こんにちは。今回の記事を担当しますM.Oと申します。
今回は日本人には余り馴染みのない、しかし、世界で大きなインパクトを持ち始めているイスラム金融についての記事をお届け致します。

イスラム金融というと中東諸国を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ドバイやバーレーンの金融セクターとしての急激な成長は有名です。また、豊潤なオイルマネーを背景に、世界各国に積極的な投資をしていることでも知られています。
加えて、近年はアジア圏のイスラム諸国でもイスラム金融が拡大してきました。マレーシアやインドネシアがイスラム圏の代表国になります。

独特のスタイルで成長を続けているイスラム金融とは、どのようなものなのでしょうか。

【参考】

世界の株式市場で存在感を増すSWF(政府系ファンド)〜彼らは国ごとにどんな違いを抱いているのか?〜


◉イスラム金融の総資産は100兆円超


イスラム金融の総資産は、現在100兆円ほどであると言われています。

金融の知識がある方は、この100兆円を少ないと感じられるかもしれません。2012年のMUFGグループの総資産が約219兆円、2005年の世界金融総資産が約13,800兆円といわれています。
確かにこれらに比べると規模は小さいかもしれませんが、現在着実にイスラム金融は拡大しつつあります。現在80カ国300以上の金融機関でイスラム金融が取り扱われており、2000年には年間15~20%の規模で拡大しました。
驚異的な成長スピードといえます。

なお、こうした背景を元に、日本でもイスラム金融への取り組みが始まっています。2008年には、日本政府の「通商白書」の中でイスラム金融について触れられました。
日本では馴染みの薄いイスラム金融ですが、確実に世界の金融システムの中で存在感を増しています。


◉イスラム金融の基本


私たちが普段利用している金融とイスラム金融は大きく異なります。
まず代表的な相違点に、利子の取り扱いが上げられるでしょう。イスラム金融では、「金銭の使用に対して利子を課すことを禁止」しています。これはイスラム教の貨幣に対する独特の考え方から、利子のない金融システムとなっています。

他には、「豚肉、酒類、武器などの特定の禁制品を使用または取引すること」を禁止しています。これは酒や豚肉を提供するホテルやレストランには融資しないという仕組みです。また、他に「投機行為」も禁止されており、貯蓄に対しては財産税のようなもの(ザカート)が課せられています。いわゆる「マイナス金利」ですね。
このような制約は、周囲を砂漠に囲まれた過酷な条件下では、資産の蓄積が難しく、高金利が発生しやすいために、資源を実体経済にむけて有効活用させるという点から生まれたと考えられています。

そして、現在この「無利子」の金融が注目を集めています。有利子より、無利子の方が実体経済への効果が大きいと推測されるからです。
ただし、無利子といっても例えば個人が車を購入する時にお金を借りた場合には、利子に相当する「マージン」を車体価格に上乗せして返済しなければなりません。また、それに国債に相当する「スクーク」と呼ばれる債権も発行されており、金利に相当する「リース料収入」が債権者に加わります。
つまり、資金調達の面からみれば有利子経済とあまり変わらないようにも見えるかもしれません。