ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「円=介入しても最弱通貨」

ドル円=153-158、ユーロ円=165-170、ユーロドル=1.05-1.10

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨最下位(11位)、株価4位(2位)、介入しても最弱通貨である要因は」


(介入でも最弱)
 政府は円買い介入を行った。ただ円はトルコリラに再び抜かれ年初来の最弱通貨となった。メキシコペソや南アランドは介入前日の水準より高くなっている。介入効果が思わしくない。2000年前後のドル買い介入ではドル上昇が定着するまで介入を続けた。ただ今は、G7を中心に「変動相場制では、為替相場は市場が決める」という認識なので、回数は出来ない。

(金利操作で円高となるのか、GDPは弱い)
 そこで、日銀の低金利政策が矢面に立ち、本来、為替と金融政策は関係しないとされながら、日銀に利上げ圧力がかかっている。植田総裁も急に円安を考慮した金融政策をとると示唆し始めた。
せっかく企業が最高益を上げている状況に水を差すのではないか、日銀も慎重だったはずだ。最近の経済指標も消費が弱い。まだ賃上げの効果は出ず、実質賃金は24か月連続減少(賃金上昇は夏以降か)。
 今週発表の1-3月期のGDPも前期比年率で1.4%減少の予想だ。そこで円安阻止のために利上げすると再び経済は下向きとなる。OECDも2024年の経済成長率を1.0%から0.5%へ下方修正した。

(円安の根本要因は)
 円安の最大要因である貿易収支が黒字化すればスイスやユーロのようにドル円も安定するのだが、まだ赤字。日本のエネルギーの海外依存の高さがその背景にある。
また、トルコ、アルゼンチン、ジンバブエだけでなく先進国でもフランス、英国、米国も利上げをしても通貨安が進んだ例は多数ある。最悪の想定は利上げ、通貨安だ。利上げで短期に円高となっても貿易赤字下ならまた円安傾向のに戻る。
 今週は米国CPIの発表がある。強くても弱くても、円の弱さは変わらず、ドル高ならもちろん円安、ドル安でもクロス円の円安が続くだろう。

(データ為替)
 5月上旬はデータ通り円高、これは介入がない時でもそうであった。5月中旬、下旬はドル高のデータあり。

*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)1位(13位)、消費者物価でイエレン財務長官やパウエル議長の示唆が当たるか」


(円買い介入で年間2位に後退)

 米ドルは4月15日週、22日週と2週連続で年間最強だったが、4月29日週のドル円での円買い介入で値を下げ2位に後退した、年間最強をメキシコペソに譲った。5月初旬は介入がなくともドル円は下げるデータはあった。  

(今週の焦点は消費者物価、卸売物価)  

 さて今週は4月卸売物価と消費物価の発表がある。4月消費者物価は3.4%、コアは3.6%予想。今週はいつもと違って卸売物価、消費物価の順に発表される。3月消費物価は2月が3.2%、予想が3.4%のところ、結果は3.5%だったので、その後ドルと金利が上昇した。僅か0.1%の変化でもデリケートな市場なので大男のディーラーも大きく反応する。その後、FRB関係者より、「頑固なインフレ」発言が出たり、利下げ回数予想が減少した。しかし、このところの経済指標の悪化で、米金利が若干低下したところでの発表となる。

(政府,FRBの考え、弱い経済指標)

 イエレン米財務長官は、住宅供給の逼迫がインフレ率低下の動きを鈍らせる要因になっているにせよ、基調的な物価上昇圧力はなお弱まりつつあるとの見方を示した。 パウエルFRB議長は、FRBの次の動きが利上げとなる可能性は低いと述べたので、FRBがタカ派姿勢に転じるとの懸念が和らいだ。  このところの経済指標は冴えない。4月雇用統計、4月PMI、4月ISMサービス業、5月消費者信頼感指数などだ。 今週は消費者物価の他に、小売売上、NY連銀製造業景気指数、NAHB住宅市場指数、住宅着工、建設許可、フィラデルフィア連銀製造業景気指数と発表が多い。

(米国経済現状)  

 GDPナウは4.2%と強い。CPIナウは3.5%、コアは3.65%、サプライチェーンインデックスは-0.85で落ち着いている、CNN恐怖と欲望指数は48と弱い。


*ユーロ「通貨6位(5位)、株価5位(6位)DAX)、ECB内で6月利下げ観測強まる、米国GDP減速でユーロは対ドルで上昇」


(ユーロドルは4週連続週足陽線でこのところ強い)
 通貨は6位。強からず、弱からず。ただユーロドルは4週連続週足陽線でこのところ強い。対円では171.60で上昇後、日銀介入で164.015まで下落も、先週は介入がなく、介入が入った4月29日の半値まで戻している。対ドルで強いのは米国1Q・GDPが予想より弱かったためだ。ECBに利下げ観測があるが、米ドル主導で動いている。株価(独DAX)は利下げ観測もあるので年初来12.07%高とまずまずだ

