2007年信州大学医学部医学科卒業。2009年信州大学付属病院にて初期研修過程終了。脳神経外科専門医・指導医資格取得。これまでに2500例以上の脳外科手術を執刀。2016年に一般社団法人IoMT学会を立ち上げ、2018年7月に株式会社ZAIKENを創業。2019年10月にはドクターズ株式会社の事業を開始し、代表取締役社長 兼 CEO就任。2023年6月に公益財団法人柳川育英財団を創設し、理事長に就任。
これまでの事業や組織の変遷
ーまず御社の概要について教えていただけますでしょうか。
我々は “真の”デジタルヘルスプラットフォーム事業を構築し、展開しております。私自身が大学病院に長く勤めていた経験から、医療現場と医療サービス提供者の間に大きなハードルがあると感じ、当社の設立、当事業の立ち上げに至りました。
コロナ禍を経て、治療用アプリや問診・画像診断のAIなど、多くの医療やヘルスケア領域におけるサービスが誕生しましたが、その多くがユーザーや医療機関に広く認知及び利用、浸透はしていないと考えています。そこで、我々は専門医を中心とした医師との連携により医療現場での知見や知識を生かしつつ、医療とテクノロジーを本当の意味で掛け合わせることに加え、そのシナジーを最大限発揮させることで、サービスそのものがより医療現場に受け入れられるように支援をし、より多くのユーザーや医療機関に届く新しい仕組みを提供しています。
デジタルヘルス領域の総合プロデューサーとも言える立ち位置から業界を後押しし、デジタルヘルスプラットフォームにより、医療・ヘルスケアのDX化を支援し、より等しく医療がいきわたる未来の実現を目指しています。
ドクターズの強み
ー次に、具体的な事業内容について教えていただけますでしょうか。
我々は、「Doctors Cloud(ドクターズクラウド)」、「Doctors Next(ドクターズネクスト)」、「Doctors Station(ドクターズステーション)」という3つのサービスを提供しています。
まず、簡単にそれぞれのサービス概要をお話しさせていただくと、Doctors Cloudはデジタル医療・ヘルスケアサービスを企画し開発をするコンサルティング事業です。アプリやデバイスがどれだけ優れていても、それが医療的に有効でなければ、使ってもらえないという現実があります。だからこそ、我々はそのアプリやデバイスを医療的に有効にするための支援を行っています。具体的な支援として、医療現場で真に受け入れられるサービスとするために必要な医療現場からのヒアリングや、企画・開発支援のほか、臨床研究および臨床試験等の実施によるエビデンス取得支援、医療機器認証取得支援、論文学会発表による認知展開など、様々なプロセスをサポートすることで、本物のデジタルヘルスサービスを生み出すご支援をしています。
次にDoctors Nextは、デジタル医療・ヘルスケアサービスのマーケティング及び流通支援を行うサービスです。薬や医療機器の世界では、製薬会社や機械メーカーが作った製品を医療卸企業が医療機関に届けるための流通経路がしっかりと確立されています。しかし、デジタルヘルスの世界では、そのような流通経路が全く整っていないのが現状です。
Doctors Nextという、我々が医療関係者に提供しているWEBサイトには、メーカーが作ったあらゆる診療領域のデジタルヘルスサービスの情報をコンテンツ化・記事化して集約されており、またそのサイト内のチャットを通じて、医療機関からメーカーに製品に関する問い合わせをすることも可能です。そして、そのシステムを医療機関と毎日顔を合わせている医療卸にもOEM提供しているため、その医療卸企業を通じて、おのずと医療機関にデジタルヘルスサービスの情報が届く仕組みを構築しています。
最後に、Doctors Stationは、そのプラットフォームを通して、総合病院さながらの初期的な医療相談から問診、トリアージ、オンライン検査、そしてオンライン診療などの本格的な医療を全てオンラインにて実現可能にする本格的医療サービスです。様々なデジタルヘルスサービスを組み合わせることも可能で、我々が構築したプラットフォームを通じて、あらゆるサービスがオンラインでユーザーに届くようにしています。
ーなるほど、その支援を行っていく中で、御社の強みはどのようなところになるのでしょうか
デジタルヘルス領域におけるあらゆる支援をワンストップで行うことができることです。Doctors Cloudによって各社のそれぞれのデジタルヘルスサービスが深い医療目線により開発または改良され、次にDoctors Nextによって医療機関に広げられ、最後にDoctors Stationを通じてユーザーや患者様がオンラインにてヘルスケアおよび医療を享受していただけるようになっています。また、この一連の支援のなかで、我々は絶対に医療目線を外さないということ重視しているため、医療現場で活躍されている現役専門医を中心とした700名を超える先生方にエキスパート医師として我々の事業にご参画いただいています。
過去の実績について
ー次にこれまでの成功体験やブレイクスルーについて教えてください。
これまで多くの企業との事業連携やステークホルダーのご支援をしてきたことが成功事例だと考えています。事業連携という観点からは大手企業との提携が多く、例えば、医療という観点で医療用医薬品卸売のスズケン社と、テクノロジーという観点ではキヤノンITソリューションズ社と、そのほか、みずほ銀行社なども含めた多くの企業との資本業務提携を実現しております。また、ステークホルダーの支援実績は、事業開始以来、すでに334社の企業、116ヵ所の自治体、22万人の患者様をご支援しています。
ーデジタルヘルスプラットフォーム提供によって、どのような利益構造があるのでしょうか?
