これまでの事業変遷について
—— 創業から現在に至るまでの変遷についてお聞かせください。
山田コンサルティンググループ株式会社 代表取締役社長・増田 慶作氏(以下、社名・氏名略) 山田コンサルティンググループは、もともと公認会計士・税理士事務所からスピンアウトして設立されました。1997年に事業再生のビジネスを立ち上げたのがコンサルティング事業の始まりです。当時は「失われた30年」と呼ばれる時代で、大手銀行が不良債権と戦っていました。その中で、銀行では多数の中堅・中小企業の再生支援のニーズがあり、当社がそれを請け負うことで事業が広がっていきました。
そこから、当社は孤独な経営者の相談相手として、相続や後継者問題、組織戦略など、お客様の経営課題を共に考えていくことを大切にして事業運営してきました。特に大事にしているのは、メインの担当者が変わらず長いリレーションを築きながら、お客様のニーズに合わせて各分野の専門家を社内でアサインしてサポートに入る形をとることで、お客様により満足していただける結果を出すことです。
—— 人材教育についてはどのようにお考えですか?
増田 若いメンバーが経営者と対等に会話できるようになることが重要であり、総合力・専門力・人間力を高めるために、普段から自己研鑽のプログラムを実施して各人のレベルアップに努め、外部講師を招いて視野を広げるようにサポートもしっかりしています。一方、2019年に東証一部に市場区分を変えたことをきっかけに、働き方に対する意識も変えてもらいました。女性の割合も4割を超え、時短勤務やフレキシブルな勤務体系を導入しました。これにより、定着率が上がり、顧客との長いリレーションを築けるようになっています。当社は「チャレンジし続けられる職場(働きがい)」「安心して働ける職場」を人材戦略基本方針の柱とし、力を入れて取り組んでいます。
自社事業の強みについて
—— 御社の競合優位性について教えてください。
増田 当社の強みは、上場会社を含むオーナー系企業に対してワンストップでサービスを提供できる点です。例えば、過去に親族への事業承継を支援したお客様から、将来的には親族内の承継が難しいとご相談を受け、第三者へのM&Aをご支援するなど、長いリレーションの中で、お客様を取り巻く様々な課題に対応できるよう、部門間の連携を密に行っています。
また、海外事業は、基本的に自社で拠点を作っており、これが当社の特徴であり強みです。海外で事業を展開したいお客様を、200名を超える各国の現地メンバーが支援できるような体制が整いつつあります。海外事業はまだまだこれからの事業ですが、成長が期待できる分野ですので、積極的に取り組んでいます。
ぶつかった壁やその乗り越え方
—— 会社を経営する中で、最も困難だったことは何ですか?
増田 2007年に事業再生ファンドの運営がうまく行かなかったときですね。100億円を投資しましたが、成功したのは1件のみで、それ以外は失敗してしまいました。この時、逃げずに取り組んでくれたメンバーのため、また多くのメンバーの人生を預かっている身として、「会社を潰しちゃいけない」と思いました。
ファンドの失敗によって大きな損失を出すことになってしまいましたが、コンサルティング部門では利益が出ていたため、当時の代表取締役と協議の上、目標を達成していた部門の社員には業績賞与を出しました。これによって、メンバーの安心感や信頼関係を保つことができたのです。この時に、人こそが唯一の財産であると実感し、メンバーとのコミュニケーションをさらに重視するようになりました。彼らが安心して働ける環境を作ることが大切です。失敗から学び、次に生かすことが重要だと考えています。
現在取り組んでいる投資事業は、分散した株式の集約などの事業承継に関わる事業です。当時の事業再生ファンドとは異なり経営には関与せず、株主構成の適正化を支援します。
—— 失敗を糧に成長する姿勢が素晴らしいですね。
増田 はい、今後も人を大切にしながら、安定した経営を目指します。新しい挑戦も続けていきますが、リスクをしっかりと管理し、堅実に進めていきたいと思っています。
今後の経営・事業の展望
—— 新規事業の着想や既存事業の拡大について、どのような戦略をお考えですか?
増田 最近では、海外事業が形になり始めています。特に成長が期待できる米国においては、日米M&Aのパイオニアである竹中パートナーズ社を子会社化しました。同社メンバーと一体となって、米国を中心とするクロスボーダーM&Aをさらに拡大していきます。
—— 海外事業についてはどのような展望をお持ちでしょうか?
増田 海外では、自社拠点が徐々に形になり始めています。これは、今後の大きなエンジンとなると考えております。日本の急速な人口減少を受け、企業における海外戦略の重要性が高まっており、それらの企業を支援することは、これからの当社の成長を支える柱となると考えています。
—— M&Aについて、日本の経営者にどのような影響を与えるとお考えですか?
増田 M&Aは、日本の経営者にとって漫然とした経営が許されなくなる状況を作り出しています。経営戦略と密接に結びつくようになってきており、企業の買収や合併は手段であり、そこから、いかに企業の成長を促進させるかが経営者に求められます。当社は、経営に関するあらゆる課題を深く理解し、その企業が持つ潜在能力を最大限に引き出すことを支援します。
ZUU onlineユーザーへ一言
—— 御社の今後の注目ポイントについてお聞かせいただけますでしょうか。
増田 当社では、メンバーの成長を主軸にした組織作りを重視しています。これは、急激な成長を求めるのではなく、メンバー一人ひとりの成長が結果的に組織全体の成長に繋がると考えているからです。
また、当社はお客様を中心に据えた提案を行うことを大切にしています。お客様のニーズを深く理解し、それに応える形でメンバーが成長する機会を設けています。これらが社員の定着率を引き上げ、お客様の信頼を得て、良好な関係を築き、今後の会社の成長に寄与していくと考えています。
—— 素敵な話をありがとうございました。今後の御社の活躍に期待しております。
- 氏名
- 増田 慶作(ますだ けいさく)
- 社名
- 山田コンサルティンググループ株式会社
- 役職
- 代表取締役社長