この記事は2024年12月13日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「急伸するブロッコリーの作付面積と出荷量」を一部編集し、転載したものです。


急伸するブロッコリーの作付面積と出荷量
(画像=kimly/stock.adobe.com)

(農林水産省「野菜生産出荷統計」)

「指定野菜」は国民の食生活で重要性が高く、価格が下落した際に生産者に手厚い補助金が交付される野菜である。現時点でキャベツやダイコンなど14品目が該当するが、2026年から新たにブロッコリーが指定野菜となる。指定野菜の追加は、1974年のバレイショ以来52年ぶりだ。本稿では、こうした背景から近年注目を集めるブロッコリーの生産等の概要を紹介する。

農林水産省『野菜生産出荷統計』のデータをもとに、指定野菜である葉茎菜類(葉や茎を食べる野菜)の5品目(ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、レタス、ネギ)とブロッコリーについて、作付面積と出荷量の時系列推移を見ていく(図表)。まず作付面積について、ブロッコリーは89年に8,150ヘクタールと他の5品目よりもはるかに小さかったが、2000年ごろから拡大し、22年には1万7,200ヘクタールに達した。この水準はハクサイを上回り、ホウレンソウ、レタス、ネギにも肉薄する。この期間に作付面積が増えたブロッコリーは、漸減傾向にあった他の5品目とは明らかに対照的な動きを示している。

次に出荷量を見ると、ブロッコリーは1989年から2022年にかけて出荷量が2倍超に増加している。他品目はこの間に、レタスが微増、キャベツとネギが微減、ハクサイとホウレンソウが大幅減となっている。葉茎菜類の中で、ブロッコリーの出荷量の伸びは突出している。

ブロッコリーの生産が拡大してきた背景には、食生活や産地の変化がある。栄養価が高く彩りが鮮やかなブロッコリーは、サラダや肉・魚料理の付け合わせ、ピザのトッピング、シチューや炒め物といった加熱料理の具材など、幅広い用途で使用されるようになった。

また、食の簡便化の高まりから冷凍ブロッコリーの需要も拡大している。カットやボイルの手間が省ける冷凍ブロッコリーは調理の簡便化ニーズに合致しており、コロナ禍での家庭内調理機会の増加も相まって定番化しつつある。

産地へ目を向けると、生産者の高齢化によりハクサイ等の重量野菜からブロッコリー等の軽量野菜へのシフトが見られる。水田で転作する際にブロッコリーを選択する産地も東北地方や北陸地方などで増えつつある。

こうした変化により、全国各地でブロッコリーの作付けが拡大し、国産ブロッコリーの年間を通じた供給体制が構築されてきた。その結果、スーパーマーケットの店頭でよく見かけた米国産の生鮮ブロッコリーは、現在ほぼ姿を消している。一方で、中国産やエクアドル産の冷凍ブロッコリーは増えている。今後、冷凍品をいかに国産で代替していくのかが問われる。

急伸するブロッコリーの作付面積と出荷量
(画像=きんざいOnline)

農林中金総合研究所 主事研究員/一瀬 裕一郎
週刊金融財政事情 2024年12月17日号