物言う株主との対立など株主総会をめぐる紛争の増加で、「総会検査役」を選任するケースがここ数年急増している。今年もコスモエネルギーホールディングス(HD)、フジテックなど8社10件(選任申し立て中を含む。6月14日時点)を数え、年間13社16件に上った前年に続き2ケタ台に乗せた。
総会検査役は株主総会の招集手続きや決議の方法が適法であるかどうかを調査し、裁判所に報告書を提出する役割を担う。違法な決議を防ぎ、事後的な訴訟を抑止したりする効果が期待されている。通常、総会検査役は専門的知識を持つ弁護士が選任され、その選任の申し立ては対立株主側、会社側のいずれもが認められている。
コスモ、旧村上系を除いて決議へ
6月下旬に集中する3月期決算会社の定時株主総会を控え、総会検査役の選任決定を発表したのはコスモエネルギーHD、ナガホリ、フジテック、東洋建設、東洋証券。また、日本証券金融では対立する国内投資ファンドのストラテジックキャピタルが裁判所に選任を申し立て中。
なかでも動静が注目されているのがコスモエネルギーHDだ。同社は約20%の株式を持つ筆頭株主の旧村上ファンド系投資会社シティインデックスイレブンスと攻防を繰り広げている。総会では買収防衛策の発動について、その賛否をシティ側の議決権を除く形で諮る。
こうしたやり方はMOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)決議と呼ばれる。少数株主の過半数の賛成で可決を図るもので、採決の方法としては異例。MOM決議は2021年にアジア開発キャピタルによる東京機械製作所の株買い占め事件で初めて行われ、最高裁まで争われた(アジア開発の抗告を棄却)。
事の次第では司法の場で再び争われる可能性もあるだけに、コスモエネルギーHDの総会では検査役の重要性が一層高まる。今回の総会ではシティ、会社側の双方が選任を申し立てた。
仕手グループの標的となっている宝飾品大手のナガホリでも対立株主と会社側がそれぞれ検査役の選任を申し立てた。
フジテック、前会長と攻防戦
任天堂創業家の資産管理会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)と対立状態にあるのが東洋建設。同社は5月末、YFOによるTOB(株式公開買い付け)提案に反対することを決定。YFOは総会で経営陣の刷新を株主提案する予定だ。
日本証券金融、フジテックの両社については2月に開いた臨時株主総会でも検査役が選任された。
香港投資ファンドのオアシス・マネジメントと対立するフジテックでは臨時株主総会で取締役の半数近くが入れ替わり、取締役会でオアシスの影響力が高まった。今回の定時株主総会は経営の主導権をめぐって創業家出身でフジテック前会長の内山高一氏との対決の構図となっており、内山氏側が株主の立場から検査役選任を申し立てた。
今年はこのほか、東京ソワールの3月の定時株主総会、三京化成の4月の臨時株主総会で検査役が選任された(三京化成では対立株主が選任申し立て)。