企業がエシカル消費に取り組むべき理由
本来、エシカル消費とは消費者が行う行動だ。しかし昨今エシカル消費は、企業がビジネスチャンスをつかむためにも重要な活動となっている。なぜなら「仕入れや原料調達を行う」「社内の消耗品を購入する」といった場合、事業者がエシカル消費への取り組みをしたり、消費者へエシカル消費を促したりすることは経営や業績へのメリットにつながりやすくなるからだ。
企業イメージが高まる
商品・サービスだけでなく、企業の活動に対する消費者や投資家の注目度が高まっている時代においては、イメージアップが期待できる。例えば「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」では、毎年産業別に対象企業を絞り、企業がエシカルな方法で事業を行っているかどうかを多面的に調査して10段階の成績をつけて発表する「企業のエシカル通信簿」をウェブサイト上で公表している。
同ネットワークの目的は企業批判ではなく、サステナブルな社会づくりに貢献することであるが、目的はどうであれ、企業イメージが高まると、消費者・投資家からの信頼を得られ、潜在顧客や顧客の獲得が期待できる。
売上向上への可能性が高まる
2022年に消費者庁が行った調査では、「同じようなものを購入するなら環境や社会に貢献できるものを選びたい」という人が53.8%と過半数いることが分かる。他にも環境問題や社会問題の解決・貢献、節約・ムダの削減を理由にエシカル消費に取り組もうとしている消費者は多いようだ。
また同調査では、世代が若くなるほどエシカル消費の認知度が高くなっている。特にZ世代と呼ばれる年代は「言葉も内容も知っている」という人が他の世代に比べて最も高い。Z世代は、個性や自己表現を重んじ、社会正義や環境問題に敏感な人が多く、消費においてもブランドよりも個々の製品や経験により価値を認める傾向がある。
トレンド、時事問題に即座に反応し、購買につなげる傾向があるため企業がエシカル商品を供給すればエシカル消費の意識が高い顧客層を獲得し、売上向上が期待できるだろう。
従業員の意欲向上につながる
企業市民として社会的課題解決に貢献できる会社であることは、そこで働く従業員のモチベーションアップ、ひいては従業員エンゲージメントの向上につながる。
消費者の倫理的消費行動を積極的に促すために
消費と供給の関係は、「ニワトリとタマゴ」の関係のようにどちらが先かは明確にできない。しかし供給側である事業者は、消費者がエシカル消費をどの程度意識しているかを知り、消費者のニーズに応じた商品・サービスを供給することが必要である。もちろん一般的なマーケティングでも行っているように消費者の消費行動を促すことも重要だろう。
上でも少し紹介したが、以下で消費者庁が調査・公表している「『倫理的消費(エシカル消費)』に関する消費者意識調査報告書」の結果の一部を紹介するのでぜひチェックして欲しい。事業者にとってエシカル消費に向けた取り組みの重要性が増していることも分かるはずだ。
言葉の認知度
2022年の調査によると「言葉および内容を知っている」人は7.6%、「言葉のみ知っている」人は19.4%で、合わせて26.9%と認知度は低めだが、2020年度調査の12.2%と比較すると2倍以上に向上している。
エシカル消費に対するイメージ
2020年調査では、エシカル消費を「これからの時代に必要」と考える消費者は51.8%と過半数であった。実際、2022年の調査では「特にエシカル消費につながる行動をしない」という人が23.6%で、あとは何らかの行動を行っている。エシカル消費を必要と考え、実際に行動に移した人が増えてきていることが読み取れる。
エシカル商品・サービスの購入状況および意向
エシカル消費につながる行動として、エシカル消費につながる商品の購入状況に関する質問に対しては、全体の28.8%の人が「エシカル消費につながる商品を購入する」と応えている。ただし、エシカル商品の購入は認知度との高い相関関係があることが窺える。エシカル商品の購入意向はエシカル消費の内容まで知っている人が最も高くて55.0%。言葉のみ知っている人が42.8%、言葉も内容も知らない人は22.3%と最も低い。