本記事は、内藤 誼人氏の著書『「習慣化」できる人だけがうまくいく。』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。

habituation word or concept represented by wooden letter tiles on a wooden table with glasses and a book
(画像=lexiconimages / stock.adobe.com)

新しい習慣を身につける成功率は25%

新しい習慣を身につけようというとき、成功率はだいたいどれくらいなのでしょうか。

どんな行動を習慣化するのかにもよりますが、だいたい4人中1人くらいのようです。

アメリカにあるノースダコタ大学のケビン・マッコールは、40名の女子大学生に実験参加をお願いして、食事の後に、歯間を清潔にするために糸ようじを使うという行動を習慣化させてみました。

すると最初の1週間では87%が素直に言うことを聞いてくれたのですが、2か月後に追跡調査してみると、わずか23%だけ。習慣を身につけることができたのは約25%、だいたい4人に1人だったのです。逆に言うと、4名中3名は習慣を身につける試みをやめてしまったということになります。

もうひとつ別の研究もご紹介しましょう。

1988年、オーストラリアでは、日焼けは有害だとして「サンスマート・ヘルス・プロモーション・キャンペーン」という運動を始めました。

オーストラリア・がん行動研究センターのD・ヒルは、その後の3年間で、のべ4,428名に電話をかけ、「前の週にどれくらい日焼け予防をしましたか?」と尋ねてみました。

すると「帽子をかぶった」という人は、3年間で19%、26%、29%と3年連続で増えました。「日焼け止めを使った」という人も、12%、18%、21%と増えました。

たしかに、数値だけでいえば3年連続で増えたとはいえ、数値は微増にとどまっておりますし、やはり「日焼けしない」という行動を習慣化できたのは、4人中1人くらいになりました。

新しい行動を習慣化するのは、けっこう難しいのです。

新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こしたとき、日本人は、マスク着用、手洗い、密の回避など、すぐに新しい行動習慣を身につけたではないか、と思う人がいるかもしれません。

たしかに、新型コロナウイルスが蔓延したときには、ほぼ100%の人がマスク着用の習慣を身につけました。

けれども、これはかなり例外的な出来事だといえるでしょう。新型コロナウイルスという感染症が、治療法もよくわからない未知の病気でしたから、不安と恐怖によってマスク着用をしたのです。自分の生命が脅かされるような事態だったので、マスク着用を習慣化したのであって、これはかなり特殊なケースだと言えます。

新しい行動を習慣化するのは、やはりかなり難しいことであって、その成功率は25%くらいです。

よほどの理由がないと、私たちは新しい習慣を身につけられません。なかなか一筋縄ではいかない、ということもあらかじめ知っておく必要があります。

「習慣化」できる人だけがうまくいく。
内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。
社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。
趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。
著書に、『気にしない習慣よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』、『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。

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