この記事は2023年10月24日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「小松マテーレ【3580・プライム】合成繊維の染色・特殊加工」を一部編集し、転載したものです。


感性と技術で戦う世界的ファブリックメーカー
企画力と技術革新が海外トップブランドから支持される

誰もが知るヨーロッパのラグジュアリーブランド、国際的大手スポーツブランドがこぞって求める、美しく機能性を持つ生地─それを生み出しているのが、小松マテーレだ。芸術の工業化・“Art in technology”を掲げ、色・風合いのみならず機能性を追求。「開発が要」と語る同社の試作布は、毎月1500種類に上る。身近なところでは、ファミリーマートで同社生地『ダントツ撥水』採用のパーカーが発売されている。

▼佐々木 久衛 社長

西華産業【8061・プライム】三菱系の機械商社
(画像=株主手帳)

川中で生地の付加価値高める
海外売上比率4割

小松マテーレは合成繊維の精練、染色、加工を行う。

「我々はファッション・アパレルの世界では川中と呼ばれている部分を担っています。生地に対して、染色や特殊加工を施して付加価値を高めた生地を生産しています。その生地を使ってアパレルメーカーが衣料品を生み出します」(佐々木久衛社長)

同社はわずかな色味や風合いにこだわり、ファッショナブルで情緒的な表現を重視するアパレル分野を主戦場としている。その他、インテリアやメディカル、建材まで幅広く事業を展開する。

直近の2023年3月期売上高は354億3800万円。海外売上比率は4割だ。売上の内訳は、衣類ファブリックが7割超を占める256億円。インテリアなど資材ファブリックが2割で79億円、オリジナル製品を製造販売する製品が4%の14億円、その他が1%の4・6億円となっている。

衣類ファブリックは前期比18・1%増。ファッション・スポーツ・民族衣装の分野があり、ファッションと民族衣装が前期比2割超増となった。民族衣装は主に中東のイスラム教徒の男性がまとう“トーブ”で、同社は高いシェア(世界約24%、国内約70%)を持つ隠れたガリバーだ。

「色は、白の中でも約100色、風合いは数十種類を用意しています。徹底した品質管理でこの数を実現させています。抗ウイルス性や、ひざをついて祈る時も汚れにくい素材など、機能性や着心地を追求している」(同氏)

世界の有名高級ブランド、大手スポーツメーカーが軒並み同社の生地を採用する中、国内からもオファーを受けている。『ダントツ撥水』ブランドで展開している同社生地がファミリーマートのパーカーで採用、販売されたのだ。

「撥水性能は昔からある技術ですが、当社はこの機能・商品分野において極めて高い技術を有している。接地面を小さくすることで水滴が球状になりわずかな傾きでも流れ落ち、長時間水が浸み込みにくいのが特徴です」(同氏)

毎月1500の試験布製造
開発維持する技術とひたむきさ

創業は1943年。創業の地である石川県小松市は、江戸時代から絹織物の産地として名をはせていた。シルクから合成繊維へと変遷があり、ポリエステル・ナイロンの加工を開始。加工技術の質が世に広く認められ、合成繊維の成長に伴い、注文が殺到するようになった。73年にはオイルショックに直面。受託販売が主だった同社は受注が大幅減となり、自ら生地を提案して販売するようになった。

「ここがターニングポイントでした。顧客や時代が求める商品を企画し提案する、染める、売る。その売る際に当社から買う理由がないと売れません。そこで優れた機能を追求していく。開発に力を注ぐようになりました」(同氏)

99年には海外直販事業をスタート。

「第二のターニングポイントは海外展開です。最初は苦戦しましたが、現在ではヨーロッパのトップメゾンから直接受注が舞い込むようになりました」(同氏)

03年には初めて国際的テキスタイル見本市“プルミエール・ヴィジョン”に参加し、ヨーロッパ進出の足掛かりとした。15年に日本企業初のグランプリを受賞している。

直販事業の開始を契機に磨き上げてきた開発力。海外のトップブランドを相手にすることで、色数や手触り・風合いといった要素で表現される『感性』と、耐久性や防水性・速乾性などの『機能』の両面のレベルを高めていった。

「我々の事業は開発が要です。業界内で幅広い情報収集に努め、エンドユーザーが何を求めているか徹底的にリサーチします。それで得た要素を当社なりの解釈で感度を高く開発しています」(同氏)

同社ではリサーチを経て開発計画が立ち上がると、「要望書」が技術課に出される。それぞれ得意分野をもつ6つの工場でプロジェクトチームが立ち上がり、試験反(布)を作る。その数は毎月1500に上る。

「いいもの作りは、数を打たなければいけないところがある。量産に乗せるのは試験反から10~15%程度。条件が固まってないと量産でトラブルが発生し、大きなロスが出るので、新商品量産にもリスクはあります。ここをうまく見極めながら工場の稼働を常時維持し、毎月やりこなしているのが、ある意味当社の強みです」(同氏)

▼試験反は毎月1500ほど製造する。量産に乗せるのは試験反から10~15%程度

新日本科学  【2395・プライム】   日本初の医薬品開発業務受託機関
(画像=株主手帳)

化学素材メーカーへ進化
重要テーマは環境配慮

24年3月期通期業績予想は、売上高が前期比3%増の365億円。営業利益は同12・8%減の14億円を見通す。

「前期は原燃料価格の高騰などで前期比20億円の減益要因がありましたが、付加価値化による販売価格アップ、コスト削減、数量増などによる20億円超の増益効果が功を奏して、僅かながら増益を果たしました。今期はベースの売上高としては伸びていますが、原燃料価格高騰の影響がマイナス10億円残ると見越しています。販売価格とコスト削減で吸収を図ります」(同氏)

また、今期は構造改革費5・6億円、設備投資18億円を計上。会社としては変革期にあり、アクセルを踏んで投資に臨む。

同社は5年前に「小松精練」から「小松マテーレ」へと社名を変更した。マテーレは素材を意味する「material」に繰り返しを意味する接尾語の「Re」を組み合わせた造語だ。繊維加工メーカーから化学素材メーカーへの事業進化を表明している。

「今後我々が伸ばしていきたいのは海外向け、資材ファブリックや新分野。テーマとなるのは、循環経済・環境配慮です」(同氏)

90年代から環境配慮型製品に取り組んでおり、同製品割合は現在30%で、30年には50%に上げる計画だという。同社はリサイクル糸や低エネルギーで染色する環境配慮製品の総合ブランド“マテレコ”を展開。また、染色排水の浄水過程で発生する汚泥をリサイクルした発泡セラミック素材“グリーンビズ”を開発。さらに、排水処理場から出る産業廃棄物(汚泥)を削減させる汚泥減容化事業へも今年度から参入した。

株主還元に関しては、「5年前から連続増配中です。業績は回復基調にあり、厳しくなっても現時点で減配は考えておりません」(同氏)

今期年間配当は、前期の20円に記念配当が加わり22円を予定する。


2023年3月期 連結業績

売上高354億3,800万円12.7%増
営業利益16億500万円0.7%増
経常利益16億8,300万円21.8%減
当期純利益11億1,800万円48.8%減

2024年3月期 連結業績予想

売上高365億円3.0%増
営業利益14億円12.8%減
経常利益19億5,000万円15.8%増
当期純利益17億5,000万円56.4%増

※株主手帳23年11月号発売日時点

佐々木 久衛 社長
Profile◉佐々木 久衛 社長(ささき・ひさえ)
1953年2月生まれ、岩手県出身。77年東工大院修了、東レ入社。2010年取締役。20年小松マテーレ経営企画室長、6月代表取締役社長に就任(現任)