かつてはGDPベースで、米国に次ぐ世界第2位の規模を誇った日本経済。しかし、現在は少子高齢化が進む一方、再度の経済成長に向けて舵を切れないでいる。2010年には世界2位の座を中国に明け渡し、3位に転落した。そして2023年、今度はドイツに抜かれて世界4位となったうえ、さらにインドにも今後数年の間に追い抜かれる可能性が浮上している。このままでは、日本円の価値は下がる一方だろう。
本記事では、そのような状況のなかで私たちの大切な資産を守るために、果たしてどう動くべきなのかを探っていく。
今後数年で日本のGDPはインドに抜かれる可能性

第2次世界大戦後、日本経済は驚異的な復興を遂げ、1960年代末にはGDPベースで米国に次ぐ世界第2位に浮上した。その後も高度成長は続き、1980年代半ばから後半のバブル期を経て、世界2位の座を確固たるものにしたのである。
ところが、周知のようにバブル経済は崩壊。日本経済は“失われた30年”と呼ばれる停滞期への突入を余儀なくされた。日本経済の停滞が続くなか、世界ではBRICs (ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ) と呼ばれる経済新興国が台頭する。なかでも中国の経済成長は目覚ましく、2010年には「世界2位」の座を中国に明け渡すこととなった。
また、2023年には円安などの影響もあり、日本のGDPはドイツに抜かれて4位に転落した。さらに2024年初頭、インド財務省が「改革の進展によって、今後3年でGDPを5兆米ドルに乗せ、日本を抜いて世界3位になる」とのレポートを発表。今後数年で日本は5位に順位を下げる可能性がある。
2024年3月、日本銀行はゼロ金利を解除し、17年ぶりとなる利上げを行った。同年7月にも追加の利上げを実施し、日本にもようやく「金利のある世界」が戻ってきた。また、2024年の春季労使交渉 (春闘) では、賃上げ率で前年比プラス5.10%、ベースアップ (ベア) で同3.56%と、それぞれ33年ぶりの高い賃上げを記録。少しずつではあるものの、“失われた30年”を取り戻す動きが出てきている。
ただ、日本経済は「人口減少」と、それに伴う「少子高齢化」という深刻な問題を抱えている。日本の人口は2008年の約1億2,808万人をピークにじりじりと減少しており、2011年以降、本格的な「人口減少社会」に突入した。2015年には75歳以上の人口が、0~14歳の人口を上回るようになり、少子高齢化が加速。経済の先行きを楽観視できる状況では到底ないだろう。
内閣府が公表した2024 (令和6) 年版の「高齢社会白書」によると、日本の人口は今後も減り続け、2056年に1億人の大台を割り込み、2070年には8,700万人まで減少するという。同様に、総人口に占める65歳以上の割合 (高齢化率) も、1985年の10.3%から、2030年には30.8%、2050年には37.1%まで上昇することが試算されている。日本は、「超高齢化社会」に向けてまっしぐらというわけだ。
「2050年のGDPランキング」はどう変わる ?
日本政府も、ただ指をくわえて見ているだけではなく少子高齢化の解決を最優先課題の一つとして、さまざまな政策を打ち出している。またその一方で、長年の課題とされている労働生産性 (労働者一人あたりの付加価値額) の改善に向け、デジタル化の推進や人材育成、イノベーション (技術革新) の創出などに注力してきた。
しかし現状は、厳しいと言わざるを得ない。世界4大会計事務所の一つであるPwC (プライスウォーターハウスクーパース) が公表しているレポート「長期的な経済展望」によると、購買力平価 (※) ベースのGDPで日本は、2030年時点で中国、米国、インドに次ぐ世界4位となっているが、2050年には8位まで順位を下げることが予測されている。
参照:PwC「長期的な経済展望 図2:予測GDPランキング (PPPs) 」
同レポートでは、米国や英国、フランスなど日本以外の先進国が軒並み順位を下げる一方、ベトナムやインド、メキシコといった経済新興国が順位を上げている。2050年という長期的な予測であり、この先情勢が大きく変わる可能性はあるだろう。しかし日本経済の現状を踏まえると、日本の順位がじりじりと下がっていく見通しに変わりはなさそうだ。
※モノやサービスの価格を基準にした為替レートの水準、よく「世界各国のマクドナルドのビックマック価格」が例として用いられる
分散投資における「通貨の分散」は必須
ここまでの話を、資産運用の観点で考えてみよう。今後、世界のパワーバランスは移ろっていくことが予想されるが、世界経済から見た日本経済の立ち位置が下がっていく可能性は決して低くない。そう考えると、やはり「日本円」だけで資産を持つことは、資産価値も徐々に減っていくリスクがあると見るべきだ。
その点では、分散投資における「通貨の分散」、要は米ドルや中国元、メキシコペソといった、日本円以外の通貨で資産を保有することは、大げさではなく大切だろう。それも20~30年といった超長期の話ではない。今後数年、あるいは10年程度先に訪れる「世界経済の変化」が、為替相場にも影響してくるかもしれない。
日本経済は、人口減少や少子高齢化といった難題を抱える。日本政府の政策の効果を“座して待つ”だけでは、資産は減り続けてしまうかもしれない。自分で資産を守るには、現在の世界の基軸通貨である米ドルはもちろん、それ以外の通貨にも資産の一部を分散しておくことが求められる。外貨積立などを活用し、長期的な視点で「通貨の分散」を検討することが賢明だろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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