この記事は2023年9月8日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「海外投資家の買いが好調も、上値が見える日本株市場」を一部編集し、転載したものです。
筆者は2023年4月25日号の当欄で、米ナスダックは22年12月が大底であった可能性を指摘しつつ、「今後の企業決算の下振れリスクの予測は困難であり、それが原因で下落相場に転じる可能性も否定できない」と述べた。米国は、企業業績の悪化リスクを抱えながらも、ナスダックは昨年の12月を大底に上昇している。今回は、米国株式市場とともに大きく上昇した日本株式の行方について考えたい。
日本の株式市場は海外投資家の動向に大きな影響を受けるが、22年以降は、特にその傾向が強くなっているように見える。図表は、S&P500とドル建て日経平均株価の収益率、海外投資家の売買動向を表したグラフである。海外投資家はドルベースの投資を意識するため、ドル建て日経平均の傾向が海外投資家の動向を左右する。
図表を見ると、22年1月以降、S&P500とドル建て日経平均株価の折れ線はほぼ同じような動きを見せている。一方、海外投資家の差引売買金額(指数先物+現物)を見ると、ドル建て日経平均株価に大きな影響を受けていることがうかがえる。すなわち、日米の株式市場が大きく下落する局面では、海外投資家は大きく売り越しており、今年4~6月の上昇局面では、海外投資家は連続して大きく買い越していることが分かる。7月からは海外投資家は売り越し・買い越しが交錯しており、日経平均はもみ合いに入ったような動きとなっている。
海外投資家の買い越し、売り越し共に、比較的継続するケースが多い。今年1~6月はかなりの買い越しとなっていた。とはいえ、これが通年で持続していくことは難しいだろう。今年4月からの20週で海外投資家の買い越し額は8兆円近くに達しており、直近10年における20週単位の最高水準まで買われている。20週合計の最大売り越し額も8兆円前後であるため、買い越し額だけが最高水準を超えて10兆円に達するようなシナリオは考えづらい。マクロ的な視点では、中国の大手不動産会社の債務問題や米国の経済減速懸念なども、海外投資家の買い意欲を減退させる要因になる可能性がある。
これらのことから、日本株も米国株も今年の後半は上値の重い展開が予想される。日経平均は年末にかけ、±10%前後のボックス圏の推移がしばらく続く可能性が高いとみる。
GCIアセット・マネジメント シニアポートフォリオマネージャー/池田 隆政
週刊金融財政事情 2023年9月12日号