本記事は、桑原晃弥氏の著書『ドナルド・トランプの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=vetkit / stock.adobe.com)

お金の無駄は私にとって腹立たしく馬鹿げたことだ。
だから私は大金を儲けることができる

―― 「タフな米国を取り戻せ」

2024年11月のアメリカ大統領選挙で当選、大統領への復帰を果たすことになったドナルド・トランプが掲げる政策の目玉の1つが「政府効率化省」です。そのリーダーの1人にトランプはイーロン・マスクを起用、マスクは規制緩和やムダの排除によって年間6兆5,000億ドルの政府支出全体から2兆ドルの削減を目指すことになります。

アメリカの抱える巨額負債はかねてより課題となっており、第1期トランプ政権でも取り組んだものの、望むような成果を上げることはできなかっただけに、今回はマスクというアメリカを代表する起業家で、高い発信力を誇る人間をトップに据えることで何とか歳出削減を実現させたいのでしょう。

不動産会社の経営者時代からトランプは政府や州政府を「我々が稼いだ金を国家のものと考えているに違いない」と批判してきました。1986年、トランプはニューヨークのセントラルパークにあるウォルマン・スケートリンクを改修しています。トランプ・タワーのトランプの部屋からそのリンクはよく見えるわけですが、トランプによるとニューヨーク市のへまのお陰で7年間も閉鎖されていました。ニューヨーク市は7年間と2100万ドルを費やしたにもかかわらず、リンクをオープンすることができずにいました。お役所仕事や税金の浪費に我慢できなくなったトランプはプロジェクトを引き継ぎ、予算がオーバーしたら自分が差額を負担すると言って請け負います。トランプは豪華なタワーマンションやカジノの建設にはけていてもスケートリンクなどつくったことはありませんでしたが、アメリカ最高のスケートリンク施行者を見つけ、いつものように細部にまでこだわり、自ら徹底的に管理監督することで、6カ月の予定を4カ月で、費用も180万ドルで完成させたのです。

結果、ウォルマン・スケートリンクには、たくさんの子どもたちや家族連れ、旅行者たちに素晴らしい体験を提供できるようになります。トランプは言います。

「こうしたことは浪費ではなく節約から生まれるのだ」日本でもそうですが行政のつくる箱モノは長い時間と費用をかける割には「負の遺産」となることが少なくありません。大切なのは大金をかけることではなく、プロジェクトの予算を節約し、効率重視でつくることというのがトランプのやり方です。「お金の無駄は私にとって腹立たしく馬鹿げたことだ。だから私は大金を儲けることができる」がトランプの流儀であり、このやり方をビジネスだけでなく政府にも適用しようとしているのです。

ワンポイント
お金の浪費からは何も生まれない。節約と効率から良いものが生まれ、金持ちになれる。

お金を稼ぐことを第一の目標にしてはならない。
お金は自分の成功のご褒美の1つと考えよう

―― 「トランプ 最強の人生戦略」

「お金が目当てで会社を始めて、成功させた人は見たことがない」はアップルの創業者スティーブ・ジョブズの言葉です。人が起業する目的はいくつもあります。その中には「大金持ちになりたい」という目的も当然含まれていますし、ジョブズだって、ビル・ゲイツだって若い頃は「大金持ちになりたい」と明言しています。

しかし、ビジネスを始め、その目標が現実のものになるにつれ、お金以外のもの、たとえば「世界を変える」といったより大きなものに目が向き始め、そこから一気に成長が加速しています。

トランプも同様です。不動産ビジネスの成功によって大富豪への道を歩み始めたわけですが、一方でお金よりも取引そのものに魅力を感じ、芸術とも呼べる素晴らしい建物を建てることに満足を覚えてもいます。

「人の役に立つ仕事を、情熱を注ぎ込む対象にできれば、金は後からついてくる」(「でっかく考えて」)とも話しています。

そして時には「お金が儲かる」のではなく、「お金を払う」ことでやると決めた仕事さえあります。代表的なものが別項でも触れたウォルマン・スケートリンクの改修工事です。この工事を請け負うことでトランプが得る金銭的なメリットは何もありませんでした。むしろ損失が出る可能性さえあったわけですが、トランプは「儲けることではなく、サービスを提供する」(「でっかく考えて」)という動機から工事を申し出ています。

こうしたケースはしばしばあるようで、トランプは「もしも金が唯一の目的なら、私は大切な仕事をいくつか逃していたはずだ」(「でっかく考えて」)と話しています。トランプによると、自分が取引に入るのは対象や内容が気に入っている時だけで、「お金だけのための取引はしない」という考え方をしています。

たしかに人が生きていく上でお金は欠かせないものであり、トランプ自身、お金のお陰で素晴らしい人生を送ることができたと認めていますが、お金以外にも重要なものはたくさんあり、たとえば ①仕事や挑戦から得られる刺激や満足感、②人の役に立つ、善いことをする喜び、③仕事を通して成長できる、④優れた人との出会いや交際 ―― などいくつもの良きことがあります。

お金は大切なものですが、かといって「お金を稼ぐことを第一の目標にしてはならない」というのがトランプの考え方です。自分が夢中になれる、素晴らしい仕事をした結果として得られるのがお金であり、それは「成功のご褒美の1つ」なのです。

ワンポイント
まずは自分が満足し納得できる仕事をしよう。お金は目標ではなく成功のご褒美。
『ドナルド・トランプの名言』より引用
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『トランプ108の言葉─読むだけで人生に革命が起きる』(すばる舎)、『ドナルド・トランプ勝利への名語録─世界を揺るがす90の言葉』(PHP文庫)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言 勝利を必ずつかむ思考法』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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『ドナルド・トランプの名言』
  1. やってみればいいではないか。失うものが何かあるのか――ドナルド・トランプの名言
  2. 行動を起こす前に、100%機が熟すのを待ってはいけない――ドナルド・トランプの名言
  3. お金を稼ぐことを第一の目標にしてはならない。お金は自分の成功のご褒美――ドナルド・トランプの名言
  4. 私は飛ぶ鳥を落とす勢いの起業家風の服装をした――ドナルド・トランプの名言
  5. 失敗を終焉とみなしてはいけない――ドナルド・トランプの名言
  6. 相手がどう接するかが、そのまま私の相手に対する接し方になることもある――ドナルド・トランプの名言
  7. 声に出して『なんてすてきな1日だろう』と言ってみよう――ドナルド・トランプの名言
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