本記事は、マネックス証券 暗号資産アナリストの松嶋真倫氏の著書『暗号資産をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

暗号資産
(画像=琢也 栂 / stock.adobe.com)

暗号資産は従来のお金とは違うもの

暗号資産とは、インターネット上でやりとりできる財産のこと

暗号資産は、ビットコインが「電子通貨システム」としてつくられたこともあって、以前はインターネット上で取引される「仮想通貨」と呼ばれていました。

しかし、価格変動が大きいため、実態は通貨(currency)ではなく資産(asset)であるとの見方が次第に優勢となりました。海外では「cryptoassets」という表記が使われるようになり、日本でも「暗号資産」という言葉が一般的になりました。

暗号資産は、日本銀行のホームページで「インターネット上でやりとりできる財産的価値」であると説明があります。

また、資金の決済について定めた「資金決済法(資金決済に関する法律)」では、以下のような性質を持つものとして定義されています。



  • 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米ドル等)と相互に交換できる
  • 電子的に記録され、移転できる
  • 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

要は、「暗号資産は何かの支払いに使うことができ、法定通貨と交換もできるデジタル資産である」ということです。

暗号資産の3つの特徴

暗号資産には、従来のお金と違う3つの特徴があります。

1. 不正を検知しやすい

インターネットを通じて個人が直接取引するには、取引の内容について当事者間であらかじめ合意を形成する必要があります。

しかし、国や銀行など仲介者が存在しないため、知らない相手と取引する場合には、信頼性を保つことが難しくなってしまいます。

この問題を「ビザンチン将軍問題」と呼ぶことがあります。

暗号資産はネットワークに参加するメンバー全員で台帳を持ち、取引を検証し合う仕組みによってこの問題を解決しています。

仮に誰かが不正を働いても、分散型ネットワークによってすぐにそれを検知することができるのです。

2. システムが落ちにくい

従来のお金は、国(日本銀行)や金融機関が管理しています。そのため、管理システムがダウンしてしまうと、ネットワーク全体が停止してしまう恐れがあります。

たとえば、ある銀行のシステムに障害が発生すると、口座保有者がお金を引き出せなくなるばかりか、支払い業務が滞り、企業がお金を受け取れなかったり、他行に送金できなかったりして、他の銀行にも影響が及んだりします。

『暗号資産をやさしく教えてくれる本』より引用
(画像=『暗号資産をやさしく教えてくれる本』より引用)

暗号資産は、世界中のコンピュータによって分散的に管理されているため、どこか一部に問題が生じても、ネットワーク全体が稼働し続けることができます。

3. お金のルールを設定することができる

国が経済状況に応じて供給量をコントロールする法定通貨とは違い、暗号資産はデータベース上で発行ルールが決められています。

暗号資産を発行する主体は、発行時に総供給量や発行ペースなどのルールをデータベースにおけるコンピュータプログラムによって決めることができます。

たとえば、暗号資産の代表格と言えるビットコインは、総発行量が2,100万枚で、約10分間隔で一定量が新たに発行され、この新規発行量も約4年ごとに半減するような仕組みとなっています。

暗号資産が持つ4つのリスク

4つのリスクを知っておこう

「新しいお金」である暗号資産には、気をつけるべきこと、リスクがあります。

以下の4つについては、必ず押さえておきましょう。

1. 価格変動があるうえに大きい

暗号資産は価格が常に変動するうえに、その差が大きくなることも少なくありません。通貨や株式なども価格変動が日々起きていますが、それらと比べて暗号資産は取引高も取引参加者も規模が小さいため、短期間で価値が急上昇することもあれば、急落することもあります。ボラティリティ(値動きの変動率)、つまり、その商品の価格変動が大きくなります。

購入した時から価格が下がることもあるので、注意が必要です。

2. ハッキング

暗号資産はインターネット上で取引されるため、ハッキングされるリスクがあります。取引所のシステムや、個人のモバイル機器を使うため、インターネットサービスにおけるパスワードや、銀行でいう暗証番号にあたる情報を第三者に盗まれてしまうと資産が失われることがあります。

インターネットすべてに共通するリスクとして、情報管理を慎重に行う必要があります。

3. 51%攻撃

暗号資産は、世界中に散らばったコンピュータリソースによって取引を検証し、皆で承認してデータベースに記録します。何かあった際の意思決定の手段は「多数決」で、51%の人が承認すればそれは決定となります。

「51%攻撃」とは、作為的にシステムを活用し、51%の嘘の承認を取り、取引を成立させようとすることです。

攻撃者が取引検証のリソースを51%以上占有した場合に、不正取引によって資産を盗まれることがあります。

4. 規制

国によっては、暗号資産の規制がまだ十分に整備されていません。そのため、無法地帯の中で発行されている暗号資産や、事業を展開している暗号資産関連業者も数多く存在します。このような規制外のものは取引や活動の実態がない詐欺の場合が多いので、取引しないようにしましょう。

また各国がこれから暗号資産の規制を整備するにあたっては、中国のように突然、暗号資産の取引が禁止されてしまうなど、想定できないことが起こることもあります。

上記4つのリスクの他にも、暗号資産は麻薬取引などの違法な取引に使用されるリスクや、犯罪資金のマネーロンダリングに利用されるリスクなどがあります。これらは投資家に直接関わる問題ではありませんが、無意識にそのような不正に関与しないよう注意しましょう。

暗号資産をやさしく教えてくれる本
松嶋真倫
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ 暗号資産アナリスト
大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの立ち上げメンバーとして業界調査や相場分析に従事。マネックスクリプトバンク株式会社では業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。本書が初の著書。

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