ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「ドル円を買うのは誰だ=日本自身だ」

ドル円=153-158、ユーロ円=167-172、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨最下位(最下位)、株価3位(4位)、ドル円を買うのは誰だ=日本自身だ」
(介入が実施されても年間最弱の円)
 円は介入が実施されても年間最弱であることは変わらず。介入と米国CPI鈍化でもドル円は下がり切らず。一時、4月29日の高値の160.219と5月3日の安値151.852半値の156.036を越える。現在はボリバン中位を少し越えたところ。8兆円程度と推定される介入後も、既に南アランド、メキシコペソ、NZドル、豪ドルに抜かれている。介入の実弾が出たドル円も介入後の4%安から現在1.63%安まで迫られている。

(日本はインフレであると政府は認めていない)
 対外純資産国である以上、円安はメリットが大きいと思っている。ただ世間は物価高で円安を嫌う声が大きい。政府も同調しているようだが、インフレで年金受給額は増えない。米国は既に3年で20%で年金を増額しインフレ対策を行っている。日本は対策を行っていないということは、インフレとは認めていないのでは。実際、日本のインフレは世界が理想とする2%だ。

(利上げにふさわしい経済環境でもない)
 介入の効果がなくなるにつれ、政府は日銀に利上げの圧力をかけているようだ。ただ客観的状況はインフレは2%伸びが安定していない。1-3月期はマイナス成長、実質賃金は24か月マイナス。賃上げの効果はまだ出ていない。それは夏以降か。OECDは24年の成長見通しを1%から0.5%へ引き下げた。以上、あまり利上げにふさわしい経済環境でもない。

(ドル高円安を嫌うが、ドルを買っているのは日本だ)
 ドル買いは貿易赤字や、3月までの1年に約1000億ドル増加している日本の米国債買いである。また日本製鉄のUSスチール買収、ソニーのパラマウント買収、日本生命のコアブリッジ買収と今後も米国への大型投資が続く。自らドルを買い上げている。またそこを介入で円高にしても「失われた30年」で体験した弊害が、所ところで顕在化して苦しむのではないか。

(今週の注目指標)
 今週は4月貿易統計、3月機械受注、4月製造業・サービス業PMI、4月消費者物価の発表がある。

*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)12位(13位)、ドルは介入と弱い指標で3位に後退、5月では最下位」
(ドルは3位に後退、ドルは月間では最弱通貨)
 ドルは4月22日週には12通貨中で首位に立っていたが、その後日銀介入の影響や弱い経済指標も相次いだこともあり現在は3位に後退している。ユーロドルが5週連続で週足が陽線であることが、ドルの最近の弱さを物語っている。ドルは5月月間ではここまで最弱通貨となっている。

(弱い経済指標が続く)
 弱い経済指標は1QのGDP(前期比年率で1.6%、前期は3.4%、予想は2.5%)に始まり、シカゴPMI、ISM製造業・非製造業、雇用統計、小売売上と続いた。4月消費者物価も予想取り鈍化したが、市場はやや過剰に反応したところがあったようだ。日銀の約8兆円と推定されるドル売り介入もドル下げに効果があった。

(FRBはまだ緩和に慎重だ)
 4月消費者物価は鈍化したものの、FRB当局者はまだ緩和に慎重な発言をしている。ボウマンFRB理事は、インフレが「当面」高止まりするとの予想を改めて示したが、政策金利を現行水準に維持すれば、いずれは物価上昇圧力が後退するだろうと述べた。「今年4月までの平均のコア消費者物価は年率ベースで4.3%上昇と、昨年下期の平均を大きく上回っており、当面はインフレの高止まりが続くと見込んでいる」と指摘。「政策金利が維持されれば、インフレはさらに鈍化するというのが引き続き基本シナリオだが、この見通しには多くの上振れリスクがある」と述べた。
 ボスティック・アトランタ連銀総裁は、4月のインフレ報告はインフレの方向性、特に住宅価格の上昇鈍化について重要な手がかりを提供する可能性があるが、それはあまりにも鈍いと述べた。

(景況感以外のドル買いの要因)
 世界中で有事が起こり、有事の観測もあることで有事のドル買いははる。原油のみならず、鉱産物の急騰は起きており、取引通貨はドルなのでドル需要が強まる。米国自身が資源国なのでドルが買われるなのだ。実際、米国債を利用した海外からのドル買いは3月までの1年間で5287億ドル増加している。短期的にはドルは弱いが中期的には強い。

