1985年4月コマツに入社。工場部門やグループ会社などで人事総務部門の部長を経験し、その後、本社総務部長、サステナビリティ推進本部長を歴任。2023年4月より、人事、教育、サステナビリティ管掌役員として、コマツグループにおけるダイバーシティ&インクルージョンを推進する。2023年6月コマツ取締役に就任。
ダイバーシティ経営に対する方針
当社は2021年に100周年を迎えた際に、「ものづくりと技術の革新で新たな価値を創り、人、社会、地球が共に栄える未来を切り拓く」という私たちの存在意義に基づいて、サステナビリティ基本方針を定めました。そして、私たちが行うことを、「人と共に」、「社会と共に」、「地球と共に」の3つにわけて明示しました。
「人と共に」において我々が行うことは、「多様でグローバルな人材が、個を尊重しつつ、一つのチームとして、やりがいと誇りを持って、安全・健康に働くことができる環境を提供」すること、「さまざまな現場や地域の課題解決のために挑戦を続け、新たな価値をお客さまと共に創り、社会に貢献できる人材を育成」すること、そして「コマツグループとして、すべての事業活動に関連する人権を尊重」することです。この「人と共に」の方針は、ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)を体現していると考えています。
さらに、中期経営計画(2022~2024年度)では、成長戦略「DANTOTSU Valueの創出」の3本柱の1つ「レジリエントな企業体質の構築」に向け、「多様性に富む人材基盤の充実化」を実現するための重点活動として「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を位置付けています。当社では、D&Iを企業文化として浸透させていくため、社長の小川は、”D&Iはイノベーションの源泉”というトップメッセージを常に社内へ発信しています。
具体的な取り組みとして、多様な人材が活躍できる環境整備を行いました。例えば、制度面では、多様な働き方、福利厚生や育児・介護等の両立支援施策の拡充を進めています。意識醸成の面では、D&Iリテラシー向上活動を行っています。これらの取り組みを行うことで活発かつ建設的な議論ができる職場になり、それがモチベーション向上や企業文化の変化へと繋がり、結果としてイノベーションの創出の可能性を高め、会社全体の成長へと発展すると考えています。
ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策
最も難しいのは、社員のD&Iに対する意識と企業文化に変化をもたらすことだと思います。制度や社員を支援する仕組みをどれだけ社内で整えても、個人の意識や会社の文化はすぐに変わるものではありません。これまで行ってきたダイバーシティに関する取り組みに対しても、社員が自分事として捉えることがまだできていないことが課題でした。
より一人ひとりに自分事として捉えてもらうために、D&Iリテラシーの向上を目指した取り組みを行っています。例えば、社長自らによるメッセージをはじめ、社内でのD&Iに関する好事例など、理解を深めるためのプロモーション動画を11本作成し、全社へ展開しました。また、個人の意識改革に向け、アンコンシャス・バイアスセミナー、心理的安全性セミナーを開催しました。さらには社長をはじめとした経営層がD&Iやキャリア形成について話すトークイベントも行っています。
コマツでは全世界の社員を対象に、グローバルエンゲージメントサーベイを定期的に行っています。毎回、その結果を分析し、課題を特定したうえで、D&I推進活動にも反映しています。
取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響
前述のとおり、D&Iを推進するにあたって、プロモーション動画やセミナー、トークイベントなど、様々な施策を行っています。
例えば、トークイベントにおいては、社員からのD&Iやキャリア形成に関する質問を受け付け、社長をはじめ経営層が自分の言葉で直接社員に語りました。経営層が自身の経験や考えを率直に話すことで、D&Iに対する納得感や理解度が深まったという意見が実際のアンケート結果から分かりました。
その他にも、アンコンシャス・バイアスセミナーを社長自身も受講することで、D&Iの理解に対する新たな気づきがあったと話しており、セミナーを実施する意義を実感しました。社長が出演するプロモーション動画では、セミナーを受講した感想を述べてもらいました。これまでの成功体験や長年の経験を基にした自分の価値観は、絶対的に正しいものではないということを、社長自らが積極的に発信していくことで、アンコンシャス・バイアスをはじめとしたD&Iを社員に自分事としてより一層捉えてもらえるように取り組んでいます。
様々な活動を積み重ねてきた結果、社内での理解も深まっていき、会社全体としてD&Iに関する意識が高まっていくのを実感しています。また、2023年には、なでしこ銘柄に選ばれ、社外からも評価されるようになりました。
社員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること
当社は1921年の創業時から「創業の精神」として人材育成をとても大切にしてきました。創業当初から社員を資本だと考えており、人材育成は、脈々と受け継がれてきた当社のDNAと捉えています。現在は、これまで行ってきた取り組みに加え、より社員個人の主体性や成長を目的とした施策を実施して、社員のエンゲージメント向上を目指しています。例えば、リスキリング教育、人材公募や留学制度の拡充などを行っており、今後も社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を支援する制度の充実化を検討し、社員が成長する機会を提供していきたいと考えています。
これからは、キャリアアップに必要なことを社員が主体的に学び、会社としてそれを支援することが、会社、社員の両方の成長において必要不可欠です。社員一人ひとりの活躍が会社の成長に繋がり、ひいては、人的資本の向上に繋がると考えています。
理想とする組織像と従業員への期待について
第一に社員一人ひとりが思う存分、能力や創造性を会社で発揮して欲しいと考えています。当社は、社員の能力を最大限に引き出すことや成長に繋がることであれば全力でサポートするので、社員には自ら学ぶ主体性を持ち続けて欲しいです。
そのため、我々の努めは、風通しの良い職場を実現することや、心理的安全性の高い環境を整えるなど、社員の方々に最大限に活躍していただく場を提供することです。
これによって会社と社員がお互いに意思疎通しながら、共に成長できる環境の実現を目指していきたいと思います。
- 氏名
- 横本 美津子(よこもと みつこ)
- 会社名
- コマツ
- 役職
- 取締役(兼)常務執行役員 人事,教育,サステナビリティ管掌