本記事は、桑原晃弥氏の著書『ドナルド・トランプの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

私は飛ぶ鳥を落とす勢いの起業家風の服装をした
―― 「大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ」
成功したければ、成功した企業のように振る舞わなければならないというのがアメリカ流の考え方です。1940年代、まだ大企業とは言えなかったIBMがニューヨークの5番街に贅沢なショールームを開設した際、創業者のトーマス・ワトソンは「われわれは企業の規模とか評判よりもはるかに大きく企業イメージを膨らませようとしているのだ」と、その理由を述べています。
若き日のスティーブ・ジョブズはヒッピー同然の格好をしていましたが、年長のマイク・マークラにこの話を聞かされ、イベントにはスーツを着た若きエリートの姿で臨んでいます。ドナルド・トランプも同様に考えていました。
27歳のトランプはニューヨークの中心街と言えるマンハッタンへの進出を試みますが、当時はクイーンズやブルックリンで成功した不動産業者ではあっても、トランプも父親もマンハッタンでは何の実績も持っていませんでした。トランプ自身、小さなオフィスを構える若く実績のない若者に過ぎませんでしたが、交渉を有利に進めるためには「有力な大企業」であると相手に信じさせることが必要だと考えていました。
トランプは会社の名前を「大企業のような響きがある」トランプ・オーガナイゼーションと命名、わずかな寄付をしただけの政治家との付き合いも宣伝することで、あたかも大きな組織を背負っているかのような行動を心がけます。
服装も重要でした。黒のピンストライプのスーツに白のワイシャツ、頭文字を刺繍したネクタイといういでたちで相手のオフィスに乗り込むことで、若さゆえの「君にできるのか?」という疑念に、「自分に不可能なことなどない」と思わせることに成功しました。当時のことをこう話しています。
「私は飛ぶ鳥を落とす勢いの起業家風の服装をした」
トランプによると、「服装は、人がものを言う前からその人間を
日本でも「人は見た目が9割」という言い方をされるくらい服装や髪形、立ち居振る舞いは重要な要素となります。もちろん何を着るかはその人の自由なのですが、服装で相手に悪印象を与え、「こいつに任せて大丈夫か?」という疑問を一瞬たりとも持たせてはダメだというのがトランプの考え方です。
- ワンポイント
- 成功したければ、最初から成功者のように振る舞う。
宣伝に値することをした時には遠慮せずに自己宣伝をしよう
―― 「明日の成功者たちへ」
トランプはアメリカにおいては大統領になる前から超のつく有名人でした。不動産ビジネスにおいてはホテルやカジノ、ゴルフコースなど世界有数のものを次々とつくり上げることで「若き不動産王」と呼ばれ、テレビ番組の『アプレンティス』は14シーズンに
もっとも、当たり前のことですがトランプも最初から「有名人」であったわけではありません。クイーンズやブルックリンではそれなりに成功していたものの、ニューヨークのど真ん中のマンハッタンに進出したばかりの頃は大物不動産業者から「トランプはいろいろでかいことを言っているようだが、実績はあるのか?」(「トランプ自伝」)と
その後、トランプ・タワーの成功などを経てトランプの名前はまたたく間に知られるようになっていくわけですが、それを可能にしたのはトランプに巧みな宣伝力があったからです。トランプは言います。
「さりげなさや奥ゆかしさは修道女やセラピストには合っているが、事業に携わっている人は、声を大にして、その意義ある成果を世に知らしめることを覚えなければならない。それをする人は自分以外にない」(「金のつくり方」)
世の中には偉大なことを成し遂げたにもかかわらず、決して自分からは言おうとしない控えめな人ももちろんいます。しかし、それはあまりにもったいないし、せっかくのチャンスを逃すことになるというのがトランプの考え方でした。
