本記事は、桑原晃弥氏の著書『ドナルド・トランプの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=DK_2020 / stock.adobe.com)

重要なのは仕事にどれだけの時間をかけたかではなく、
その間に何を成し遂げたかであることを学んだ

―― 「トランプ自伝」

人を評価する時、つい目が行くのが「何時間働いているか」であり、「汗の量」です。朝は早くから会社に来て、夜も遅くまで残業をして、土日の出社もいとわずに働き続ける人がいます。そういう人を見て、「あいつ、がんばっているなあ」と感心する人がいるのは事実です。あるいは、現場などで大粒の汗を流しながら走り回っている人間を見ると、やはり「がんばっているなあ」と褒める人がいます。たしかに「時間」と「汗」は人のがんばりを証明しているように見えますが、それは本当なのでしょうか。

トランプは若い頃、団地スウィフトン・ヴィレッジの管理人を何人も代えたのち、ようやく「有能な男」を見つけています。その管理人は100%信頼できる人間ではなかったものの、管理人としては一流でした。働く時間は多くはありませんでしたが、他の管理人が12時間かかる仕事を1時間くらいでやってしまう能力があったのです。この管理人の仕事ぶりを見てトランプはこんなことを学んだといいます。

「重要なのは仕事にどれだけ時間をかけたかではなく、その間に何を成し遂げたかであることを学んだ」

「時間」や「汗」よりも「成果」を評価するトランプがこんな話を披露していました。ある広告代理店で働くライターは他の社員と違ってせっせと働くそぶりも見せず、席に座ったまま何もしようとはしませんでした。怒った他の社員が経営者に文句を言うと、経営者は「彼の邪魔をしないように」(「金のつくり方」)と言うのみでした。理由は働くそぶりを見せなかったライターが時折思いつくアイデアは何百万ドルもの収益を会社に何度ももたらしたことがあったからです。見るべきは「働きぶり」ではなく、「何を成し遂げたか」です。トランプは言います。

「私は取引そのものに魅力を感じる。けれども最終的には、どれだけの取引をしたかではなく、どれだけ達成したかで人は評価される」(「トランプ自伝」)

スポーツの世界に「努力には正しい努力と間違った努力がある」という言い方があります。間違った努力というのはどれだけ時間をかけてやったとしても成果に結びつかないのに対し、正しい努力をしっかりとすれば成果に結びつきます。「努力は報われる」は「正しい努力」をして初めて言える言葉です。勤勉であることは好ましいことですが、成果を上げるためには効率良く、ムダのない努力をすることが必要なのです。人が評価されるのは「長時間働いた」ことではなく「何を成し遂げたか」なのです。

ワンポイント
がんばればいいというものではない。成果につながるがんばりだけが評価される。

行動を起こす前に、100%機が熟すのを待ってはいけない

―― 「大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ」

「できない言い訳は100ほどもある」という言い方があります。人間というのは失敗を恐れ、新しいことへの挑戦をためらう傾向があります。そのため、何か新しいことをやれと言われて、そこに100%の成功確率がなければ、何やかやと言い訳を考えて「やらない」方向に持って行こうとするものです。

その場合の言い訳はいくらでも考えることができます。たとえば、自分には賢明さが足りないとか、自分には経験が足りないとか、自分はまだ若すぎる、自分はもう若くないから、自分は女だから、自分にはお金がないから、などとさまざまな言い訳を用意して、何とかやらない方向に持って行こうとするものですが、こうした言い訳についてトランプはこう言いきっています。

「中身のない言い訳は、捨ててしまうのが一番だ。言い訳は恐怖のあらわれである。しかし、最も恐怖を感じる行為をあえてやってしまえば、あなたの中から恐怖は消え去る」(「でっかく考えて」)

トランプによると、ものごとを始める前にあまりに時間をかけすぎるのはよくないといいます。時間をかけすぎることは「形を変えた引き延ばしの言い訳」であり、それよりも「考えるのをやめ、行動に移る」(「でっかく考えて」)ことが大切だというのです。

トランプは素晴らしいアイデアを持ちながら実行できなかった人を何人も知っています。どんな素晴らしいアイデアもひとりでに実現するわけではなく、「実行に移す」ことで初めて価値を持つのです。

こう言うと、「条件が整わないのにスタートするのは乱暴だ」という声が聞こえそうですが、社会の中で数々の問題と格闘してきたトランプはこう考えることも大切だと話しています。

