新たな企業争奪戦が持ち上がった。センサーメーカーの芝浦電子に対して同意なき買収を提案している台湾電子部品大手のYAGEO(国巨)に対抗する形で、精密部品大手のミネベアミツミがホワイトナイト(白馬の騎士)として名乗りを上げた。
YAGEOを上回る4500円を提示
ミネベアミツミは4月10日、芝浦電子の完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買付価格は1株4500円で、YAGEOの提示を200円上回る。芝浦電子は同日、TOBに賛同を表明した。
ミネベアミツミは23日から買い付けを始め、最大675億円を投じる。TOB成立の条件となる買付予定数の下限は所有割合50.01%にあたる753万9900株に設定した。
芝浦電子をめぐってはYAGEOが2月初め、TOBを通じた買収提案を発表。芝浦電子の賛同を得たうえで5月7日から1株4300円で買い付けを開始すると予告した。YAGEOは抵抗、コンデンサー、コイルなどを主力とする電子部品大手で、台湾証券取引所に上場する。
強行突破、それとも撤退か
YAGEOの買収提案についての意見を留保していた芝浦電子は10日、反対を表明し、株主に応募しないよう要請することを決めた。
これによって今後、注目されるのがYAGEOの出方だ。強行突破か、それとも撤退かの選択を迫られる。
予定通りに5月7日から買い付けをスタートすれば、敵対的買収に発展するばかりか、芝浦電子が支持する友好的買収者のミネベアミツミとの一騎打ちとなる。
YAGEOが強行突破を目指す場合、必須となるのが現在1株4300円とする買付価格の引き上げだ。一般株主の支持を取り付けなければ、勝ち目はない。
株価次第で買付価格の再考も
ただ、10日の芝浦電子株の終値は前日比510円高の4700円。ミネベアミツミによる買収提案が朝方から伝えられたことで上昇幅が拡大した面があるが、翌11日も概ね4700円近辺の値動きに。
仮に、株価がこのまま買付価格を上回る高値圏で推移するのであれば、ホワイトナイトの役回りを演じるミネベアミツミとしてもTOB成立が危ぶまれるだけに、引き上げのタイミングを計ることになりそうだ。
ホワイトナイトは敵対的買収の対象となった企業に救いの手を差し伸べる友好的な第三者を指す。
足元では工作機械大手の牧野フライス製作所へのモーター大手のニデックによる同意なき買収の行方(5月9日にTOB開始)が注目されているが、牧野フライスは複数の第三者から買収の初期的な提案を得ているとし、ホワイトナイトが出現して買収合戦に突入する可能性が高まっている。
昨年の一件で、記憶に新しいのが中堅物流のC&Fロジホールディングスをめぐる争奪戦。佐川急便のSGホールディングスがホワイトナイトとして途中参戦し、TOBを先に始めていたAZ-COMホールディングスを退けた。