現在までの事業変遷について
ーーこれまでの事業変遷について教えてください。
株式会社歯愛メディカル 代表取締役社長・清水 清人氏(以下、社名・氏名略):私は40歳頃まで歯科医院を経営していました。その当時、歯科医療のマーケットでは物品が高額であり、この点を解決したいという思いで事業を始めました。
当初は歯科医院の先生たちの共同購入のまとめ役として、その後通信販売事業に変わっていきました。その事業を続ける中で順調に売上が伸びていきました。その後、当時扱っていた商材が歯科医院だけでなく動物病院やエステにも展開できることに気づき、販路の幅も拡大していきました。
ーーその後、どのような経緯でPRO MARKET上場を目指すことになったのでしょうか?
清水:社員や取引先に持ち株会のような形を取れないかとの思いがあり、さらにお客様に株を買っていただき、利益を共有することでより強い組織になれるのではないかと考えました。その方法を模索していく中で、上場を判断しました。
上場準備をする中で様々なマーケットを回りました。その中で中間段階としてマザーズ市場が良いのではないかと助言を受けましたが、色々リサーチしていく中でPRO MARKETが面白いのではないかと思いました。しかし、PRO MARKET上場では利益が取れないので大手証券会社はやらないとのことでした。逆に、それが自分の心を揺さぶり、PRO MARKETへの上場を果たしました。
ーーこれまでの事業展開や多角化において大切にしていることはありますか?
清水:これまでは自分たちで会社を立ち上げて分社化してきました。大切にしていることは、各社の社員に対して、平均給料を上げることが目標であることを伝え、全体で士気を高めることです。常に会社の方針を示し、グループ全体で売上を伸ばすことに注力しています。
ーー今後の成長戦略についてはどのようなことを考えていますか?
清水:現在の成長戦略は、主に2点あります。1点目は新しい物流戦略です。新しい物流センターを構え、これからの2024年問題に備えここを中心に発展していく予定です。また、2点目は技工のAIソフトウェアの導入です。それにより歯科技工が職人技の世界から、生産性の高いデジタル化、スキャナ・ミリングマシン加工へと変わっていきます。
自社事業の強み
ーー貴社の強みや優位性について教えてください
清水:現在の優位性は物流コストにあります。2023年10月に竣工されたロジスティクスセンターは非常に安いコストが想定され、また日本の中心にあるということでアドバンテージがあります。昨年、最大手運送会社では東京から発送の荷物の翌日配送可能エリアが九州から兵庫県まで短縮されてしまいましたが、Ciのある石川県からでは相変わらず翌日には福岡県まで届けることができます。また、土地が非常に安いため、ローコストに運営ができているという点が強みだと思います。
ーーそれは確かに強みですね。他にはどのような点が挙げられますか?
清水:歯科領域を深掘りしています。例えば、最近は韓国の企業の技工ソフトウェアを専売できるようになり、技工物のデザイン設計のAI自動化サービスを推進しています。そのように深掘することで、他社が我々の領域に入ってきても差別化することができます。
ーー全国の95%以上の地域をカバーしているということですが、どのように実現されているのでしょうか?
清水:当社は石川県に位置しておりますが、渋滞もなく、日本列島は弓の字型になっているため、各地へ行くのに内回りで距離が短いというアドバンテージがあります。 また大手運送会社の2024年問題の対応で、我々の地域の翌日配送可能エリアにはほとんど変更がなかったこともあり、実現できております。
思い描いている未来構想
ーー今後の未来構想や注力ポイントはどのようなところになりますでしょうか?
清水:まずは、売上高1000億円を目指していきます。その後、組織強化やコスト削減に努めることによって利益率の向上を狙います。
そこで2023年10月に、新しいロジスティクスセンターを竣工いたしました。今後稼働を上げていく中で、経費の見直しや効率化によって利益率の向上を図りたいと考えています。
もう一つの注力ポイントは、売上増を目指していくことです。単に商品を仕入れて売るだけでなく、金型作成やデザイン、ソフトウェア・独自商品開発なども行っており、売上を増やすことで開発費が希釈化し、利益率が向上します。 例えば、ホームページ制作事業では現在3300件ほど、つまり日本の歯科医院の5%のホームページを制作しておりサーバー料金を割算すると1件あたりのコストが抑えられていきます。
ーーなるほど。では、歯愛メディカルにとっての競合優位性はどのようなものがありますか?
清水:地理的な優位性があります。日本中どこからでもアクセスしやすい中心の石川県にあるため、2024年問題にも私たちの立地は優位に働くと予測されています。また、道路状況も東海道と比べて良好で、金沢港における当社の輸入量はトップクラスで優遇されています。この地理的アドバンテージを活かして、さらなる成長を目指していきたいと考えています。
今後のファイナンス計画について
ーーこれからのファイナンス計画について何かお考えですか?
清水:当社はもともと借入の無い企業でした。現在は新社屋の建設で借入が膨らんでおりますが、できれば1~2年のうちに返済したいと考えております。 また、株価自体には正直言うと、今まであまり目を向けていませんでしたが、能登の震災でお客様のお見舞いに回った際、当社の株主になっていただいている方が非常に多く、「株価をもう少し上げてくれないか」というお声をたくさんいただいたこともあり、今後は株価に対して取り組んでいこうと考えています。この取材を受けたのも一つの取り組みです。
ーー最近取り組まれたM&Aについて教えてください。
清水:当社の成長2大戦略のうちの1つである、ロジスティクスセンターを中心とした通販事業拡大の一環で、白鳩とニッセンをグループ化しました。これにより売上高1000億円の目処が立ちましたので、これからは収益力の強化と事業の深掘りに集中していこうと考えています。また、ニッセンと白鳩に関しましては、それぞれのお客様に当社のお客様をプラスすることによって売上増も図っていけると思いますし、また当社の仕組みであるロジシステムを導入することによって利益率が向上し、会社として伸びていくのではないかと考えております。
ーー今回ニッセンHDをM&Aされた理由にはどのようなものがございますか?
清水:当社は今後ナースウエア等の分野を強化し、さらに下着の分野の販売も増やしていきたいと考えております。介護施設向けの通信販売も行っており、介護用品に関する通販の会社は他にもありますが、当社では下着や介護者様の洋服等、ファッションに対する分野も強化していきたいと考えております。また、たくさんの顧客データを持っており、過去には看護婦さんに対する販売が多かったと認識しております。そういったところも活用していくことができれば、グループとして売上増になるのではないかと考えております。
ーーこれからの成長イメージについて教えてください。
清水:白鳩やニッセンなどのグループ会社と連携して新商品の開発や新たなジャンルに挑戦できると思いますし、技工用のソフトウェアを広めることによって日本の技工業界が変わり、コスト削減や能率の向上ができると思います。さらには当社が手掛けている再生事業に対する取り組みで歯髄から身体の再生ができ、この事業は人類の進歩・発展に寄与できるもので、そういった形でグループとして成長できたらよいなと考えております。
ZUU onlineユーザーへ一言
ーーZUU onlineユーザーに一言お願いいたします。
清水:当社は本社が石川県という田舎にありまして、情報等にやや弱い面があります。ご覧いただいている皆様と色んなところで協業したり、お力をお借りすることによってお互い伸びる可能性があればよいなと思っております。何かあればお声がけください。よろしくお願いいたします。
- 氏名
- 清水 清人(しみず きよと)
- 社名
- 株式会社歯愛メディカル
- 役職
- 代表取締役社長