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現在までの事業変遷について
ーーポールトゥウィンホールディングスの事業変遷について、創業から現在までの経緯を教えていただけますか?
ポールトゥウィンホールディングス株式会社 取締役CFO・山内 城治氏(以下、社名・氏名略) はい、まず1994年のポールトゥウィン創業当初はゲームのデバッグ業務からスタートしました。当時、各ゲームメーカーは自社でデバッグチームを持っていましたが、デバッグのようなコツコツとした作業を行うスタッフの募集に苦労されていて、アウトソーシングできた方が良いと考えていました。そこで、シーズナリティに応じてアウトソーシングできるビジネスモデルを構築しました。
また、デバッグに付随してゲーム業界に必要なアウトソーシングサービスを提供するようにもなりました。例えば、カスタマーサポートやローカライズ、ゲーム内で使用するサウンドやグラフィックの開発などです。
その後、2000年にピットクルーを設立し、ネットショッピングやネットオークションでの出品物のチェック業務や、動画投稿サイトでの著作権違反やアダルトコンテンツのチェック業務、ネット広告審査、最近ではQRコード決済の不正モニタリングなど、ネットサポート事業を展開しました。
このように、ゲーム業界とネット業界で最終的に人がテストやチェックしなければならない領域で事業を拡大してきました。
その後、2011年に上場しましたが、上場後は資金を使って海外展開やメディア・コンテンツ領域の事業活動を活発化させてきました。
ーー山内様がジョインされたのはいつ頃でしょうか?
山内私が最初に入社したのは2005年で、当時の子会社であるピットクルーに入社しました。その後、2008年にピットクルーの取締役になり、2009年にホールディングスの管理部長になりました。そして、2010年からホールディングスの取締役となり現在に至っています。
貴社における山内様の役割について
ーー山内様が具体的にどのような役割を果たされているのかお伺いしてもよろしいでしょうか。
山内私はコーポレート部門の業務全般を管掌しています。その中で、機関投資家や個人投資家対応は自ら行っており、決算説明資料の作成など実務的な部分にも関わっています。
ーー上場後はかなりM&Aにも積極的に取り組まれていると思いますが、そのあたりも山内様が主導されて実施されているという形ですか?
山内案件の発掘、検討はグループをあげて行っていて、私は実務的なデューデリジェンスやクロージングなどをスタッフや外部パートナーと協力しながら取りまとめています。
山内様が意思決定の際に重要視をしている点について
ーー多岐にわたる業務をされている中で、意思決定をされる際に大事にされているポイントを教えていただけますか?
山内私自身が特定のスペシャリティを持っているわけではないので、さまざまな人の意見を聞くことを大切にしています。社内だけでなく、外部パートナーからも意見を聞き、多くの意思決定のための材料を集めるようにしています。
また、世の中で良いと言われている考え方が本当に自社に合うのか、カスタマイズが必要かどうかを見極めることも大切にしています。
ーー上場の際には管理部長として取締役をされていたと思いますが、上場前後での違いや意識された点についてお聞かせください。
山内上場準備は、私自身が財務系のドキュメントを作成し、もう1人総務系のドキュメントを作成するスタッフの2人が中心で行い、なるべく事業に携わる人たちに負担をかけないようにして、事業の勢いを削がないように進めました。証券会社からの質問対応は終わりが見えず大変でしたが、今となっては懐かしい思い出です。上場後は、株主総会や決算説明会の運営など、新たな業務が増えました。
また、IR対応も初めてでしたが、市場からの評価や現場で起きていることを照らし合わせ、世の中の旬を感じ取って、当社としての打ち出し方を考えるのは楽しかったです。
ーーピットクルーの代表を経て、現在はホールディングスの取締役をされていますが、代表とCFOとの役割の違いについてどのように感じられていますか?
山内 コーポレート部門の経歴が長かった中で、当時のホールディングスの社長から事業を見てみることを勧められ、ピットクルーの代表として業績改善に取り組みました。現場でのコツコツとした仕事の積み重ねでグループ全体が成り立っていることを実感し、スタッフがどのような思いで働いているのかを感じることができました。また、CFOは、どちらかというと事業側からではなく投資家や市場側の反応を見ながら会社の方向性を考えますが、事業側から会社を見てみたことは今の自分の役に立っていると感じます。
ーーグループ全体を見ていく中で、特に意識されていることポイントがあれば教えていただけますか?