「行動を起こす前に、100%機が熟すのを待ってはいけない。あなたは現実主義者になる必要がある。現実世界に完璧など存在しない」

何かを始める前に「お金、人、時間、技術、タイミング」などと完璧を求めすぎると、たいていの場合、誰かに先を越されてせっかくのチャンスを逸するか、スタートできないままに終わってしまいます。一度でも「できない言い訳」を探し始めると、できない理由ばかりが浮かんでくるものです。それよりもまず「やる」「できる」と決めてしまうことです。そうすれば、次に考えるのは「どうやるか」だけであり、行動を起こすことができるようになるのです。

ワンポイント
「できない言い訳」を探すのではなく「どうすればできるか」を考え実行しよう。

金持ちになる唯一の方法は、
現実に目を向け、下品なほど正直になることなのだ

―― 「大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ」

トランプはまぎれもなく成功した実業家ですが、成功をもたらすのは「がむしゃらにやる覚悟」と考える伝統的な成功者でもあります。

たしかにテレビや雑誌などを見ていると一夜にして有名になる人がたびたび登場します。たとえば、「ユーチューブ」の画像がきっかけで大きなチャンスを手にする人もいれば、1つの賞を手にすることで日本中にその名を知られる人もいます。時にこうした人たちはかつては「シンデレラ・ボーイ」「シンデレラ・ガール」などと呼ばれることもあったほど、まさに世間からは「一夜にして」だったのです。

しかし、落ち着いて考えれば分かることですが、バレエやバイオリンのコンテストで優勝するような若者は一体、いくつの時から練習に励み、どれほどの努力を重ねてきたのでしょうか。オリンピックでメダルを手にするような選手のほとんどは小学校の頃から一途に競技に打ち込んでいます。今や「世界一の野球選手」となった大谷翔平は小学校2年生で本格的に野球を始めていますが、プロになってからは「1日のほとんどは寝ることと野球をすること」と言われるほど野球漬けの日々を送っています。

インターネットの世界で成功した若者も1つのアイデアを花開かせるために週に80時間、90時間、それも何年も働き続けています。宝くじが当たるならともかく、大きな成功の陰にはほとんどの場合、圧倒的な努力の日々があるのです。トランプは言います。

「成功への道が一本道で、頂上までまっすぐ伸びていると思っている人は、まったく現実を分かっていない。一夜にして成功した人などまったくと言っていいほどいない」(「金のつくり方」)

さらに「多くの人は成功者を見る時、最終結果ばかりに目を奪われ、あらゆる努力は見逃される」とも言っています。

成功というものは、長期にわたる奮闘や努力の末に勝ち取るものであり、たとえそこまでやったとしても絶対に成功する保証はない、というのが現実です。そんな現実を知るトランプはこう言いきっています。

「金持ちになる唯一の方法は、現実に目を向け、下品なほど正直になることだ。雑誌で読んだりテレビで観たりした非現実的な幻想は捨て去った方がいい」

投資でも短期間でスターになった人には気をつけた方がいいと言うほど、トランプは長期にわたる奮闘努力の力を信じています。

ワンポイント
成功者を見る時は結果よりも、その過程に目を向ける。
『ドナルド・トランプの名言』より引用
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『トランプ108の言葉─読むだけで人生に革命が起きる』(すばる舎)、『ドナルド・トランプ勝利への名語録─世界を揺るがす90の言葉』(PHP文庫)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言 勝利を必ずつかむ思考法』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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『ドナルド・トランプの名言』
  1. やってみればいいではないか。失うものが何かあるのか――ドナルド・トランプの名言
  2. 行動を起こす前に、100%機が熟すのを待ってはいけない――ドナルド・トランプの名言
  3. お金を稼ぐことを第一の目標にしてはならない。お金は自分の成功のご褒美――ドナルド・トランプの名言
  4. 私は飛ぶ鳥を落とす勢いの起業家風の服装をした――ドナルド・トランプの名言
  5. 失敗を終焉とみなしてはいけない――ドナルド・トランプの名言
  6. 相手がどう接するかが、そのまま私の相手に対する接し方になることもある――ドナルド・トランプの名言
  7. 声に出して『なんてすてきな1日だろう』と言ってみよう――ドナルド・トランプの名言
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