夏の甲子園(第105回全国高校野球選手権記念大会)が連日熱戦に沸いている。アフターコロナを迎えて、代表校を送り出した地元の声援が盛り上がっているが、ビジネスの分野でもM&A市場がひときわ活況を呈している。47都道府県の勢力図に何か変化はあるのか。「M&A版甲子園」と題し、2023年のここまでの戦いぶりを点検する。

すでに前年を超えたのは7県

M&A Onlineが適時開示情報を元に調べたところ、上場企業のM&A件数は今年に入って589件(8月7日時点、うち海外案件は115件)と前年を62件上回る。年間件数は1000件(2022年は949件)の大台に乗せる勢いで、コロナ前の2019年(853件)に比べて2割近い伸びとなる見通しだ。

こうした中、都道府県ごとのM&A事情はどうなのか。今年の全589件のM&Aについて、買い手、売り手、対象(自社や子会社・事業がターゲット)のいずれかの立場でかかわった件数を都道府県別に単純集計した(一覧表)。

全国的なM&Aの分布状況を大づかみすることが目的。例えば、北海道のA社(買い手)が愛知県の本社を置くB社(売り手)の福岡県にある子会社(対象)を買収したケースは北海道、愛知県、福岡県を各1件とし、当事者がすべて同じ県内の場合は当該県の1件のみとカウントした。

それによると、8月7日時点で前年の年間件数を超えたのは宮城県、山梨県、山口県(いずれも8件)、滋賀県(6件)、熊本県(4件)、奈良県(3件)、秋田県(1件)の7県。

前年ゼロだった秋田県は今年5月に1件(県内企業が買収の対象)発生した。一方、ここまで0件は香川県、佐賀県、長崎県、沖縄県の4県。

山梨県、2ケタをうかがう勢い

山梨県は1~3月(第1四半期)段階で前年の年間件数4件に並んでいたが、4月以降さらに4件増え、合計8件になった。年間5件だった2014年以来9年ぶりの高水準で、2ケタ台も視野に入れる展開だ。

山梨県は8件中、県内企業が買い手(いずれも上場企業)となったのが半数の4件。そのうちの1つは大手芸能事務所のアミューズがテレビ番組企画・制作の極東電視台(東京都港区)を買収する案件。アミューズ<4301>は桑田佳祐、福山雅治らの多数の著名アーティストを抱えることで知られるが、2021年7月に富士河口湖町に本社を移転した。

残る4件はいずれも県内企業が買収の対象。指輪・ペンダント製造の甲府貴宝(甲府市)はこころネット<6060>、葬祭事業の喜月堂ホールディングス(韮崎市)はランドビジネス<8944>の傘下に入ることになった。