DIYが日本で広がり始めたのは、1970年代初頭。しかし今やモノづくりが好きな人やインテリアに興味がある人が一度はやってみたい趣味の一つとして定着している。DIYは、本当に欲しいものを自分で設計して作れる点が魅力だが、モノをつくる工程はビジネスにも通じる学びがあることをご存じだろうか。本稿では、DIYを趣味にするビジネス面でのメリットについて解説する。
目次
イギリス生まれのDIY
DIYは「Do It Yourself(自分でやってみよう)」の略語。木材で家具などを作る「日曜大工」にとどまらず、家の修繕や庭の手入れなどもDIYの範囲に含まれる。第二次世界大戦終戦後の1945年、イギリス・ロンドンで提唱された。元軍人たちが「Do it yourself!」のかけ声とともに空襲で廃墟となった街を自分たちで復興させる運動を開始し、このムーブメントが全英に広がった。
やがて戦争の影響をほとんど受けなかったアメリカでは、1960年代に「週末に楽しむ趣味」としてDIYが受け入れられ、DIYのための資材や道具を販売するホームセンターが登場した。高度成長期に日曜大工がブームになった日本でも1970年代初頭にはホームセンターが登場、アメリカ発祥のDIYという概念が根付いた。
DIYにはビジネスにつながる学びがある
「気に入った家具などを修繕しながら長く使いたい」「既製の収納家具に欲しい寸法のものがない」といった動機でDIYを始める人も多いだろう。DIYには、このようなメリットだけでなく「ビジネスにつながる学び」もある。それぞれについて見てみよう。
DIYに取り組むメリット
・自分が欲しいサイズや色、形のものが手に入る
例えば収納家具が欲しい場合、「既製品では収納したいもののサイズに合わない」「色や形が気にいらない」といったこともあるかもしれない。しかしDIYなら収納したいものや場所に合わせて自分で設計でき、望み通りのものが手に入る。DIY初心者にとって一からモノづくりをすることはハードルが高いが、既製品に色を塗ったり、改造したりして「プチDIY」から始めれば、思いのほか簡単にできるのではないだろうか。
・スキルが上がればコストが抑えられる
一般的にDIYは、いわゆる日曜大工よりも広い範囲を指し、ふすまや障子、壁、水回りの修繕、庭の手入れなども含まれる。このような家の修繕は、専門業者に依頼することもできるが、修繕スキルを身に付ければ材料費しかかからないため、修繕コストを抑えることが可能だ。
また壊れた家具などを直したり、リメイク(再利用して別のものを作る)したりするスキルが身に付けばモノを大切に使うことにもつながる。
・ネットやフリーマーケットなどで販売できる
DIYスキルが上がれば、作ったものをネット上やフリーマーケットなどで販売することもできる。DIY愛好者のなかには、マガジンラックやボックス、トレイなど手ごろな大きさの木製品を販売している人も少なくない。
ビジネスにつながる「学び」のメリット
・準備の重要性がわかる
DIYを行ううえで、重要なのが作業に至るまでの準備だ。作業工程を考え、計画を立てて工程を割り振ったり、作りたいものをイメージして設計し材料を集めたりする。こうした準備に十分な時間をかけることがうまくいくコツなのだ。実際に木材を切ったり、釘を打ったりする時間よりも準備のほうに時間がかかるケースも多々ある。
しっかりと準備をしないまま見切り発車で作業を始めると、途中でミスをして低クオリティになることもあるだろう。また大きな失敗をして材料を無駄にしてしまう可能性もある。
・地道に取り組むことで解決への糸口が見える
DIYでは、工程の多さに閉口することがある。例えば木材から椅子を作る場合なら以下のような工程が必要だ。
- 木材のカット
- 釘を打つ場所を決めて印を付ける
- やすりかけ
- ねじ釘を打つための穴空け
- 木材同士をねじ釘で固定
- 完成後のワックス など
釘をどこに打てば壊れにくい椅子ができるか、製作途中で試行錯誤することもあるだろう。多くの工程を一つひとつ地道にクリアして完成させる経験は、ビジネスで仕事を進める際にも困難に立ち向かう糧となる。
・新しいものの見方が養われる
DIYを趣味にすると日常生活で周囲のものを見る目も変わるだろう。例えば既製品の家具を見ても木材の組み合わせ方や釘の打ち方などに注目するようになるかもしれない。また空き箱や廃材を見て「何かに使えないか」と考えるようになるかもしれない。こうした観点は、ビジネスでアイデアを考えなければならない際にも大いに役立つだろう。
・協調性が養われる
壁紙の貼り替えや床の修繕など大規模なDIYになると、一人では作業ができない。家族などと一緒に作業することになれば、的確な指示が求められる。時には、ケンカになることもあるかもしれないが、紆余曲折しながら一つの目標に向かってチームで進むことは、ビジネスにおいてチームでプロジェクトを推進することに通じるものがある。