総括
FX「ドル下落、米4Q・GDPナウは1.2%と大幅縮小、サームルールでは景気後退に近い」
ドル円=147-152、ユーロ円=158-163、ユーロドル=1.05-1.10
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価4位(3位)、伸びない賃金、マイナス成長のGDP。11月中旬は外債利払いの円買いに注意」
ドル円は今年の高値圏から小反落、週足は2週連続で上ヒゲが長い。11月中旬(15日近辺)は米債利払いがあって小緩むことが多い。かといって全面円高ではなく、11月はドル円が下落したが、ここまで8位。円より強い通貨は多い。
消費者物価の上昇による日銀の金融政策に市場は神経質になっているが、政府・日銀は賃金の上昇を望んでいる。実質賃金は17か月連続マイナスだ。また11月15日発表の7-9月期GDPは前期比年率で0.6%減少の予想だ。日本の景気も心許ない。また世界の中銀に利上げ打ち止め感がある中で、舵取りを間違うと高収益を出していた輸出産業に打撃を与えデフレ再開の道を歩むこととなる。内外の状況を見ながらの舵取りとなる。強かった米国経済も4QのGDPは3Qの4.9%から1%台と縮小する予想だ。
噂された10月初めの150円近辺の介入はなかったが、今年はこの水準での介入は難しいということだろう。ただ世界の政策金利打ち止め感や日本の貿易収支が赤字といえ赤字幅の縮小もあり、去年のような急激な円安はない。ドル下げの押し目では、米金利低下傾向ということもあり機関投資家の米債買いが出るだろう。10月中旬の貿易統計(上旬は4868億円の赤字)もチェックしたい。
*米ドル「通貨5位(4位)、株価(NYダウ)12位(13位)、ドル下落、4Q・GDPナウは1.2%と大幅縮小、サームルールでは景気後退に近い」
ドルは下落した。年間ではユーロに抜かれ5位へ後退、11月は11位スタート。要因としては、先ずは、FOMCが利上げを見送り、政策金利を据え置いた。インフレが落ち着く傾向が続いていることや長期金利の上昇傾向が家計や企業にとって負担となっていることがあった。次いで自動車ストの影響もあったか10月の雇用の伸びが予想以上に鈍化したことだ(以上は前回触れたこと)。10月ISM非製造業指数が5カ月ぶり低水準となり、米金利が低下しドル売りを誘った。12月と来年1月のFOMCでのフェッドウオッチも据え置きが優勢である。
元FRBエコノミストのサーム氏の法則では米国が景気後退に陥る可能性が高まってきた(サームルール=失業率の3カ月移動平均が、過去12カ月の最低値から0.5ポイント余り上昇した時にリセッションが始まる)。
さて世界の警察官の役割を果たす米国だがパレスチナ紛争でその負担が増す。11月半ばには予算問題で再び政府機関閉鎖の影が忍び寄る。トランプ派のジョンソン下院議長だけに議会紛糾の可能性も高まるだろう。
4QGDPのアトランタ連銀ナウは1.2%と3Qの4.9%から大幅低下している。クリーブランド連銀のCPIナウは11月が3.31%で落ち着いている。サプライチェーンインデックスは9月で-0.69で大きな障害はない。
*ユーロ「通貨4位(5位)、株価7位(8位)DAX)、米景気減速、米金利低下でユーロが浮上しドルを抜く。欧州景気も弱いまま」
米金利上昇打ち止め感、米景気指標悪化でのドル安で年間では米ドルを抜いて4位に浮上、11月は7位スタート。欧州も良い経済指標は出てこないが、主役の米国の金利低下、ドルの下落でユーロが上昇した。ユーロ圏のインフレは低下し欧州の金利も低下しているが、タカ派の独連銀ナーゲル総裁は「ユーロ圏のインフレはここ一年で大幅に鈍化したが、まだ克服していないため、ECBは十分な高金利を長期にわたり維持する必要がある。われわれの引き締まった金融政策は機能しているが、すぐに手を緩めてはならない」と指摘。「むしろ、主要金利は十分に長期にわたり、十分に高い水準を維持しなければならない」とした。また、金利がピークに達したかどうかを判断するのは時期尚早とした。
その結果、ナーゲル総裁はこうも語っている、「ドイツは欧州の病人ではない。確かに2023年は経済成長に関して良い年ではなかった。しかし、厳しい不況の年ではないというのも事実だ」。ドイツ経済は3Qに縮小。G7の中でIMFが23年の景気縮小を予測するのはドイツだけだ。成長を抑制してもインフレ2%への道を進むので上昇もゆっくりだ。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価15位(12位)、中銀はタカ派、市場はハト派予想へ」
