オペレーションの差別化を侮るなかれ

さらに松本氏から、事業の差別化について聞かれると、オペレーショナルエクセレンス(業務の作業を磨き上げることで、競争力が高まる状態)による差別化を信じているという山本氏は「特に鮮魚流通業界への参入のように未経験の業界への参入時は、初めはオペレーションによる差別化から入り、キャッシュマネージメントをし、業界のラーニングを進める。業界構造を理解していくなかで、構造的差別化要素を作り込んで、いわゆるMoat(モート)を築いていけばいい。業界によるが、完璧な差別化ができた状態で事業は開始できないし、インサイダーにならなければ、業界外の多くの人が気づき、真似できるレベルの差別化しか生まれないのでは。重要なのは、差別化の仮説は当然持つとして、ラーニングしながらミルフィーユのように差別化を積み重ねていくことなのでは」と展開。「オペレーションの差別化と、オペレーションの差を生む組織力や、組織文化の模倣は難しい。そこは強固なものになり得る」と強調した。

これに対し「そうした自信はどこから来るのか」との松本氏の質問には、エス・エム・エス立ち上げ期の体験を理由に挙げる。「創業初期は皆で人材紹介の営業をしていた。初めは全然成果がでなかったが、営業のノウハウを体系的に学び、オペレーションを練り上げていくことで、圧倒的に高い成果を出せた体験がベースになっている」と答えた。

また松本氏の「ビジネスの進め方が一貫している」との指摘には、「今は魚の卸売りと小売り、人材紹介を三本柱として運営しているが、これまでに10以上のサービスを立ち上げている。後から説明するとあたかも全てが想定通りやっているみたいに聞こえると思うが、現実はそんなことはない、試行錯誤の中で作り込んでいる」ときっぱり。

さらに「これからの成長戦略において、作りたいビジネスや、狙いたいマーケットはあるのか」との質問に対して、即座にM&Aを挙げた。魚の水揚げ時にいい状態を保てるようにすれば、今以上においしく食べることができ、今以上にバリューが出せるとし、「売り先を拡大したいと思っている水産会社さんなどと一緒に、新しい商品を作っていければ」と将来の構想を語った。

最後に「上場するまでの間、一番苦労したのは何か」との問いに対し、組織作りと回答。創業3年ほど経ち、採用を増やし一気に企業規模を拡大しようとしたが、逆に社員の退職が増え赤字が膨らんだ出来事を振り返った。