(6月の理事会で利下げを開始する公算が大きい)
 政策金利を据え置いた4月のECB議事要旨では、ユーロ圏のインフレ率は来年に目標とする2%に低下するとの見通しが示され、6月の理事会で利下げを開始する公算が大きいことが分かった。
議事要旨では「6月に制約的な金融政策の緩和が開始される妥当性が高い」との見方が示された。4月に緩和を開始すべきとの主張もあったが、賃金や物価を巡る一段の経済指標が得られるまで待つべきとの見解が大多数だった。また、インフレ目標を下回るコストと上回るコストが同程度になったと見なされていたことが判明。それまでは、急速な物価上昇がより大きなリスクという見方が大勢だった。
このほか、ECBの予測は経済指標で裏付けられているとし、信頼性が高まっているとの見解が示された。

市場では年内にECBが.合計約70bpの利下げを実施するとの観測が強まっている。

(デギンドスECB副総裁 バターよりも大砲に重点を置く)
 デギンドスECB副総裁は将来の利下げ回数について、ユーロ圏域内の賃金動向や金融市場の反応など一連の要因次第という認識を示した。同時に、FRBの金利決定がドルや為替レート、世界経済に影響を及ぼすものの、ECBの金融政策はFRBBの行動に左右されないと言明した。さらに、進行中のグローバル化の減速と地政学的緊張により、インフレ率は将来的にこれまでの水準より上昇する可能性が高いとの見方を示した。ロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州諸国は「バターよりも大砲に重点を置く」ようになり、それがインフレの高進と経済成長の低下を招くと述べた。


*ポンド「通貨5位(4位)、株価7位(9位)、景気後退から脱却、1Q・GDP」

(対円では4月29日に一時200円に乗せたが、日銀介入で191円台に急落。現在195円とボラタイル)
 米国GDPの不冴えな1Q・GDPやBHPグループのアングロアメリカンの買収がここ3週間ポンドを対ドルで雲の上に押し上げた。対円では4月29日に一時200円に乗せたが、日銀介入で191円台に急落した。先週は介入がなく195円台へ戻している。株価はBHPグループのアングロアメリカンの買収が活況をもたらし先週は2.68%高、年間で9.06%高となった。


(政策金利)
 英中銀は先週、6会合連続で政策金利を5.25%に据え置いた。ベイリー英中銀総裁は「状況が正しい方向に進んでいると楽観している」と表明。利下げ票を投じた委員も2人に増え、200年3月以来の利下げに一歩近づいた。据え置きは7対2で決定。前回利下げ票を投じたディングラ委員に加え、ラムスデン副総裁も0.25%ポイント利下げ支持に回った。ベイリー総裁は会見で、市場の予想以上の利下げが必要となる可能性を指摘した。次回の金融政策委員会は6月20日に予定されている。「はっきりさせておきたいのは、6月の金利変更は否定されるものでもなければ、既成事実化されるものでもないということだ」と述べた。ハント英財務相は、「持続可能な低金利」を望んでいるとした上で、「インフレが低下基調にあると確信できるまで待つ方が、後であわてて決定を覆すよりずっといい」と述べた。

(景気後退から脱却、1Q・GDP)
 OECDは5月2日、英国の今年の経済成長率予想を2月時点の0.7%から0.4%に引き下げたが、10日に発表された1Q・GDPは前期比0.6%増と、予想の0.4%を上回り、2021年4Q以来の大きさとなった。23年下半期の緩やかな景気後退から脱却した。ハント財務相は「今回の成長率は経済がパンデミック以来初めて完全に健全な状態に戻りつつあることを証明している」と述べた。


*豪ドル「通貨7位(8位)、株価15位(16位)、インフレ予想上方修正と中国景気回復で上昇」

(上昇、RBAインフレ率予想を上方修正、中国景気回復で
 ここ3週間では対ドルで上昇、対円でも日銀介入で104円から99円へ急落の場面もあったが、先週末は再び102円台後半へ上伸している。
RBAがインフレ率予想を大幅に上方修正し、年内は利下げを行わない可能性を示したことと、中国経済指標改善と中国株の急上昇がある。
 
(政策金利)
 RBAは政策金利を4.35%に据え置いた。インフレ鈍化ぺースは想定より緩やかとし、物価上昇圧力に対する警戒感を示した。またRBAはインフレ率予想を大幅に上方修正し、年内は利下げを行わない可能性を示した。
 政策金利は25年年央まで現行水準で推移すると想定しているとし、2月の予想よりも約9カ月長く現行水準にとどまるとの見通しを示した。
 1Qに3.6%だったインフレ率は6月までに3.8%に上昇し、年末までその水準で推移すると予想。これまでは年末までに3.2%に鈍化すると見込んでいた。
 現在3.8%の失業率は、6月までに4.0%、12月までに4.2%に上昇すると予想。前回予想は6月が4.2%、12月が4.3%だった。
 RBAは「経済の余剰生産能力はわれわれが現在考えているよりも少ないかもしれない」と説明した。

