本記事は、内藤 誼人氏の著書『「習慣化」できる人だけがうまくいく。』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。

Compliment And Praise Message Sign
(画像=Andrey Popov / stock.adobe.com)

ホメてもらう仕組みを作る

人間というのはとても単純な生き物ですので、他の人にホメてもらえると、嬉しさを感じ、もっとホメてほしくなって同じことを何度もするようになります。

親にホメられた子どもは、ホメられたことを何度もします。

親から歌がホメられると、大きな声でもっと歌おうとしますし、学校のテストでホメられると、もっと勉強をしようとします。

大人も同じで、上司にホメられると、もっと頑張ろうという気持ちになるものです。

他の人にホメてもらうというのは、私たちにとって大きなモチベーションになるのです。

イギリスにあるロンドン大学のルーシー・クックは、4歳から6歳の子ども422名に、嫌いな野菜(ニンジンやセロリなど)を食べる習慣を身につけさせるという実験を行っています。

クックは、子どもの親に頼んで、嫌いな野菜を食べるたびにホメてもらうようにし、1か月後、3か月後に調査してみたのですが、ホメられた子どもは嫌いな野菜を前よりもずっとたくさん食べるようになることがわかりました。

というわけで、何らかの習慣を身につけるときには、他の人にホメてもらいましょう。

「そんなに都合よく他の人にホメてもらえません」という人は、自分から相手に頼んでおくといいです。

「私が○○するたびに、ご面倒でも、ホメてください」と頭を下げてお願いしておくと、よほど嫌われているのでなければ、「わかった」と言ってもらえるはずです。

会社の先輩や上司にお願いするのもいいです。

「私は、ホメて伸びるタイプですので、たくさんホメてくださいよ」とお願いしてみると、むこうも苦笑しながら、「わかった、わかった」と言ってくれるのではないでしょうか。

もし、みなさんの仕事ぶりがよくなれば、先輩や上司の評価も高くなるので、お互いにとってウィン・ウィンです。

ホメてもらうというのは、人間にとってものすごいインセンティブなのです。

しかも、ホメるだけなら、お金もかかりません。お金や品物などもインセンティブとしては強力ですが、コストがかかるという問題があります。その点、ホメ言葉を言ってあげるだけなら、コストもかからないというメリットがあります。

仕事で何らかの習慣を身につけたいのなら、とにかくホメてもらうのが一番です。

日本人は、照れもあるのか、あまり人をホメたりはしませんので、こちらからホメてもらうようにお願いしないと、なかなかホメてもらえません。

特に年配者はホメてくれません。

ですので、厚かましいとは思いますが、こちらからお願いしておくのです。

取り組むときには一度にひとつだけ

「今度は、○○にチャレンジしてみるか」
「△△のスキルを身につけたい」

好ましい習慣を身につけることは、とてもよいことです。

新しい習慣が身につくと、自分自身が生まれ変わったように感じますし、苦しい思いをして何らかの習慣を身につければ、それが自信にもつながります。

さて、ここでひとつ重要なアドバイスをしましょう。

それは、どんな習慣であれ、何かを身につけようとしたら、一度にひとつずつやっていく、ということです。一度に2つも、3つも目標を立ててはいけません。

自分が一番身につけたい目標に絞り込み、そこにすべての力を注ぎ込みましょう。

香港科技大学のアミー・ダルトンは、68名のビジネススクールのスタッフに、自分で目標を立てて(読書、ヘルシーな食事、掃除など)、それに取り組むように求めました。

ただし、あるグループにはひとつだけの目標に取り組んでもらい、別のグループには6つの目標に同時に取り組んでもらいました。

その結果、目標がひとつだけのグループでは、うまく目標達成ができましたが、いっぺんに6つもの目標に取り組まされたグループでは、どれも中途半端になってしまい、結局は目標達成ができないことがわかりました。

いくら良いことだからといって、すべてをいきなりやろうとしてはいけません。あぶはち取らずになってしまって、どれもこれもうまくいかなくなってしまいます。

運動をしよう、タバコもやめよう、掃除もしよう、婚活も始めよう、などといっぺんに自分を変えようというのは、ムシがよすぎます。

結局は、ひとつもうまくいかなくなる可能性が濃厚です。好ましい習慣を身につけたいなら、「これ!」というものを自分なりに絞り込み、そこに全力を傾けることが大事です。

何か月か経って、その習慣が十分すぎるほどに身についたところで、新しい目標を立てて努力すればいいのです。

ひとつずつ問題を確実に潰していったほうが、うまくいきます。

「慌てる乞食は貰いが少ない」ということわざがあります。別に急ぐ必要はないのですから、ゆっくり、確実に、ひとつずつ好ましい習慣を身につけていきましょう。

仕事のやり方も同じで、「マルチタスク」をしてはいけません。

複数の仕事を同時進行でこなしていける人もいるとは思いますが、目の前の仕事をひとつずつ、丁寧に片づけていったほうが、質の高い仕事ができます。

ビジネス本には「マルチタスクがよい」などと書かれていることもありますが、それはウソです。ひとつずつやったほうが絶対にうまくいきます。

会社員ですと、自分で決められない場合も多いと思いますが、ひとつずつやったほうが絶対にうまくいきます。

「習慣化」できる人だけがうまくいく。
内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。
社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。
趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。
著書に、『気にしない習慣よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』、『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。

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