ポンドは年間3位を維持。11月は5位スタート。ユーロ圏より若干良い経済指標、やや高い政策金利で支えられている。ただ株価は弱い。資源価格が去年ほど上昇していないからだ。10月製造業、非製造業PMIも悪化のユーロ圏と違って若干の改善。ただ今週発表の3Q・GDPは前期比、前年比で縮小しそうだ。前月比でも縮小の予想。来週発表の10月消費者物価は4.9%の予想で9月の6.7%から大幅低下する予想だ。実際その通りになれば英中銀のコメントも変わってくるが、先週の政策金利据え置き後の発言はまだタカ派だ。
ベイリー総裁は「利下げについて考えるのはあまりにも時期尚早」だと述べた。目標の3倍超に上るインフレを抑制するため高水準の金利を長期にわたって維持することを市場に準備させたい考えだ。
それでも投資家は、15年ぶりの高金利に英国経済が耐えられなくなるとみて、来年下期に急激な利下げがあるとの見方を強めている。賃金は過去最高に近いペースで上昇しているものの、失業率も上がり、住宅市場の活動は停滞している。複数の調査はリセッションが既に進行中であることを示す。スワップ金利の動向によると、市場は来年8月から年末までの2回利下げを完全に織り込み、3回目の利下げも視野に入れている。
*豪ドル「通貨7位(8位)、株価16位(15位)、政策金利は引き上げか(一部に据え置き派あり、その理由は)」
豪ドルは年間では人民元を抜いて7位へ上昇、11月は3位スタート。今週の政策金利引き毛観測が押し上げた。また中国との貿易拡大と、北京での豪中首脳会談も買いを誘った。豪の最大貿易相手国は中国であり依存度も20%以上と高い。3Q消費者物価の前期比上昇、9月消費者物価の上昇、また9月小売売上の改善や10月住宅価格の上昇も政策金利引き上げ予想を強めた。さらにはIMFが、RBAはインフレを目標水準に低下させ、インフレ期待を抑制するためにさらなる金融引き締めが必要との見解を示したこともある。 豪国内のインフレ鈍化は緩慢でコアインフレは依然として粘着的だと指摘した。その上で「2025年までにインフレ率を目標レンジに回帰させ、インフレ期待が抑制されなくなるリスクを最小化するため、金融政策のさらなる引き締めを推奨する」とした。
ただ9月雇用統計、10月製造業・非製造業PMIが弱かったこともあり政策金利据え置きを求める人も一部にいる。前四半期の消費者物価を押し上げた最大の要因は住宅価格と家賃、ガソリンと保険だった。これらを合わせるとCPIバスケットの約19%を占めるが、物価上昇分の44%を占めるという巨額を占めた。 「さらなる利上げはこうした勢力に対処するために何かできるだろうか?」ブルームバーグ・エコノミクスのマッキンタイア氏は語った。「石油、電気、家賃、保険の高騰は、RBAがインフレ率が目標に戻ると見込んでいる2025年下半期までに沈静化すると考えており、RBAからのさらなる支援がなくてもそうなるだろう」とした。マッキンタイア氏は、中銀が11月7日の5会合連続で政策金利を4.1%で一時停止すると見ている少数派の一人に含まれている。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(19位)、11月は好スタート、消費者・企業信頼感改善と中国期待」
11月は2位と好スタートを切っている。利上打ち止め感が出てきた米英欧中銀に対し利上げ観測が出てきた豪RBAで豪ドルが強含みしたことで連れ高となった。年間では9位。3Q失業率は予想通り前期の3.6%から3.9%へ悪化したが、10月の消費者信頼感指数が88.1で、前月の86.4から上昇したこと、10月の企業信頼感指数が23.4と9月の1.5から大幅改善したことも買いを誘った。
また中国の景気刺激策も豪ドルとともにNZドルも押し上げた。中国は財政赤字の対GDP比を(3月に設定した目標の3%から)約3.8%に引き上げ、財政刺激策の余地をさらに拡大していることを示唆した。
実際、当局は災害救援と建設を支援するために国債をさらに発行すると発表した。中国では年度途中で予算が変更されることはまれであり、経済への関心が高まっていることを示している可能性がある。
中国はNZの主要な輸出先(全体の20%以上)であり、その経済の健全性がNZ経済の健全性に大きく関連していることを意味する。
今週は乳製品価格指数、4Q企業インフレ予想、10月総合PMI、食料インフレ率の発表がある。今年最後の政策金利決定は11月29日となる。
また、10月14日に投開票した総選挙の公式結果が11月3日公表され第1党となった最大野党の中道右派・国民党が右派の少数政党2党と、連立政権を発足させる見通しとなった。6年ぶり政権交代となる。ただ各党との調整に時間を要し、発足時期は未定だ。