中小企業が組織力を生かすための参考事例
組織力は、人材を「資本」と捉えて価値を最大限に引き出す「人的資本経営」の実現には欠かせない要素だ。
ここでは、「人材版伊藤レポート2.0実践事例集」から、大手企業が取り組んでいる組織力の活用や成長に関する取り組み事例を紹介する。
旭化成:エンゲージメント調査による組織の活力分析
旭化成では、自社独自のエンゲージメント調査である「KSA(活力と成長アセスメント)」を2020年に導入した。それにより従業員の活力や成長に関連の深い行動を分析し、個人と組織の成長に役立てている。
管理職層が自部署の状態を把握した上で部下へ働きかけ、多様な「個」が活躍し率直に発言できるような職場環境を構築し、組織力の向上に努めている。
アステラス製薬:全社一体の協働体制の構築
アステラス製薬では、「経営計画2021」で人材関連の「組織健全性目標」として以下の3つを設定した。
(1)果敢なチャレンジで大きな成果を追求
(2)人材とリーダーシップの活躍
(3)「One Astellas」で高みを目指す
全社一体の協働を目標に掲げ、社長が従業員と直接的な対話を実施する「Dialogue with CEO」、リーダー層が従業員の質問に回答する「Ask Me Anything」などの活動を行っている。
また、複数の部門にまたがった共通目標「Shared Objectives」を設定し、目標達成に向けて一丸となって行動する仕組みを構築した。
丸井グループ:手挙げ文化の醸成
丸井グループでは、組織力に欠かせない従業員個々人の自主性を促す「手挙げ文化」を2008年から10年以上かけて醸成し、自律的な組織作りに取り組んできた。
4,500人以上の従業員が、企業理念についての対話や公認プロジェクトへの参加、次世代経営者育成プログラムや新規事業立ち上げなどへ従業員自らが「手を挙げて」参画しており、一人ひとりの成長を支援するとともに組織力の向上を目指している。
サイバーエージェント:組織的なリスキルへの取り組み
サイバーエージェントでは、事業領域の拡大に必要なスキルを持つ人材を育成するために、従業員の組織的なリスキルに取り組んでいる。勉強会形式のリスキルを行い、目標の共有や仲間をつくる環境を整え、戦略的な組織力向上を目指してきた。
また、専任者が定期的に従業員のエンゲージメントの状況を把握し、個々のニーズに応じてサポートすることでパフォーマンスの向上につなげている。また各従業員が希望する新たなチャレンジや学習の機会が得られるよう社内移動を自由にし、エンゲージメントが高まる仕組みを構築した。