センサーメーカーの芝浦電子を巡る争奪戦が新たな局面を迎えた。同意なき買収を提案している台湾の電子部品大手ヤゲオ(YAGEO)がTOB(株式公開買い付け)の価格を従来の1株4300円から5400円に引き上げた。

ホワイトナイト(友好的買収者)として名乗りを上げた精密部品大手のミネベアミツミが提示する4500円を上回り、4月23日にTOB開始を予定するミネベアミツミとして対応が待ったなしの状況だ。

ミネベアミツミ、1株4500円で参戦

ヤゲオが芝浦電子の完全子会社化を目的とする買収提案を発表したのは2月初め。芝浦電子の賛同を得たうえで、5月7日から1株4300円でのTOBを始めると予告した。買付価格はTOB公表前日の終値3140円に約37%のプレミアム(上乗せ)を加えた水準とした。

ヤゲオは抵抗、コンデンサー、コイルなどを主力とする電子部品の製造を手がけ、台湾証券取引所に上場する。芝浦電子はTOB公表について同社からの事前連絡がなかったとしたうえで、開示文書など情報を精査して買収提案への賛成か反対かなどの意見を表明するとしてきた。

事態が大きく動いたのは4月10日。ミネベアミツミがヤゲオに対抗して芝浦電子の買収に名乗りを上げたのだ。買付価格は1株4500円。この時点でヤゲオを200円上回る金額を提示した。最大675億円を投じて、全株式を取得する。

芝浦電子は同日、ミネベアミツミによるTOBに賛同する一方、意見表明を留保してきたヤゲオのTOBに対して反対を表明。ミネベアミツミは4月23日から買い付けを始める予定を示した。

ミネベアミツミが演じるのはホワイトナイトの役回り。敵対的買収の対象となった企業に救いの手を差し伸べる友好的な第三者がホワイトナイトと呼ばれる。

ヤゲオ、価格引き上げで「撤退」を一蹴

こうした中、注目されていたのがヤゲオの出方。同社は4月17日、芝浦電子株の買付価格を1100円引き上げて5400円とすることを発表した。一部で買収戦からの撤退の見方もささやかれていたが、これがなくなったことで敵対的買収者と友好的買収者による一騎打ちが決定的となった。

ヤゲオの買付価格引き上げを受け、先週末18日の芝浦電子株は高騰し、終値は700円高の5470円となった。週明け21日も上伸し、5500円台半ばの取引が続いた。

一転、攻め手から守り手に立場が入れ替わることになったのがミネベアミツミだ。23日にTOB開始を控えるが、市場価格を1000円以上下回る現行の買付価格(4500円)のままでは株主からの応募がとても見込めない。