本記事は、内藤 誼人氏の著書『「習慣化」できる人だけがうまくいく。』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。

Close up on a red and white striped popcorn cup with lots of popcorn in a movie theater with red seats.
(画像=Michael / stock.adobe.com)

古い習慣に戻ってしまうときとは?

新しい習慣を身につけようとしても、古い習慣に戻ってしまうことがあります。

この現象は「習慣スリップ」と呼ばれています。

たとえば、新しい商品を購入してみたのはいいものの、「やっぱり、古いヤツのほうがいいや」ということで、新しい商品をまったく使わずに放っておくことがあると思いますが、これが習慣スリップです。

アメリカにある南カリフォルニア大学のジェニファー・ラブレックは、過去半年以内に料理用ミキサーや、DVDプレーヤー、ピクニックバッグなどを購入した150名を対象に、新しく購入したものをきちんと使っているのか、もし使わなくなったとしたら、それはどうしてかを尋ねてみました。

その結果、使わなくなった人にその理由を挙げてもらうと、「使いにくい」が18%、「使い方がよくわからない」と答えた人が9%ということがわかりました。

私にもこの結果には身に覚えがあります。

私は、パソコンの機能やソフトに関して、無料のバージョンアップでさえ「拒否」することが少なくありません。

なぜかというと、新しくバージョンアップされると、使いにくいと感じてしまうからです。たいていのバージョンアップでは、いろいろな機能がどんどん追加されていくのですが、どうせ私は新しい機能など使いません。

それに私が使いたい肝心の機能がどこにあるのかよくわからなくなってしまったりします。そういうことが面倒なので、古いバージョンのままにしておくわけです。習慣スリップすることが見えているのです。

家電製品にも似たようなところがあります。

昔の洗濯機は、「すすぎ」と「脱水」の2つのボタンしかありませんでした。

ところが、最新の洗濯機には、ものすごくたくさんのボタンがついていて、説明書を見ながらでなければとても使いこなせないようなものばかりです。

そのため、私は洗濯機を買い替えるときに、あえて型落ちした古い洗濯機を購入しました。みなさんには、そういう経験はないでしょうか。

なお、ラブレックの調査によりますと、古い習慣に戻ってしまう人は25%もいるそうです。4人に1人と考えると、これはかなりの高確率です。

新しい習慣を身につけるのは、とても難しいのです。

多くの人は、古い習慣に舞い戻ってしまうものですが、かりに古い習慣に戻ってしまっても、それはしかたがないのかもしれません。

習慣スリップは、ごく普通に起きる現象のようですので、新しい習慣が身につかないからといって、自分を責めたりする必要はないといえるでしょう。

まずいものでも習慣で食べてしまう

映画館では、ポップコーンが売られていることが多いのですが、映画を観るとき、習慣的にポップコーンを食べるという人は、どんなにまずいポップコーンでもかまわずに食べてしまうことがわかっています。

アメリカにある南カリフォルニア大学のデビッド・ニールは、映画を観ながらポップコーンを食べるという習慣のある98名と、そうでない60名の人に映画を評価するという実験に参加してもらいました。

映画を観せる前には、最後に食事をした時間を聞き、今どれくらいお腹が空いているのかも聞きました。

映画を観るときには、参加者一人一人にペットボトルの水とポップコーンを手渡すのですが、実はポップコーンは2種類用意されていました。

ひとつは作ったばかりのおいしいポップコーンです。

もうひとつは、7日前に作ったポップコーンです。7日前のポップコーンなど、湿気てしまってとても食べられたものではありません。

さて、映画を観てもらった後で、残ったポップコーンをすべて回収し、どれくらい食べたのかを調べてみると面白いことがわかりました。

習慣的に映画館でポップコーンを食べる人は、お腹が空いているかどうか、そのポップコーンがおいしいかどうかにかかわらず、同じ量のポップコーンを食べていたのです。

お腹がいっぱいであろうが、たとえどんなにまずかろうが、関係がないみたいです。

7日前のポップコーンは、とても食べられたものではないと思いますし、いつも映画館でポップコーンを食べている人は、「まずい」という違和感を覚えたかもしれませんが、それよりもやはり習慣が勝ってしまったのです。

食事も習慣です。お腹が空いていなくても、毎日、同じような時間におやつを食べたり、食事をしてしまうのです。

毎日、決まった時間におやつを食べている人は、お腹が空いているかどうかにかかわらず、やはり同じ時間におやつを食べてしまいます。

あるいは、夜に食事をする習慣がある人は、やはり夜になると何かを口に入れようとしてしまいます。

ダイエットにも、健康を維持するためにも、自分の食習慣を見直してみることは大切なことでしょう。

食事というものは、お腹が空いたときに、きちんと栄養を考えながら摂ったほうがいいに決まっていますので、「習慣で食べる」ということはあまりしないほうがいいのです。

「習慣で食べる」とどうしても食べすぎてしまうので、どんどんと肥満になってしまいます。

「習慣化」できる人だけがうまくいく。
内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。
社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。
趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。
著書に、『気にしない習慣よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』、『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。

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