メキシコペソ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「ペソ、日銀介入で反落も7月はここまで最強、要因は」メキシコペソ見通し

予想レンジ 8.7-9.2

 (ポイント) 
*ペソ、は日銀介入で反落も月間首位維持
*ペソ上昇の要因は2つ、短期と長期
*ニアショアリングのためのビジネス諮問委員会を設置
*8月8日の政策金利決定までの道筋は
*メキシコ産業界へ説明責任を果たす、次期大統領
*為替レートは良好な水準、AMLO大統領
*中銀ヒース副総裁発言もペソを押し上げ
*対米輸出好調。郷里送金もまずまず、ニアショアリング好調
*2026年USMCA改定への議論開始、米国大統領選挙でも言及されよう
*選挙後の一連の混乱よりメキシコの経済の良き実情も理解したい
*4Qには米大統領選。トランプ不安はある
*メキシコの格付けはジャンク債の手前
*米墨インフレ格差、金利差、景況感格差の指標でデコボコな動き
*IMFに下方修正されたGDPが重し
*フィッチ、メキシコの2024年の成長予測を2.2%に下方修正

(ペソ、は日銀介入で反落も月間首位維持。一時9円台、雲の上。7月はドルより強い)
ペソ円は選挙後、雲の下で推移していたが、ついに7月9日に雲の上に出た。ただ日銀の円買い介入で小反落。後述するようにメキシコのファンダメンタルズは変わらず、ニアショアリングの勢いも続き、政府も支援している。

 7月はここまで最強通貨。年間では7.47%高でけっして安いわけではないが、2年連続最強を続けてきたペソだけにまだ満足感が得られていないと思う人もいるかもしれない。もちろんペソ円上昇は円安も支援、対ドルでは4.82%安。年初来10年国債利回りは10.33%、選挙後のピークの10.29%から低下も選挙前の10.15%にはまだ遠い。
  株価は年初来まだ落ち着かず、年初来5.16%安。これは景気減速と政策金利の高止まりのジレンマがある。

(ペソ上昇の要因は2つ、短期と長期)
短期では、6月消費者物価が予想以上に加速したことだ。前年比4.98%上昇し、予想の4.87%上昇を上回った。コアインフレ率は4.13%に鈍化し、予想の4.14%をわずかに下回った。中銀は6月には選挙後のペソ急落も考慮し政策金利を11%に据え置いたが、ロドリゲス総裁は、デインフレのプロセスが最近進展したことにより、将来的に金利引き下げについて議論できるようになると述べていたた。しかし、今回の消費者物価上昇でヒース副総裁は6月のデータを「非常に懸念される」と述べた。8月の政策金利決定はFRBの動向も考慮しながら微妙な状況となってきた。8月8日の政策会合の直前(同日)に7月消費者物価の発表がある。

(ペソ上昇の長期要因、「10の新しい産業回廊」)
シェインバウム次期大統領は「「10の新しい産業回廊」でニアショアリングを拡大しメキシコ全土の経済成長を促進することを期待している、メキシコ全土と国内最貧困層に恩恵をもたらさない限り、力強い経済成長には満足しない」と明言した。大統領は「国内外の投資を調整し分配するために、少なくとも100の追加工業団地の建設」を提案しているとした。
 今も、世界各国から、ニアショアリングに根差した投資が行われている。インフラ整備と財政支出の拡大・悪化という課題はあるが、軌道に乗れば長期的なメキシコのさらなる飛躍に繋がるだろう。

(ニアショアリングのためのビジネス諮問委員会を設置)
シャインバウム次期大統領は、メキシコおよび国際ビジネス界と政府との連携を強化する特別ビジネス諮問委員会を設置すると発表した。地域開発とメキシコのニアショアリング焦点を当てる。

 ビジネス諮問委員会は、実業家(トウモロコシ粉会社グループ・ミンサの会長)のアルゴメス氏が率いる予定。ゴメス氏は、「地域開発と企業移転に関連する民間投資を促進するため、民間部門と連携した協議会」を率いる予定。フォーブス誌の2024年版メキシコで最も影響力のある女性100人に選ばれたこの32歳のビジネスウーマンは、すでに次期大統領の政権移行チームで、ニアショアリング投資と地域開発に重点を置いた役割を担っている。

(今週の指標、今後の焦点)
6月消費者信頼感指数は47.5と5月の46.9から改善した。今週は中銀議事要旨、5月鉱工業生産に注目したい。その後は7月24日の7月前半消費者物価、7月30日の2Q・GDP、8月8日の7月消費者物価を経て同日の政策金利決定となる。