たとえば、名前の通っていないデベロッパーはプロジェクトの立ち上げに何か月、あるいは何年もかかるのに対し、トランプの場合は「すぐに」立ち上げることができるといいます。名前にはチャンスの扉を開ける力があります。だからこそ、人は「有名人」になるまでは、自分が何者で何をしてきたかをたくさんの人に話した方がいいのです。トランプは言います。
「あなたが自分について良いことを言わなかったら、誰が言ってくれるだろう。だから、宣伝に値することをした時には遠慮せずに自己宣伝しよう」トランプは「名前の持つ力」をよく知り、フルに活用していました。
- ワンポイント
- 自分がやったことに自信を持って、堂々と自分で自分を宣伝しよう。
宣伝の最後の仕上げははったりである
―― 「トランプ自伝」
トランプの得意技の1つは宣伝の巧みさにあります。
みんなを「あっ」と言わせるほどの建物を建て、みんなの度肝を抜くかと思えば、自らが「広告塔」となって良い評判も悪い評判も立てられることで「トランプ・ブランド」の価値を高めるのにたけています。
たしかにトランプ・タワーはマンハッタンを代表することになる素晴らしい建物でしたが、その宣伝に際してトランプはすべて真っ正直に宣伝したわけではありません。トランプ・タワーの最終的な設計は黒っぽいミラー・ガラス張りの58階建てで、28面に見える建物です。誰もが憧れる「壮麗で贅をつくしたマンション」というのがトランプの意図でした。
しかし、こうした設計に対して、トランプ・タワーは5番街の歴史的景観を損なうのではないかという反対意見も上がっていました。「建物は石造りにすべき」といった運動をする市会議員もいたほどです。
結果、当初予定していた68階建ては58階建てに落ち着いたものの、トランプは何食わぬ顔で「68階建て」と発表しています。こう主張します。
「誰もわざわざ5番街に立ち止まって、ずっとてっぺんまで何階あるか数えるはずがない」(「トランプ」)
はたしてどこまで本当の話かは分かりませんが、トランプにはたしかに宣伝に対する1つの考え方がありました。こう言っています。
「宣伝の最後の仕上げははったりである。人々の夢をかきたてるのだ」
トランプによるとこれは「真実の誇張」であり、「罪のないホラ」と言い張っています。トランプはアトランティック・シティでのカジノ付きホテルの建設に際しても、パートナーになる予定のホリデイ・インの役員を相手に「はったり」をかましています。
役員たちが建設現場を視察に訪れた時、実は工事はほとんど進んでいませんでしたが、トランプは現場監督に手に入るだけのブルドーザーとトラックをかき集めて「世界一活発な建築現場にしてほしい」(「トランプ自伝」)と指示をしています。
実際、当日の現場は壮観でした。動きのほとんどは建設と関係のない意味のないものでしたが、「ここは最高の敷地」と確信したホリデイ・イン側はトランプと正式に提携契約を結ぶことになったのです。「はったり」がトランプを大きく見せ、トランプに大きな利益をもたらすことになったのです。
- ワンポイント
- 自分を大きく見せるためには、時にはったりや演出も欠かせない。

著書に『トランプ108の言葉─読むだけで人生に革命が起きる』(すばる舎)、『ドナルド・トランプ勝利への名語録─世界を揺るがす90の言葉』(PHP文庫)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言 勝利を必ずつかむ思考法』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
- やってみればいいではないか。失うものが何かあるのか――ドナルド・トランプの名言
- 行動を起こす前に、100%機が熟すのを待ってはいけない――ドナルド・トランプの名言
- お金を稼ぐことを第一の目標にしてはならない。お金は自分の成功のご褒美――ドナルド・トランプの名言
- 私は飛ぶ鳥を落とす勢いの起業家風の服装をした――ドナルド・トランプの名言
- 失敗を終焉とみなしてはいけない――ドナルド・トランプの名言
- 相手がどう接するかが、そのまま私の相手に対する接し方になることもある――ドナルド・トランプの名言
- 声に出して『なんてすてきな1日だろう』と言ってみよう――ドナルド・トランプの名言