本記事は、桑原晃弥氏の著書『ドナルド・トランプの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=Dzmitry / stock.adobe.com)

どれほど打ちのめされたと思っても、チャンスはまだある。
だが、待っていてもチャンスはやってこない。さあ仕事だ

―― 「金のつくり方は億万長者に聞け!」

トランプはこれまでいくつもの難局を切り抜けてきていますが、なかでも1990年代には地価の暴落などもあり、100億ドル近い借金を抱えて破産の危機に瀕しています。トランプによると、この時期、同業者の多くは破産の憂き目にあって業界を去っていますが、トランプ1人は夜もぐっすり眠れたし、何とか支払い能力を保つことができたといいます。なぜそんなことが可能だったのでしょうか。

当時、トランプは多額の借金は抱えていましたが、それは「銀行の問題であり、自分の問題ではない」(「でっかく考えて」)という屁理屈をこね、自分は「好きなことに集中する」(「でっかく考えて」)ことにしたのです。

トランプは銀行に対して「もし争いを望むなら、私の得意な裁判訴訟やその他の法的な手段を使って、皆さんを何年間でもその問題に釘付けにすることができます」(「敗者復活」)と脅しをかけます。

トランプにとっては大きな賭けでしたが、金融機関は厄介な問題に時間とお金をかけるよりも、トランプの提案を飲む方が簡単だと考え、両者の意見は一致することになったのです。

金融機関とはこうした交渉を行う一方で、本業の不動産開発の仕事には全力で取り組みます。

社員に対して将来のプロジェクトの青写真を説明し、どれほど素晴らしいビルになるかを描いてみせました。社員の中には追い詰められてトランプの頭がおかしくなったのではと不安を覚えた者もいるといいますが、希望を持てる新しいプロジェクトへの集中が良い結果につながります。

トランプによると、少しずつ流れは上向き始め、多額の借金自体は背負っていたものの肝心のプロジェクトも進むようになり、やがて会社は以前より繁栄するようになったといいます。トランプは言います。

「どれほど打ちのめされたと思っても、チャンスはまだある。だが、待っていてもチャンスはやってこない。さあ仕事だ」

苦境にあって、打ちひしがれ、膝を抱えて「チャンスさえあれば」と願ったところでチャンスがやってくることはありません。それよりも自分が得意とする仕事に目を向けます。それだけで難題が消えるわけではありませんが、明るい未来に向かって歩き出すことでチャンスは間違いなくつかみやすくなるのです。

ワンポイント
ただ待っているだけではチャンスはやってこない。自ら動いてつかみとる。

失敗を終焉とみなしてはいけない

―― 「大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ」

失敗は誰にでもあるものです。失敗は辛いし苦いものですが、失敗にとらわれ過ぎると前に進めなくなり、成功のチャンスを逃すことになるというのも事実です。ホンダの創業者・本田宗一郎は「失敗したからといって、くよくよしている暇はない。間髪を入れず、原因究明の反省をして、次の瞬間にはもう一歩踏み出さなければならないのである」と話していましたが、それができたからこそ町工場に過ぎなかったホンダを世界企業に育てることができたとも言えます。

別項でも触れたように1990年代、トランプは不動産不況の荒波をまともにかぶって90億ドルを超える負債を抱えることになりました。同業者たちは次々と破産に追い込まれ、不動産業界を去っていきます。さすがのトランプもプレッシャーに負け、現実から逃げたくなったこともありましたが、多額の負債と向き合うのも「これは仕事なのだ」と自分に言い聞かせ、厳しい目を向ける銀行家たちと付き合い続けた結果、事態は少しずつ好転し、数年後にはかつての絶頂期を上回るほどの成果を上げることができるようになったのです。トランプは言います。

「失敗を終焉とみなしてはいけない。失敗したら、素早く教訓を学び、再び前進する必要がある。失敗をくよくよ考えてはいけない」

失敗から教訓を学ぶことは大切なことです。前向きな自己批判も必要なことです。しかし、やってはいけないのは「過度な自己批判」です。自己批判が行き過ぎて、自分を責めすぎると、「俺は絶対に成功できない。俺は負け犬だ。もうあきらめた方がいい」という自己卑下につながり、自らの人生すら否定することになってしまいます。

トランプはそんな同業者をたくさん見てきました。失敗から教訓は学ぶものの、「終焉」とみなすことはありません。失敗や挫折は完全な敗北ではなく、「敗北は心の問題だ」(「でっかく考えて」)というのがトランプの考え方です。

トランプの盟友イーロン・マスクはスペースXのロケット打ち上げでは手痛い失敗を何度も経験していますが、その際、社員に言い続けたのは「問題があったのは事実だが、原因をきちんと究明すれば乗り越えられる。立ち止まる必要はない。前に進もう」という言葉でした。

挑戦には失敗がつきものであり、失敗のない人生から偉大なものが生まれることはありません。失敗は辛いけれども、前に進もうという気持ちさえ持ち続けることができれば、失敗は次なる成功のチャンスでもあるのです。

ワンポイント
失敗したからと歩みを止める必要はない。原因を究明したら前へ進もう。
『ドナルド・トランプの名言』より引用
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『トランプ108の言葉─読むだけで人生に革命が起きる』(すばる舎)、『ドナルド・トランプ勝利への名語録─世界を揺るがす90の言葉』(PHP文庫)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言 勝利を必ずつかむ思考法』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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