買収の目的は?

では買収の目的はどうか。それは利用層や出店エリアが被らず共存共栄が可能なことが一つの理由だ。鳥貴族もやきとり大吉も”焼鳥”を扱うが、やきとり大吉は住宅立地の小~中商圏に出店し、利用者のメインは30~50代。若者が多く利用し、駅前などの商業地に構える鳥貴族とは被ることがない。

さらに、鳥貴族HDは社員独立支援のためのフランチャイズノウハウの吸収なども買収メリットに挙げている。鳥貴族業態では費用負担が大きいという独立希望の社員に対し、負担の少ない支援策を設計。2020年6月に小規模業態の店舗をテスト出店しており、買収で得たノウハウをそこに活用してビジネスを拡大しようという考えだ。

この社員独立支援は出店戦略とも深く関わり非常に重要だ。同社ではフランチャイズオーナーになれる対象を社員・元社員に限定している。そうしたのは企業理念に深く共有した相手「カムレード(Comrade=同志)」(6年以上の勤務、うち店長職5年以上などの条件あり)と手を組むことで、味、品質、サービスの向上につながると考えているからだ。このカムレードは他のフランチャイズとは一線を画す取り組みで、やきとりの大吉にどう作用するかも注目されるところだ。

今後の外食チェーンのM&Aの可能性は?

中期経営計画での目標は、コロナ禍のような不測の事態にも対応できる耐性のある着実な成長であると記されている。

そこをベースにして、鳥貴族店舗については、関西、東海、関東以外の地域での出店にも力を入れ、日本全国各地で店舗を展開する。並行して、2021年にオープンした新業態のチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」の直営・フランチャイズ展開を進め、鳥貴族に並ぶ事業の柱に育てていく。さらに、第3、第4の新規事業創出も視野に入れながら、海外展開も積極的に進めているのが現状だ。

海外進出にあたり、鳥貴族のDNA(チキン、均一価格、国産)を持った業態で、"グローバルチキンフードカンパニー"を目指すと宣言。足掛かりとして、2023年4月に米国法人を設立しており、2024年5月に海外進出を意識した商号変更を行い「エターナルホスピタリティグループ」と社名を変える方針だ。

肝心の「M&A」は中期経営計画でも触れられておらず、食材はチキンに限定、理念を共有するカムレードとのビジネスを重視した姿を組み合わせると、異なる企業文化を取り入れる外食チェーンのM&Aを積極果敢に仕掛けていくことは想像しづらい。ただ、海外進出を積極的に進める中で、時には大胆にM&Aを活用すべき局面もありそうだ。果たして、今後どう向き合っていくことになるだろうか。