本記事は、マネックス証券 暗号資産アナリストの松嶋真倫氏の著書『暗号資産をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

暗号資産
(画像=irissca / stock.adobe.com)

お金に必要な3つの機能

世界中で「お金」が使えるのには理由がある

お金には、「価値の保存機能」「価値の交換機能」「価値の尺度機能」の3つの機能があると言われています。

モノやサービスなど、形のあるなしにかかわらず、何かと交換する時にお金は使われます。その際、交換物の価値が同等であることを示すモノの価値を決まった単位で測る機能、さらには、価値を安定的に保てるように価値を保存する機能が必要です。

私たちが日々、必要なモノやサービスを手に入れたり、お金同士の交換をしたりすることができるのは、この3つの機能があるからなのです。

「暗号資産」にも、この3つの機能があります。

インターネット上ではありますが、モノの価値を暗号資産それぞれの単位で測り、お金と同様に交換(やりとり)することができます。

値動きが激しいため、価値の保存機能の面については「適しているとは言えない」という指摘もありますが、新興国の通貨のように不安定ながらも価値を保つことができていると言っていいでしょう。

『暗号資産をやさしく教えてくれる本』より引用
(画像=『暗号資産をやさしく教えてくれる本』より引用)

お金の発行と流通の仕組み

お金は国や地域の判断に従って発行・流通されている

従来お金は、アメリカはドル、日本は円というように国や地域ごとに「法定通貨」として、流通する単位、形等が定められ、「中央銀行」が経済状況に応じて発行量をコントロールしています。

中央銀行は、その国や地域の通貨価値の安定を図る金融政策を司るため、「通貨の番人」とも呼ばれます。ちなみに、日本の中央銀行は、「日本銀行」です。

国が発行したお金は、中央銀行を通して、銀行等金融機関との取引で、市場、私たちの手元に届きます。

また、「市場」におけるお金の流通量も、景気の動向に応じて国や地域がコントロールしています。

『暗号資産をやさしく教えてくれる本』より引用
(画像=『暗号資産をやさしく教えてくれる本』より引用)

新型コロナウイルスの流行などで世界的に景気が悪化した際には、各国が大規模な経済支援を通じて市場に流れるお金の量を増やし、国内の経済活動を促します。

反対に経済状態が改善に向かっている時には、市場のお金の量を減らすことで景気の過熱を抑えます。

このように、お金は国や地域の判断に従って発行・流通されているのです。

意外と知らないお金の流通の仕組み

私たちがお金のやりとりをする際は、銀行等金融機関が軸となります。日本銀行は、一般の企業・人との取引はできません。

1.国内流通

たいていの人が、銀行振り込みで給与・年金等を受け取り、一部を現金として保有する場合もありますが、そのほとんどを銀行口座など、金融機関で管理しています。

企業が商品やサービスを生産し、お客が消費するまでには、取引先等、様々なお金のやりとりが発生しますが、これらも基本的に銀行を介して行われます。

最近では、両替など、銀行を利用する際に手数料がかかることが増えてきました。

2.国際流通

国ごとで流通するお金が異なるため、他国、他の地域とやりとりが生じる際は、お金を支払う側と受け取る側で通貨を交換する必要があります。

このような国をまたいだお金の取引は各国の銀行が連携し、国際的な金融ネットワークを構築することによって実現しています。

ただし、国や銀行ごとにシステムが異なるため、取引に手間や時間、取引手数料などがかかります。

暗号資産は、国がコントロールする法定通貨とは違い、景気の状況とは関係なしに一定のルールに従って発行されます。また総発行量もあらかじめ定められています。

「ブロックチェーン(Block Chain)」(別名「分散型台帳(技術)」)と呼ばれる世界共通のデータベース上で管理され、銀行などの仲介なしに個人で直接やりとりすることができます。

暗号資産のやりとりは、ネット上で、数字の記録で行われるため、異なる国同士のグローバルな取引であっても、送金時にかかる手数料や時間も銀行と比べて抑えることができます。皆でやりとりを監視し合う仕組みによって、個人が直接取引することができるため、国際間の移動にコストがほとんどかかりません。

しかし、暗号資産も通貨と同様に多くの種類が存在するため、たとえば、日本円と米ドルを交換する時のように、違う種類の暗号資産同士で交換する際は為替手数料がかかります。

暗号資産をやさしく教えてくれる本
松嶋真倫
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ 暗号資産アナリスト
大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの立ち上げメンバーとして業界調査や相場分析に従事。マネックスクリプトバンク株式会社では業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。本書が初の著書。

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