3月期決算上場企業の定時株主総会がいよいよ本番を迎える。物言う株主(アクティビスト)の存在感が高まるにつれ、ガバナンス(企業統治)や資本政策、取締役の選解任をめぐる会社と株主とのせめぎ合いも増加の一途をたどる。今シーズンの注目企業をピックアップする。
ストラテジック、今年は親会社の日鉄に株主提案
日米両国の政治問題にまで発展した米鉄鋼大手USスチールの買収が計画発表から1年半を経てついに実現することになった日本製鉄。昨年11月の米大統領選を争ったバイデン前大統領とトランプ氏がともに買収に反対する立場をとったことで暗雲が立ち込めたが、トランプ政権と日鉄が歩み寄った。
その日鉄の株主総会は6月24日に都内で開かれる。予定される6議案のうち株主提案は3議案。提案したのは物言う株主を自称してはばからない国内投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)だ。
株主提案は①子会社管理にかかる定款変更、②代表取締役の報酬決定の変更、③代表取締役の業績連動報酬にクローバック(在任中の報酬を返還させる)条項を追加するーからなる。日鉄はいずれの株主提案にも反対している。
また、ストラテジックは日鉄の上場子会社、大阪製鉄が6月25日に開く株主総会にも株主還元や、株主価値・非公開化検討委員会の設立などに関する3議案を株主提案している。大阪製鉄への株主提案は2年連続となるが、今年は親会社の日鉄にも対象を広げた形だ。
クロ―バック条項、USスチール買収を念頭に
ストラテジックは「日鉄は上場子会社の怠慢な経営を放置している」などと指摘。あえて上場子会社(大阪製鉄、日鉄ソリューションズ、黒崎播磨、ジオスター)として維持する理由や、PBR(株価純資産倍率)1倍割れが常態化している上場子会社の経営計画の妥当性などを取締役会で1年に1回以上審議するための定款変更を求めた。
また、③のクローバック条項は巨額買収に伴う多額の減損や重大なコンプライアンス違反などが起きた場合、その役員報酬の一部を没収できるようにするのが目的。念頭に置いたのがUSスチールの買収だ。
日鉄はUSスチールの完全子会社化に約2兆円を投じるほか、買収後に約1兆6000億円の新たな投資を約束した。さらに拒否権を持つ特別な株式「黄金株」を米政府に付与する。
クロ―バック条項は武田薬品工業、ENEOSホールディングスなどでの導入が知られており、賛成多数で可決の可能性もある。