我々のポジションは、例えば、パソコンにおけるコアエンジンを提供している企業のモデルに近いと言えます。ユーザーがパソコンを使うという行為が、実はコアエンジンを稼働することとなりそのコアエンジンを提供する企業の収益につながるように、我々もプラットフォームの裏側でシステムや医療体制の供給を行い、その利用が我々の収益につながります。これにより、我々はまず医療・ヘルスケア産業に参入したい企業に我々のプラットフォームをOEMにて提供し、その先にいるユーザーをBtoBtoCという形で獲得しています。
柳川代表が考える次代重要トピックとは
ー続いて、今柳川代表が気になっているトピックについてお聞かせください。
海外の診療に関する動向や地域医療などの外部環境に注目しています。近年では北米で始まったオンライン診療の技術が日本でも普及し始め、特にコロナ禍ではデジタルヘルスが必要とされる状況が生まれました。また、2024年には医師の働き方改革が実装される予定で、これが地域医療にも大きな影響を及ぼすと思います。
さらに地域の医療は現在、医師が不眠不休で頑張ることで成り立っています。しかし、働き方改革が実装されると、医師の働く時間が制限され、地方の医局では医師を派遣して地域医療を満遍なくカバーするということも次第に難しくなっていくでしょう。そうなった時に、デジタルの力や遠隔医療の力を活用しながら、地域医療を守る必要があります。
先ほどもお話ししましたが、デジタルヘルスは現状多くのサービスが出てきていますが、実際にはまだ十分に使われていない状況で、サービスの移り変わりの変化スピードが非常に速いです。その中で、我々のデジタルヘルスプラットフォームは、このような現状を改善するための本質的な解決策だと考えています。
将来の取り組みについて
**ー次に、御社の未来構想など今後の具体的な取り組みについて教えていただけますでしょうか。
より多くの医療機関や医師、患者様、事業会社含めたステークホルダーを巻き込み、我々のデジタルヘルスプラットフォームをより活性化させることを目指しています。
そのためには、単にプラットフォームが存在するだけでなく、医療機関や患者様などのユーザーに明確な便益を提供する必要があります。また、ユーザーに様々なサービスを一元的に利用していただくためにも、デジタルヘルスサービスを提供する環境整備も必須です。デジタルヘルスサービスの提供会社の増加だけではなく、医療機関や患者様などのユーザーや協力してくださる専門医の増加というサイクルを全ての領域で回していくことが課題だと考え、重点的に取り組んでいきます。
ー大変な課題ですが、同時に大きな可能性も感じますね。海外展開などは考えているのでしょうか?
まずは海外発のデジタルヘルスサービスの日本参入のゲートとなり、日本への導入支援を始めています。法規制や許認可の影響により、海外の企業が直接日本に導入することは容易でない中で、我々がその間に立ち、海外の企業との協業も進めています。将来的には日本発のデジタルヘルスサービスを世界に向けて展開していくことも視野に入れており、それを実現するためのデジタルヘルスプラットフォームを国内外問わず展開していきます。それにより、世界中どこにいてもオンラインにて真のデジタルヘルスサービスの恩恵が受けられるエコシステムを拡大できると思っています。
ー本日は貴重なお話ありがとうございました。
- 氏名
- 柳川 貴雄(やながわ たかお)
- 会社名
- ドクターズ株式会社
- 役職
- 代表取締役社長 兼 CEO/日本脳神経外科学会 専門医