(今週の経済指標は)
 FOMC、4月製造業・サービス業PMI、新築住宅販売、耐久財受注、シガン大学消費者態度指数・確報値と中程度の指標の発表がある。

*ユーロ「通貨6位(6位)、株価7位(5位)DAX)、ユーロドルは5週連続で週足陽線、米ドル安の動きに素直に対応」
(ユーロドルは5週連続で週足陽線)
 通貨は12通貨中6位、やや下落して3位に後退したドルとの差は詰まった。ユーロドルは5週連続で週足陽線だ。ユーロ圏にさして良き材料があるわけではないが、米ドルが下がればユーロは上る。円と違って貿易赤字はないし、金利もやや円より高く、ドルの動きが伝わりやすい。通貨の水準も6位であり、インフレも収まって来ているのでECBにとっては不満はないだろう。

(欧州自体の経済状況はは低調)
 欧州委員会は5月15日、春の経済見通しを発表した。EU27カ国の平均成長率は今年1%、2025年の成長率は1.6%と予想されている。ユーロ圏の20カ国は若干減速し、今年は0.8%、来年は1.4%の成長が見込まれる。予測によると、24年1Qのユーロ圏の国内総生産(GDP)は前月比0.3%増となり、欧州経済が再び改善し、困難を克服したことを示している。欧州委員会はドイツ経済の停滞が続き、今年の成長率はわずか0.1%、2025年には1%にとどまり、ユーロ圏で下から3番目に位置すると予測している。

(6月利下げは織り込まれてきたので大きな材料ではない)
 シュナーベルECB専務理事は6の理事会で利下げを始めることが適切との認識を示した。 ただ7月会合での政策判断は「慎重なアプローチをとるべきだ」と語り、ゆっくりとしたペースで利下げを進めるのが望ましいとの考えを示した。先行きは「極めて不確実性が高い」ため、いかなる金利見通しもプレコミットできないと発言。「十分な時間」をかけて政策目標である2%の物価安定ができるか見極めるべきだと訴えた。6月に続く7月の利下げは「妥当ではない」とし、物価を巡るリスクは「上振れ方向に傾いている」と指摘。インフレが「粘着的になりつつある」との認識を示し「長期的には地政学的な分断がサプライチェーンに悪影響し、インフレにさらなる上振れリスクをもたらす」と懸念を示した。

 デコス・スペイン中銀総裁は6月に利下げを開始するとの見通しを示した。 総裁は「あらゆる指標が6月の利下げ開始という方向を指し示しており、それが我々の中心的なシナリオになるだろう。2025年半ばまでに2%のインフレ目標を達成できる可能性がありそうだ」と述べた。

*ポンド「通貨4位(5位)、株価9位(7位)、ついに英国もインフレ2%台か」
(今年は年間で5位以下に落ちたことはない)
今年は年間で5位以下に落ちたことはなく、まずまずの展開だ。ユーロとともに堅調だが、ユーロより金利が高いことと資源価格の上昇もポンドを支えている。BHPのアングロアメリカン買収も、株式をロンドンで上昇していることもあり市場が活況を呈した。

(2%台となるか。4月消費者物価)
今週は4月消費者物価の発表がある。予想は前年比で2.1%の上昇、ついに目指していた2%台を実現か。2%台なら2021年7月以来か。コアは3.7%上昇の予想。ベイリー中銀総裁は、利下げを行う前に、物価上昇が一段と鈍化していることを示す「より多くの証拠を確認する」必要があると述べていた。総裁は金利物価上昇率を示すインフレ率が今後数カ月以内に目標水準に「近く」低下すると中銀は予想していると述べた。早ければ6月にも利下げに道が開かれることになる。

(利下げ確率)
  トレーダーは、英中銀が6月に利下げ決定する確率を56%織り込んだ。以前は50%だった。

(まだ慎重な意見もあり)
 グリーン英中銀政策委員は5月16日、国内の強いインフレ圧力が弱まりつつあることを示す一段と決定的な証拠が得られるまで、英中銀は利下げを待つべきとの見解を示した。
インフレ緩和の程度を巡る不確実性の方が、中銀の高金利政策による経済への影響を巡る不確実性よりも高いと指摘。「政策を緩和する前にどの程度の期間、引き締め姿勢を維持すべきかを考えるにあたり、インフレの持続性が引き続き弱まっていることが証明される必要がある」と述べた。

(賃金上昇はまだ高い)
 1-3月の賃金上昇率はボーナスを除くベースで前年同期比6.0%と、予想を上回った。 英中銀は高い賃金上昇率がインフレ再燃の原因にならないか注視している。賃金上昇率は依然高水準だが、今回の統計では労働市場の過熱感が一部薄れている兆しも見られた。 失業率は4.3%と、23年5-7月以来の高水準。

*豪ドル「通貨7位(8位)、株価15位(16位)、資源価格の上昇、中国景気の回復が支える。インフレ圧力は和らぐ」
(月間3位と好調)
 日銀介入がありながら5月は円より強く月間3位と好調だ。年間では7位。資源価格の上昇、中国景気の回復、中国株式市場の上昇も豪ドルを支えている

(失業率の上昇を受けてRBAの追加利上げ観測が消滅)
 4月雇用統計は、就業者数が予想以上に増加し、労働力人口が増えた影響で失業率も上昇した。労働需給が徐々に緩んでいることを示した。

