1986年に新卒にて入社。以降地質地盤の技術者として、各種社会インフラ整備や地盤防災に邁進。
2011年、技術推進部部長。2017年、取締役就任。
2021年、代表取締役就任。2022年、代表取締役社長執行役員就任。
その他、水制度改革議員連盟の下部組織である「水循環基本法フォローアップ委員会」の委員、建設コンサルタンツ協会常任理事、建設コンサルタンツ協会関東支部の支部理事としても活動。
近年は、これまで培った技術ノウハウを民間企業へも提供しビジネスの領域を広げています。
これまでの事業変遷と組織拡大の沿革
弊社は1963年1月に設立されて以来、長きにわたって社会インフラ整備に携わってきました。国内では設立時に活発化していた高速道路建設や新幹線の橋梁設計、防災・減災を目的としたダムを主体とした治水施設の建設などの国内のインフラを支える事業を多数実施してきました。創立10年を迎えるころから政府開発援助(ODA)などの海外プロジェクトも増加し、1975年にイラン、1977年にはインドネシア、1980年にはリビアとイラクに事務所を開設しました。 1980年代には売り上げが100億円を超え、公共投資増額や災害復興事業が追い風となり90年後半には200億円を突破するものの、その後景気後退や政権交代などによる低迷が続きました。そのため、2004年に大きな組織改革を行いました。
従前の事業部制組織では、地域ごとに営業と技術が独立的に組織運営を行っていたため自事業部署が優先となり、全社最適の観点が欠けていました。その影響によって、事業部間の業務の競合や業務量の調整・平準化が困難になり、技術力に不安がある状態でも自事業部署を優先して業務を執行してしまうケースが発生し、顧客の信頼を損なう恐れがありました。 そこで、2004年に経営や営業などの会社機能を一元化するとともに、もともとあった縦軸としての事業部組織に対して、類似技術部門に着目した横軸の組織を掛け合わせた「マトリックス組織※」を導入しました。これより社内の協力体制や技術連携が生まれ、それが功を奏し業績が好転しました。その後、東日本大震災で公共投資が増えたこともあり、2015年には売り上げが200億円を回復しました。また、ここ15年ほどは国が掲げる国土強靭化の流れに後押しされ、売り上げは順調に推移しています。
※マトリックス組織:「職能」「事業」などの業務遂行要素を組み合わせ、網の目のように複数の軸で構成している組織体系のこと
人材確保とデジタルへの対応が今後の課題
昨今、自然災害の頻発や人口減少による地域の衰退、進化するテクノロジーなど、世の中は加速度的に変化しています。私たちが携わっている社会インフラ整備やそれに伴う社会課題も多様化・複雑化してきています。そのような変化の著しい社会情勢に柔軟に対処するために、必要となる社内的な対応課題を2つ挙げることができます。
1つ目は人材の確保です。現在、土木業界では、社会インフラの老朽化が進んでいることに加え、担い手不足が大きな問題となっています。少子高齢化に伴う若手技術者の減少によって、技術継承が困難となり、技術の空洞化も懸念されています。 2つ目は、デジタル技術への対応です。地震や気候変動による災害の頻発、地球環境に関わる新たな社会課題に対し、より高度かつ効果的な解決手法の適用が求められています。その要請に応えるためには、驚くほどのスピードで進展しているAIなどのデジタル技術の活用が不可欠になっています。
一方で、土木が経験工学とも言われているように、経験から得られる知識やノウハウがデジタルでは対応できない問題を解決する場面が多々あります。例えば、最近では現地調査にドローンなどのデジタル技術を取り入れていますが、調査結果の検証は技術者が行う必要があり、災害時には現場に足を運んで目で見て即座に対策を判断しなければならないケースもあります。 このように、私たちの業界ではデジタル技術とフィジカル側面の強い土木技術を融合させるために、両面の能力を強化することが重要となっています。社員に対しては、現場で地道に経験を積みながら、新しい知識や技術にもオープンであることを期待しています。
「人への投資」が鍵
