本記事は、内藤 誼人氏の著書『「習慣化」できる人だけがうまくいく。』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。

self control is strength
(画像=MarekPhotoDesign.com / stock.adobe.com)

誘惑に負けない簡単なトレーニング

新しい習慣を簡単に身につけることができる人は、みんなセルフ・コントロール能力が高いという特徴があります。

アメリカにあるペンシルバニア大学のブライアン・ガーラは、新しい習慣を身につけやすい人には、共通点があることに気づきました。そういう人たちは、みんなセルフ・コントロール能力が高かったのです。セルフ・コントロール能力というのは、いってみれば「自制心」です。欲望や衝動を感じても、何とか抑え込んで我慢できる力のことを、セルフ・コントロール能力と呼ぶのです。こういう能力のある人は、新しい習慣を身につけるときにも、そんなに苦労しないことをガーラは明らかにしたのです。

ちなみに、セルフ・コントロール能力というものは、生まれつきの遺伝や能力によって決まるものではなく、筋肉を鍛えるように、自分自身でも鍛え上げることができます。

そのために一番よいのは、とにかく欲望や衝動を我慢する経験を、何度も何度もしておくことです。何らかの衝動を感じたときに、ほん少しでもいいので、「少し我慢する」という練習をしてみてください。

そうすれば、だれでもセルフ・コントロール能力を鍛えることができます。

たとえば、ほしい商品をネットで見つけたとしても、すぐに「購入」ボタンを押してしまうのではなく、ちょっとだけ我慢してみるのです。

「明日まで待ってみるか」
「月末まで我慢して、それでもほしいと思ったら購入するか」

という具合に、ちょっぴり我慢するのがポイントです。

こういうトレーニングを少しずつやるようにすると、セルフ・コントロール能力はどんどん鍛えられます。

タバコを吸いたくなったら、すぐにタバコに火をつけるのではなく、「5分だけ我慢」してみるのはどうでしょう。なかなかよいトレーニングになりそうです。お菓子を食べたくなったら、「30秒だけ我慢」してみるのもいいです。

欲望や衝動を感じたからといって、すぐに飛びついてはいけません。大切なことは、欲望や衝動の言いなりにならないことです。最終的に欲望や衝動に負けてしまうのだとしても、まずは自分で抑え込む練習をしてください。ほんの少しの時間でかまいません。

仕事をやめたくなっても、「さらに30分だけ頑張ってみよう」という気持ちで取り組んでいると、セルフ・コントロール能力が磨かれていき、そのうちたいていの欲望は自分で思い通りにコントロールできるようになります。

セルフ・コントロール能力が高くなってくると、新しい習慣も身につけやすくなるという好ましい結果になるのです。

人生の転機は習慣を変えるチャンス

生活が変わるタイミングというのは、実は古い習慣を変えるチャンスでもあります。

私たちは、何となくせいで生活しているところがありますが、大きなイベントがあるときには、新しい習慣を身につけやすいのです。

たとえば、自家用車で通勤している人は、電車やバスなどの公共の乗り物を利用したほうが、地球の環境にやさしいということを頭で理解していても、なかなか習慣を変えることはできません。ところが、部署異動や、マイホームを建てるなど、引っ越しをするタイミングでは、通勤の習慣もやすやすと変えることができます。

ドイツにあるギーセン大学のセバスチャン・バンベルクは、シュトゥットガルトの公共機関で働く社員を対象に、職場の建物の移転に伴って引っ越しをすることになった169名の調査を行っています。引っ越しをしてから6週間後に調べてみると、引っ越し前には公共の乗り物を利用している人は18.2%でしたが、引っ越し後にはそれが35.8%に増えたのです。引っ越しをすると、習慣が変わるのです。

私たちの人生には、いろいろな転機があります。

引っ越しもそうでしょうし、就職もそうでしょうし、結婚もそうでしょうし、いろいろな転機があります。そういう転機は、自分を変えるのにちょうどいいタイミングでもありますから、古い習慣をどんどん見直してみてください。わりとすんなり変えることができると思います。

私は、結婚して息子を授かったときに、それまではずっと夜型でしたが、朝型人間に生まれ変わりました。息子と遊ぶためです。「私は、たぶん一生夜型」だと自分では思い込んでいたのですが、そんなに苦労もせずに習慣は変えることができました。

人によっては、子どもが生まれてから、それまでは大変なヘビースモーカーだったのに、喫煙の習慣をきっぱりやめてしまう人もいると思います。

「子どものため」だと思うと、習慣はいっぺんに変えることができるのです。

イギリスにあるカーディフ大学のグレゴリー・トーマスは、子どもが生まれた1万8,176名の親について調べてみたのですが、子どもが生まれたことがきっかけで、たいていの親は環境にやさしい行動をとるようになるそうです。

恋人ができて、いきなりライフスタイルがガラリと変わる人もおります。身だしなみに気をつけるようになったり、出不精だったのに、恋人とデートをするためにものすごくアクティブな人間に生まれ変わったりもするのです。

ともあれ、何らかの人生の転機が訪れたときには、古くて、自分でも気になっていた習慣はどんどん変えてしまうことをおススメします。

「習慣化」できる人だけがうまくいく。
内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。
社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。
趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。
著書に、『気にしない習慣よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』、『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。

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