(中国景気回復でも豪ドル買い)
 豪ドルは中国景気の回復でも上昇した。中国の株価が急回復していること、4月の各種PMIは一部減速も50以上は維持したこと、4月貿易収支で輸出入ともに予想以上の伸びを示したことなどがある

(1Q小売売上高減少)
 1Q小売売上高は前期比0.4%減少し、予想の0.2%減よりも大幅な落ち込みとなった。住宅ローン金利上昇と実質所得減少で購買力が低下している。
 前年比では1.3%減少。不況時や新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン期に見られた低調な結果となった。

(今週は賃金、雇用)
今週は、4月NAB企業景況感指数、1Q賃金指数、4月雇用統計などの発表あり


*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(14位)、景気弱く、インフレ低下せず。ただ中国の景気回復が支えるか」

(中国経済の回復がNZドルを支えている)
対ドルで3週連続陽線と強い。対円では日銀介入でボラタイルだが、年初来5.21%高とまずまず。豪ドル同様に中国経済の回復がNZドルを支えている面がある。株価は弱く年初来0.13%安。経済指標が弱い。

(OECDが金融引き締めを要請)
 OECDは5月6日、NZ経済についての報告書で、中銀はインフレ率が目標レンジ内に収まるまで引き締め的な金融政策を維持すべきだとの見解を示した。政府に対しては支出抑制を促した。
 OECDは「データに依存した金融政策を維持するべきだ。インフレ率が中銀の目標レンジに達する時期が見通せず、負の世界的ショックが加わるリスクもある」と指摘した。
2021年10月から実施した利上げにより資金調達コストが上がって景気は減速したが、大量の移民流入によって予想以上に内需が押し上げられたと指摘。また「新型コロナウイルスのパンデミックと支出超過により、GDPに対する政府支出の比率が恒常的に増加し、財政状況が大幅に悪化している」とした。

(1Q失業率は4.3%に上昇)
 1Q失業率は4.3%と、前四半期の4.0%から上昇した。また、就業者数は0.2%減少した。予想は失業率が4.2%、就業者数が0.3%増だった。労働者に対する需要が減退している。
また、4月の消費者信頼感指数は82.1で、前月の86.4から低下した。

テクニカル分析

*ドル円「介入の高値安値の半値に近づく。年足は1985年-2023年の下降ラインを上抜く」
日足、4月29日の高値の160.219と5月3日の安値151.857の半値156.03近くまで戻す。ボリバン3σ上限上抜きから2σ下限へ。現在は中位越え。5月8日-10日の上昇ラインがサポート、4月29日-5月10日の下降ラインが上値抵抗。5日線が20日線を上抜くか。
週足、4月29日週に年初来高値の160.219をつけて急落も先週は半値(156.04)近くまで戻す。4月29日週-5月6日週の上昇ラインがサポート。ボリバン上位。5週線、20週線上向き。
月足、4か月連続陽線。5月はここまで陰線だが下ヒゲが伸びてきた。1月-3月の上昇ラインがサポート。5か月線、20か月線上向き。
年足、3年連続陽線、今年もここまで陽線。ダブルトップ、また今年も止められていた151円後半を上抜いて一時が160.219まで上昇。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2023年の下降ラインを上抜く。


*ユーロドル「ボリバン2σ下限から上限へジリジリと上昇」
日足、ボリバン2σ下限から上限へジリジリと上昇してきた。まだ雲の下。5月2日-9日の上昇ラインがサポート。5月3日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、4週連続陽線でボリバン下限から中位へ向かう。雲の上に出られるか。4月29日週-5月6日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20日線下向き。
月足、4月は2月-3月の上昇ラインを下抜ける。5月は上昇スタート。11月-4月の上昇ラインがサポート、1月-3月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向く、20か月線上向き。
年足、2023年は陽線。ドルより強かった。22年はボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。今年は陰線スタート。22年-23年の上昇ラインを下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。


*ユーロ円「介入で急落も5連続陽線でボリバン上位へ」
日足、4月29日の171.602から164.012へ下落も、ボリバン2σ下限に届かず5連続陽線でボリバン上位へ。5月9日-10日の上昇ラインがサポート。4月29日-5月6日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン3σ上限から反落も中位を割らず。4月15日週-5月6日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、4か月連続陽線。今月は陰線スタートも下ヒゲ長い。3月-4月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2024年4月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年もここまで陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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