別に「ネット商品基盤」の構築を決めた。

<ネット商品基盤コンセプトの3要素>

ネット商品基盤は「ローコードプラットフォーム」とするほか、重厚長大な基幹系システムから分離させた「疎結合アーキテクチャ」、商品開発時の影響を極小化する「シンプルな商品とシステム」の3要素からなる。

ローコードプラットフォーム導入については、複数製品を比較・検討した結果、生産性とコスト面で秀でたPega Platformの採用を決めた。とくに従量制による課金体系は、商品特性や販売動向に応じて過度なコストをかけずに対応できることから選択の決め手となった。

Pega Platformによる開発イメージ

事務処理はBPM図を用いて、事務部門と検討を重ねる。BPM図も、簡単にGUIベースでケースの作成が可能だ。そのケースから、自動的にフローを作成できる。GUIや自動生成機能を用いることで、コーディングを最小限に減らした開発が可能になる。

ケース、フロー、操作画面は、Pega Platformで管理する。これによって、基盤をまたがるインターフェースを介した一元的な管理が可能になる。

2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=The Finance)

疎結合アプローチ

疎結合アプローチの狙いとは、従来の基幹システムからネット商品基盤を切り出し、コストがかかる基幹システムの制約を取り払うことだ。商品の契約にまつわる契約マスターの情報を、ネット商品専用に切り出して管理している。つまり申し込みを受けてからの事務処理なども、従来の基幹システムから切り離されるわけだ。

ネット商品のコンセプトは機動性であることから、システム化は最低限の部分のみに留めている。重い事務処理や管理業務の開発は、代替手段があるものは極力行わず、残った事務処理・管理業務は手作業あるいはRPAで補うことにした。

シンプルな商品とシステム

ただし商品が複雑になると事務が複雑になり、手作業が回らなくなる。そこで当基盤で扱う商品とシステムはシンプルなものと決め、あらかじめ制約を設けた。代表的なところでは、特約を付加しない、保険料払込はクレカによる月払いのみ、契約内容の変更は不可といった制約だ。

顧客向けの申し込み画面は、Pegaの機能に加えてデザイン性を整えるためにコーディングをした。一方、社内の事務処理画面はデザイン性にとらわれずPegaのGUI機能を活用して作成し、コーディングを極力行わないようにした。

<高速・低コストを実現できた理由>

プロジェクトの目的である高速・低コストを実現するためにはローコードプラットフォームの導入だけでは不十分であり、疎結合アーキテクチャ、シンプルな商品とシステムの3要素が重なりあうことが大事だ。しかし現実はそう簡単ではなく、多くの難しい課題を克服する必要があった。

3つのネット商品基盤コンセプトと各課題の解決

ローコードプラットフォームの導入にあたっては初期コスト投下、長期に渡る運用コスト増と開発費減のバランスを見極め、意思決定する必要がある。

疎結合アーキテクチャと言っても、完全に基幹システムから分離はできない。そこで制約をあらかじめ決定するなどしてコンセプトを明確にしておき、将来的にも切り分けた部分を維持する必要がある。

シンプルな商品とシステムは、ローコード開発の根幹だ。しかし開発を担うシステム部門と、従来型のフルスペックのシステム機能を求める利用部門との間で思いが対立することがあった。そのため役員レベルで趣旨や目的を理解してもらい、トップダウンによる対応が必要であった。

課題を解決した結果、開発期間は半減し、ローコードプラットフォームのフロー生成を用いることで管理系機能の効率化を実現した。ネット商品基盤上で開発する規模を圧縮し、コスト自体も6分の1まで圧縮することに成功した。

2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=The Finance)
2023年4月25日開催ONLINE EXECUTIVE CONFERENCE「金融業務をもっとシンプルに。~AIを活用した意思決定とワークフローの自動化で加速させる金融DXとその効果とは~」<アフターレポート>
(画像=The Finance)

成功のポイント

利用部門とシステム部門が一体となり、3要素を理解しネット商品基盤のコンセプトを会社として貫いたことにある。この結果、ローコード開発プラットフォームの能力を最大化し、生産性と品質を両立できた。

ローコードプラットフォームの優位性を打ち出しておくこと、さらに商品制約を設けておく。そうすれば、フローの自動作成やGUIで開発作業を進めることができる。

今後の課題と展望

開発力の安定化、さらなるローコスト化を目指して、ローコード開発の戦略的内製化を進めているところだ。ローコードプラットフォームの活用範囲を拡大し、代理店とのコミュニケーション基盤への導入などネット商品以外の領域への適用も検討している。

またSOMPOグループ内へも展開しており、グループ内横断で内製化を推進している。これにより、ローコスト化をさらに進めていけると期待しているところだ。

<結びに>

本日は、SOMPOひまわり生命におけるローコード開発事例をご紹介し、ローコードプラットフォーム導入にあたって考慮すべきポイントを3つお話しさせていただいた。ローコード開発をご検討されているようなら、参考になれば幸いだ。