この記事は2024年12月13日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「OPECプラス減産期限延長も需給緩和で25年原油価格は下落か」を一部編集し、転載したものです。


OPECプラス減産期限延長も需給緩和で25年原油価格は下落か
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石油輸出国機構(OPEC)とロシア等の非OPEC主要産油国で構成されるOPECプラスは12月5日に閣僚級会合を開いた。全加盟国による協調減産と有志国が実施している自主減産の期限延長のほか、減産縮小開始時期の延期を決定した。

現在OPECプラスは、①全加盟国が実施する日量200万バレルの協調減産、②有志国による日量166万バレルの自主減産、③有志国による日量220万バレルの自主減産──の三つの枠組みで、合わせて586万バレルの減産を実施している。今回の閣僚級会合では、①と②の期限を2025年末から26年末まで延期することを決めた。また、③については、25年1月から12カ月間での段階的縮小が予定されていたが、縮小開始時期を25年4月とし、縮小期間を18カ月へ延長することにした。

今回の決定を受け、原油の減産規模は、日量約1億バレルの世界原油需要の6%程度(586万バレル)から段階的に縮小され、26年末時点では3.7%程度(366万バレル)となる。現時点の減産体制を維持する決定に至ったのは、中国の景気減速を主因とする世界需要の減少(需要要因)に加え、米国等の非OPEC諸国の生産量増加(供給要因)によって需給が緩和すると見込まれるためだ。

米国エネルギー情報局(EIA)の24年11月時点の世界需要見通しを見ると、24年は前年比日量99万バレル増、25年は同122万バレル増と、23年の同210万バレル増から縮小する見通しだ。一方で供給側を見ると、24年はOPECプラスの減産の影響もあり、生産量の伸びは60万バレルにとどまった。そのため、足元では需要超過だが、25年は非OPEC諸国の増産で、生産量は前年よりも日量204万バレル増えて供給超過となり、価格下落圧力が強まることが見込まれる(図表)。

もっとも、WTI原油先物価格は12月11日時点で1バレル69ドル近辺と、24年4月に付けた86.9ドルから2割以上低い水準で推移している。つまり、減産期限の延長を受けても価格の推移に大きな変化は見られていない。このことは、非OPEC諸国の生産量が増加して産油国としての存在感が増すなか、OPECプラスの減産による価格下支えには限界があることを示唆している。

25年の原油価格は、これまでの減産による在庫水準の低下や自主減産の縮小開始時期の延期で需給が逼迫することから、春ごろまでは1バレル70ドル台前半へ上昇すると予想する。しかしその後は、非OPEC諸国の生産量増加に伴って需給は緩和し、価格は60ドル台に向けて下落するとみる。さらに、米国のドナルド・トランプ次期政権の政策により増産が促進されれば、価格下落がいっそう加速する可能性もある。

OPECプラス減産期限延長も需給緩和で25年原油価格は下落か
(画像=きんざいOnline)

伊藤忠総研 上席主任研究員/藤本 啓
週刊金融財政事情 2024年12月17日号