この記事は2023年9月26日に「The Finance」で公開された「【連載】保険×DX~社会との共通価値創造(CSV)に向けて~① テレマティクス自動車保険から始まる「CSV×DX」の取組」を一部編集し、転載したものです。


クルマのコネクテッド化やIoT技術の進展により様々な走行データが取得できるようになり、これを活用して安全・安心に資するサービスを提供する「テレマティクス自動車保険」が普及している。あいおいニッセイ同和損保は日本におけるテレマティクス自動車保険のリーディングカンパニーであり、その取組を紹介する。

目次

  1. 「テレマティクス自動車保険」とは
  2. あいおいニッセイ同和損保の取組
  3. テレマティクス自動車保険の効果
  4. 「CSV×DX」とは

「テレマティクス自動車保険」とは

【連載】保険×DX~社会との共通価値創造(CSV)に向けて~① テレマティクス自動車保険から始まる「CSV×DX」の取組
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テレマティクスとは「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を組み合わせた造語であり、自動車などの移動する媒体に通信技術を組み合わせてリアルタイムに双方向で情報を通信し、「つながる」ことで新しいサービス提供することが可能となる技術のことを表す。
このテレマティクス技術を活用し、「安全運転による保険料割引」や「安全運転診断サービス」、「事故時の能動的で迅速・適切なサポート」等の安全・安心に資するサービスを提供するのが「テレマティクス自動車保険」である。

【連載】保険×DX~社会との共通価値創造(CSV)に向けて~① テレマティクス自動車保険から始まる「CSV×DX」の取組
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あいおいニッセイ同和損保の取組

あいおいニッセイ同和損保は、2004年からテレマティクス自動車保険を販売しているパイオニアであり、現在では180万台超の契約を保有するリーディングカンパニーである(2023年8月末現在)。
2018年4月に日本初の「安全運転の度合いに応じて保険料が割り引かれるテレマティクス自動車保険」である「タフ・つながるクルマの保険」を発売した。これは、コネクテッドカーから取得できる走行データを活用した商品である。その後も対象を拡大し、2020年1月には通信機能付きドライブレコーダー端末による「タフ・見守るクルマの保険プラス(ドラレコ型)」、2021年1月には簡易車載器とスマートフォンによる「タフ・見守るクルマの保険プラス S」とラインナップを拡大してきた。

テレマティクス自動車保険では、安全運転の度合いをスコア化した「安全運転スコア」に応じて保険料が割り引かれる。契約者には1回の運転および1か月ごとに「安全運転レポート」が提供されて自分のスコアを確認できると同時に、スコアUPのための安全運転アドバイスを見ることができる。「安全運転レポート」は専用のスマートフォンアプリで提供され、他にも安全運転を促進する脳のトレーニングゲームや、安全運転でポイントが貯まり様々な特典を得られるポイント制度「ADテレマイレージ」も楽しむことができる。

また、万一の事故の際にも、AIを活用して走行データを分析することで、高度な事故対応サービスを提供する。車両から大きな衝撃を検知し、AIにより事故と判定した場合に保険会社のコールセンターから契約者に安否確認の連絡を行う「緊急自動通報サービス」や、ドライブレコーダーの映像から相手車両の速度等の事故状況をAIで解析し、判例情報と照らし合わせて事故の相手方との過失割合の判定をサポートする機能等がある。

【連載】保険×DX~社会との共通価値創造(CSV)に向けて~① テレマティクス自動車保険から始まる「CSV×DX」の取組
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テレマティクス自動車保険の効果

テレマティクス自動車保険では安全運転をすることで保険料が割り引かれるため、契約者は安全運転を心がけ、事故の未然防止につながっている。テレマティクス自動車保険に加入している契約者は、通常の自動車保険に加入している契約者と比較して事故の発生頻度が18%低くなっている。
また、テレマティクス自動車保険では保険期間を通して安全・安心のサービスを提供することから、契約者の満足度も非常に高く、通常の自動車保険に比べて満足度は7.8pt高くなっている。
このようにテレマティクス自動車保険は、コンセプトとして掲げる「事故のあとの保険から、事故を起こさない保険へ」を体現しており、通常の自動車保険よりも大きな付加価値を提供していることが、多くのお客さまに受け入れられている理由となっている。

【連載】保険×DX~社会との共通価値創造(CSV)に向けて~① テレマティクス自動車保険から始まる「CSV×DX」の取組
(画像=The Finance)

「CSV×DX」とは

昨今、自然災害の多発・激甚化やサイバー攻撃の巧妙化など、未知のリスクへの対応の必要性が増すとともに、カーボンニュートラルをはじめとした社会課題の解決に貢献する企業を評価する価値観が社会に広がっている。
このような環境変化に対して、保険会社の役割も変化が求められている。従来は万一の事故の際の「補償」を提供してきたが、これからは事故・災害による被害を「未然に防ぐ」、事故が発生した場合も「影響を減らし、回復を支援する」という保険本来の機能を超えた新たな価値の提供が求められている。
そこであいおいニッセイ同和損保が打ち出したのが、「CSV×DX(シーエスブイ バイ ディーエックス)」のコンセプトである。DXを活用して社会・地域課題を解決する新たな価値観を創造する、そのためにはデータ・デジタル技術の活用や特色あるパートナーとの協業・共創と、そこから得られたデータ・ノウハウを活用し、お客さま・地域・社会とともに、様々な課題を解決する保険を目指すものである。
テレマティクス自動車保険は、まさに「CSV×DX」を体現する商品である。今後も同様の商品・サービスを開発・提供していくことで、社会・地域課題の解決にも貢献していく。

【連載】保険×DX~社会との共通価値創造(CSV)に向けて~① テレマティクス自動車保険から始まる「CSV×DX」の取組
(画像=The Finance)

本稿では、あいおいニッセイ同和損保が行ってきたテレマティクス自動車保険の取組、そしてコンセプトとして掲げる「CSV×DX」について論じた。

第二回では、ビッグデータであるテレマティクスデータを活用して、保険を超えた新たな価値をどのように提供しているか、現在の取組を論じていく。


[寄稿]梅田 傑 氏
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
テレマティクス・モビリティサービス事業開発部長

テレマティクス自動車保険の商品企画・開発に20年以上携わってきた経験を持つ、この分野のスペシャリスト。2023年4月から現職。