失業率は3カ月ぶり高水準の4.1%と、上方改定された前月の3.9%から上昇。
市場では失業率の上昇を受けてRBAの追加利上げ観測が消滅。54%の確率で12月にも利下げがあるとの見方を織り込んでいる。

(賃金指数も小幅低下)
 1Qの賃金価格指数は前期比0.8%上昇し、伸びは予想の0.9%を下回り、2022年終盤以来の低水準となった。
前年比伸び率は4.2%から4.1%に鈍化し、予想を下回った。求人数が減少し、労働市場が緩んでいることから、雇用主は今後数カ月間、賃上げ幅を縮小すると見込まれる。

(予算案発表、インフレ対策盛り込み好感される)
 政府は年次予算案を発表した。インフレ対策として光熱費と家賃の軽減措置を盛り込んだ。納税者1人当たり年平均1888豪ドル相当の所得税減税に加え、再生可能エネルギー、重要鉱物、国防への予算増額も表明した。


*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(19位)、5月はここまで最強。中国景気回復と高金利が支える」
(5月はここまで月間首位と好調)
 5月はここまで月間首位と好調、年間では9位。中国景気の回復による貿易の拡大や、5.5%と高い政策金利が据え置かれるという思惑によるものだ

(政策金利は据え置きか、OECDも据え置きを勧告)
 NZ中銀は5月22日の金融政策委員会で、政策金利を5.5%に据え置く見通しだ。 インフレが依然高止まりしていることから金融引き締めを継続する。金利据え置きは少なくとも3Qまで続くとの予想だ。

OECDは5月6日、NZ経済についての報告書で、中銀はインフレ率が目標レンジ内に収まるまで引き締め的な金融政策を維持すべきだとの見解を示した。政府に対しては支出抑制を促した。
OECDは「データに依存した金融政策を維持するべきだ。インフレ率が中銀の目標レンジに達する時期が見通せず、負の世界的ショックが加わるリスクもある」と指摘した。
2021年10月から実施した利上げにより資金調達コストが上がって景気は減速したが、大量の移民流入によって予想以上に内需が押し上げられたと指摘。 また「新型コロナウイルスのパンデミックと支出超過により、GDPに対する政府支出の比率が恒常的に増加し、財政状況が大幅に悪化している」とした。

(1Q生産者物価も予想より高い)
 1Q生産者物価は前期比で0.9%上昇で、前期の0.7%上昇を上回った。

今週は政策金利の他に1Q小売売上や4月貿易収支、5月消費者信頼感指数の発表がある。

テクニカル分析

*ドル円「介入の高値安値の半値を一時越える。ボリバン中位あたり」
日足、介入と米国CPI鈍化でも下がり切らず。一時、4月29日の高値の160.219と5月3日の安値151.852半値の156.036を越える。ボリバン中位あたり。5月8日-16日の上昇ラインがサポート、4月29日-5月15日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き、20日線を上向き。
週足、4月29日週に年初来高値の160.219をつけて急落(151.852)も先週は半値(156.04)越えて156.76へ上昇。5月6日週-13日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月13日週の下降ラインが上値抵抗
ボリバン上位。5週線、20週線上向き。
月足、4か月連続陽線。5月はここまで陰線だが下ヒゲが伸びてきた。1月-3月の上昇ラインがサポート。5か月線、20か月線上向き。
年足、3年連続陽線、今年もここまで陽線。ダブルトップ、また今年も止められていた151円後半を上抜いて一時が160.219まで上昇。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2023年の下降ラインを上抜く。

*ユーロドル「5週連続で週足陽線。日足もボリバン2σ上限へ」
日足、ボリバン2σ下限から一時上限を上抜ける。先週末もボリバン上位維持。雲の上に。5月15日-17日の上昇ラインがサポート。5月16日-17日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、5週連続陽線でボリバン下限から中位を上抜ける。雲の上に出る。5月6日週-13日週の上昇ラインがサポート。3月4日週-5月13日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向く、20日線下向き。
月足、4月は2月-3月の上昇ラインを下抜ける。5月は上昇スタート。11月-4月の上昇ラインがサポート、1月-3月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向く、20か月線上向き。
年足、2023年は陽線。ドルより強かった。22年はボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。今年は陰線スタート。22年-23年の上昇ラインを下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。

*ユーロ円「介入で急落もボリバン上限へ」
日足、4月29日の171.602から164.012へ下落も、ボリバン2σ下限に届かずボリバン上限へ。5月16日-17日の上昇ラインがサポート。4月29日-5月17日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン3σ上限から反落も中位を割らず再びボリバン2σ上限へ。5月6日週-13日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月13日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、4か月連続陽線。今月は陰線スタートも下ヒゲ長く陽転。3月-4月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2024年4月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年もここまで陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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