M&Aの可能性も
-御社は宇宙に生活圏を作ることをビジョンとして掲げられています。
月には水があることが分かっています。水を水素と酸素に分けると、燃料になります。宇宙にガスステーションができると、宇宙の輸送コストを大きく下げることができますので、宇宙での高コスト構造を一気に改善することができます。宇宙で経済が回りやすい世界になれば、『人間が宇宙で生活圏を築く世界を創る』という我々のビジョンに近づけると思っています。
-2023年4月に株式を公開されました。出口戦略としてIPO(新規株式公開)を選択されたわけですが、M&Aについてはどのようなお考えをお持ちですか。
我々はこの事業を独立してやっていきたいと考え、上場に踏み切ったのですが、大手企業などとビジョンが合うのであれば、この先のM&Aの可能性はゼロではないと考えています。この業界は巨額の投資が必要ですので、資金規模の大きな企業等と一緒に事業を行うということはあるかもしれません。ただ、今はM&Aの必要性はない状況です。
-では現在の資金状況は
IPOの前に行っていた資金調達やIPOの時の資金、そして銀行ローンなどを活用させていただいています。また、すでに100億円ほどの宇宙への物資運搬契約をいただいており、これが基本的に前払いで入ってきますので、こうした資金を使いながら、ミッションを進めています。
-2022年9月にはピッチコンテストに参加されています。こうしたコンテストについてはどのようなお考えをお持ちですか。
我々は資金調達というよりは「HAKUTO-R」というプログラムに取り組んでいるので、この広告価値を高めていくという思いから、コンテストに参加させていただきました。また、事業を支援して下さるパートナー企業にリーチする場としても活用させていただきました。
-他のスタートアップ企業にアドバイスはありませんか。
何を目的にコンテストに参加するのかを明確にした方がよいのではないでしょうか。事業計画を発表するということは同時にビジネスモデルが公開されてしまいますので、それでも良いのかどうかという判断も必要でしょう。ただ、プレゼンテーションを繰り返すことで、その事業の本当の魅力を常に考えるというトレーニングになりますので、思考を深めていくという点ではいい機会になります。
【袴田武史氏】
2006年、マサイ・ジャパン(現エイミングジャパン)入社
2010年、ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現ispace)設立、代表社員
2013年、ispace代表取締役CEO(現任)
名古屋大学工学部卒業。米ジョージア工科大学大学院で修士号を取得。
1979年生まれ。
文:M&A Online