弊社は、複雑化する社会課題をリスクではなく機会と捉え、社会課題の解決と企業としての持続的な成長の両立を実践しながら社会に貢献していく「サステナビリティ経営」を掲げています。そこで最も大切にしているのは「人」です。なぜなら、社会課題の解決に必要なコンサルティングや技術サービスは、社員一人一人が生み出すものだからです。社員への投資が、仕事に対するパフォーマンス向上に直結するという前提のもと、「働きやすさ」のさらなる向上と新たなビジネスモデル創出や時代変化への対応力を養うための「リスキリング」の強化に取り組んでいます。 これらは、弊社が抱える課題である「人材の確保」と「デジタルへの対応」の解決にも寄与すると考えています。
人的資本向上への取り組み
働きやすさを向上するために、オフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリットワーク」や「育児・介護」などの福利厚生に関する制度の充実を進めています。コロナ禍の特例制度であったテレワークを恒久制度とすることについては、社内で賛否両論がありましたが、コロナ禍での知見を俯瞰して最終的には制度化を決断しました。弊社の仕事の特性上、業務はチームで動くことが多く対面でのコミュニケーションが不可欠ですので、重要な会議や打ち合わせを円滑に進めていけるように、組織内で話し合って、さまざまなツールを活用するなど、おのおので工夫しながら制度の運用していくことをお願いしています。 また、健康経営の実践と強化による社員の心身の健康を保つ取り組みとして、会社内にリフレッシュルームを設置し、予約制でマッサージと鍼によるサービスを提供しています。一時間500円という手頃な費用で、社員にも好評です。この2024年1月には、さらなる働きやすさの実現のため中途社員限定ではありますが、特定地域での継続勤務を可能とする「地域限定社員」を導入しました。さらに全国的な物価高騰や首都圏と地方の物価水準の格差に対応するために、ベースアップや地域手当の制度化も今まさに検討中です。
スキルアップについては、社員の技術力・能力の向上を目指し取り組んでいます。国家資格である「技術士」や専門資格など、業務を進めるうえで不可欠な資格取得をサポートしています。また、「リスキリング」として、社内でのAI研修や弊社の技術創発研究所への社内短期研修など、一定レベルのデジタル・AIスキルを習得してもらうだけではなく、同時に問題解決能力向上のためのマネジメントスキルの向上を狙った教育プラグラムを実施しています。さらに、想像力やアイデア創出の視点を持つこと、経験にとらわれないで新しいことに挑戦する主体的な力、まさに弊社のビジョンでもある「新しい解」を生み出す力を培うための事業創出研修も行っています。
「働きがい」については、社員の社内外での活躍を見える化し、自分たちの社会的価値を自覚できるようにするために、業務を通した社会貢献の実写映像の配信、社員の働き方や経営層の考え方を座談会形式で動画発信するトークセッション、コミュニケーションツール(slack)やSNS(note)を活用した働き方に対する情報発信などさまざまな取り組みを行っています。 このように、多様で柔軟な働き方を可能とする制度を拡充することで、「働きやすさ」の向上に加えて、仕事と生活を両立しながら自己の能力を発揮し自己の価値を自覚できる「働きがい」のある職場づくりを目指しています。
こういった社内制度や人材への取り組みに対する社員からの反響はさまざまです。ですから全員が満足できる形を実現するのは、とてもハードルが高いと感じています。しかし、人への投資を最重要事項としているからこそ、全体最適の観点で人的資本価値の向上に取り組むことを常に意識しています。
今後の展望と社員への期待について
めまぐるしく変化する社会の不確実性を背景に、デジタル化のさらなる進化により産業構造は変化し、社会システム全体の見直しが迫られています。今後加速する産業構造の転換に対応するには、個々の能力やスキルを絶えずアップデートしなければなりません。 弊社は、これらに対応できる人材の育成と確保を喫緊の課題とし、そういった知識を学べる選択肢の多様化を一つの目標としています。
社員には、0から1を作る能力、1から100を育てる能力、課題解決能力の向上に対して自律的に取り組んでもらいたいと思っています。そして、人的資本の成長を加速するために、全力で社員をサポートできる環境を整えていきたいと考えています。
- 氏名
- 高橋 努(たかはし つとむ)
- 会社名
- 八千代エンジニヤリング株式会社
- 役職
- 代表取締役社長執行役員