山内 まだグループ全体のコミュニケーションやシナジー創出が不足していると感じています。グループ会社幹部の相互リレーションの機会を増やし、事務的な数字だけではなく、その数字の裏側の話を聞くことを大切にすることで、より適切な方向性を見つけ出すことができると考えています。
山内様の思い描いている貴社の未来構想について
ーー山内様、ポールトゥウィンホールディングスの今後の未来構想についてお話いただけますか?2029年1月に1000億円達成という目標を拝見しました。また、国内ソリューション、海外ソリューション、メディア・コンテンツの展望についてもお聞かせいただければと思います。
山内 はい、1000億円達成に向けて、国内ソリューションで450億円、海外ソリューションで400億円、メディア・コンテンツで150億円という目標を掲げています。この売上割合は2年前に設定されたもので、そろそろ見直しが必要かもしれませんが、現在はこの目標に向かって進めています。これを達成するためには、堅実な事業と伸びしろのある事業の組み合わせが重要だと考えており、現状、メディア・コンテンツは赤字ですが、国内ソリューション・海外ソリューションで支えながら、将来的な伸びしろを見込んでいます。
また、国内・海外のコアビジネスを大切にしながら、新たな市場や顧客を開拓していく方針です。新しいサービスを展開し、特に海外はまだまだ人口増加のポテンシャルがあり、市場拡大を目指しています。また、メディア・コンテンツでは日本が誇るゲーム、アニメなどのエンターテインメント領域のIP活用事業に力を入れています。
ーー2029年の目標達成に向けて、山内様が感じている課題や今後のテーマについて教えていただけますか?
山内 課題、今後のテーマとしては、さまざまな人材が働ける会社にしていくことが重要だと考えています。これまで、テスト、チェックという業務の性質上、規律正しいスタッフが多かったのですが、これからは変化に強い人材も必要になってくると思います。人材や地域の多様化に取り組んでいくことで、バランスの良い組織を目指しています。
ーー投資計画やキャピタルアロケーションの方針についてもお聞かせいただけますか?
山内 キャピタルアロケーションでは、資本コストを意識した財務規律や効率化を進めています。投資家からの要請も踏まえ、株主還元にも力を入れています。投資の観点では、人材の強化やトップラインの向上が重要なテーマとなっています。
ーー M&Aにおいて特に重視されているポイントや意識されていることは何でしょうか?
山内 M&Aでは、単純な足し算の手段にならないように注意しています。グループ内で共通認識を持ち、相乗効果が出るように意識しています。
また、引き続き経営に関与してくれるオーナー企業を好んでいます。オーナーが抜けた途端にビジネスが成り立たなくなるような状況は避けたいですからね。
ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言
ーー ZUU onlineのユーザーに向けて、今後貴社として注目していただきたいポイントやトレンドがあればお伝えいただけますでしょうか?
山内 現状、過去に比べると収益性が下がり、時価総額が落ちてしまっていますが、一時的なものと認識しています。収益性が高い時期が続いたため、それを下げることには葛藤もありましたが、サステナビリティ経営の観点から事業を成長し続けるためには、今はしゃがみ込む時期として、人材やサービスの入れ替えといった大改革を行っています。
当社は、ゲームやアニメなどのエンターテインメント市場で事業展開しており、今仕込んでいるアニメ制作事業や、V Tuber事業、ライバー事業、歌い手事業なども順次花開く予定です。日本の誇るエンターテインメントの分野で、我々なりに品質保証や制作を通じて貢献していきたいと考えています。
また、業績が大きく落ち込んでいる時期であっても、安定的な株主還元の継続を意識して取り組んでいます。長年減配がないように意識して取り組んできたことや、年次の配当だけでなく、中間配当と期末配当の2回に増やすことで、還元機会を増やしている点も注目していただきたいと考えています。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
- 氏名
- 山内 城治(やまうち じょうじ)
- 社名
- ポールトゥウィンホールディングス株式会社
- 役職
- 取締役CFO