本記事は、澤上 龍氏の著書『長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする
(画像=trecc/stock.adobe.com)

投資リターンの本質と、それを受け取るまでの心構え

「資産をつくるために投資をする」こと自体は間違っていない。しかし資産がなぜできるのか、資産ができても豊かになれるのか、そもそも投資に再現性があるのか……。それらを追求していくと、ひとつの答えに辿り着く。

まずは社会を育むのだ。

投資とは未来の可能性を信じ育む行為だ。決して単に儲けるといった話ではない。それはギャンブルであり投機なのである。自ら努力し成長できるのは人だけ。そんな人の集合体が企業であり、金融商品でいう株式だ。つまり投資は「株式」が唯一であり、それ以外は投機の対象なのである。

オーナーになる自覚を持とう

企業に投資をするということは、その企業の株主、つまりオーナーになるということである。そんな企業がどこを目指し、どういった成長に励んでいるかを理解したうえで投資をしよう。自ら起業して上場を目指すのならともかく、これから投資をはじめる人にとっては企業のほうが先に存在している。そうした企業の理念を知り、発信するメッセージを受け取り、そして企業の育もうとしている未来に共感してその流れに乗せてもらうのだ。決して企業のほうが偉いというわけではない。個人あるいは投資家は企業を選ぶ権利を持っており、同時に選ばない権利も持っている。すなわち、急に現れた投資家が100年企業の積み上げた歴史も知らずに圧力をかけるのはハゲタカだかハイエナのようでかっこ悪い。そうはならずに、共感できる企業、応援したい企業を選ぶだけでいい。

稀代の経営者の手腕を信じ、優秀な社員がグローバルで切磋琢磨する…… そんな企業を所有することが株式投資の本意だ。単に株価変動に一喜一憂するのは投資ではなくギャンブルである。言い方は悪いが、オーナーの能力や人間性の善し悪しにかかわらず誰もが企業のオーナー(所有者)になれる。世界各国の言葉が話せなくても、グローバルマーケットの状況を理解できなくても、それらはすべてオーナーの代わりに企業がやってくれる。しかも24時間365日フル稼働だ。

企業は5~10年後の顧客ニーズを先読みし、新しいモノ・コトの開発に励む。すなわち未来の豊かな社会に応えるために日々努力を重ねているのだ。または社会課題の解決を図り、それを持続的に行うための事業を展開している。私たち個人が安心して暮らせるのも、そうした企業が現在、そして未来を良くしようと頑張っているから。そしてそんな企業で働いているのは実は本書の読者かもしれない。

第一のリターンは「社会の成長」

社会課題を解決し、または未来を創造する企業が見事に成長したら、それこそが第一のリターンである。投資家だろうと誰だろうと、良い未来になるほうが嬉しいに決まっている。そんな未来づくりに参加できるのが投資の醍醐味なのだ。

まだ結果の出ていないころから「企業が事業リスクを背負うなら、こちらは金銭リスクを一緒に取ろう」とするのが投資家の役割だ。企業と共に未来を見据え、未来に希望を抱いて。そして先に述べたように社会の成長という万民のリターンを享受した暁には「一緒にリスクを取ってくれてありがとう」と企業からリターンがもたらされる。

投資リターンとはすなわち企業が積み上げた利益の分配である。企業の価値自体が大きくなり、株式を売却したらとんでもないキャピタル・ゲイン(売買差益)が期待できるかもしれない。株価100円のころに投資をし、企業が売上・利益をグローバルで成長させ1万倍となったら株価も1万倍近く上がるだろう。その結果、100円だった株価は100万円になる。すごいことだ。もちろん、応援する企業の株は売りたくないと考えることも。そうであれば保有する株式の一部(たとえば100株持っていたら50株だけ)を売るという選択肢もある。半分の株式売却でも十分な利益を得られ、なおかつ半分の株式は今後も持ち続けることができる。さらには企業から配当金がもたらされることも。これをインカム・ゲインというが、企業の株式を売らずして企業から分配がされるのだ。

リターンは「戻るもの」

そもそもリターンとは「取る」とか「得る」という意味ではない。「戻る」や「返る」が正しい。投資したおカネが大きくなって未来にて戻るものだ。
辞書を引くと、それ以外の言葉からも本来の意味を知ることができる。たとえば「株主」。英語では「シェアホルダー」というが、シェア=分配、ホルダー=所有者とするならば、育んだ果実を分け合う仲間のようなイメージを持つことができるだろう。誰と分け合うかって? それは企業の従業員、取引先、顧客などのステークホルダー全員とだ。決して株主だけが儲けていいわけではない。

せっかくなので「リスク」という言葉の意味も調べてみると、「怖い」とか「危ない」という意味でないことが分かる。正しくは不測の事態が起こる可能性とか不確実性となる。
好きな人がいるとする。告白するには勇気が必要で、告白しないと恋が成就することもフラれることもない。つまり、リターンにはリスクが付きもので、リターンの可能性こそがリスクとも言える。なお、リスクの語源はイタリアにあり「勇気をもって試みる」のようだ。

【結果がなかなか出なくても、自分を信じられるか】
企業の理念を理解し、いざ投資をはじめてみたがどうも結果が見えてこない。企業は変わらず努力をしているが、それがなかなか実らない。そうしたとき、投資家はどういった心持ちでいればいいだろうか。答えは簡単。そんな企業を応援し続けたいかどうかを自問するのだ。

企業活動は人の努力と創意工夫の結集であるが、ときが満ちない、計画よりもう少し時間がかかるなど、さまざまな理由で遅延したりうまくいかないことも。しかし企業は夢を諦めずに走っている。そうした状況は理解できるものの、それでも結果に結びつかないと投資家としては焦ってしまう。「本当にこのまま投資を続けていいのだろうか?」「本当は失敗なのでは?」「早めに手を切って損失を拡げないようにするべき?」と不安が募り、ときに間違った判断を下してしまうことも。

物事がうまく運ばないときは普段よりも多くのノイズが耳に入ってくる。「かなり難しい状況みたいだよ」とか「誰々はもう手を引くって」とか。そうしたノイズが投資家から自信を奪っていく。特に市場暴落のような個別企業に関係のない事象は投資家を悩ませる大きな要素だ。企業の応援と自分の資産、どちらが大切かといった天秤が目の前に現れるからだ。

大切なのは、その企業を信じられるか…… ではない。企業を応援すると決めた自分を信じられるかだ。

他人の噂や一時の事象で自分の価値観を壊す必要はない。むしろ、そういうときこそ価値観を信じられないと自分自身を見失ってしまう。投資の継続か生活防衛かといった天秤の件は仕方ないものの、ちょっとした揺れで価値観や美意識を喪失していては、その後の投資活動もまともにできない。
もちろん、企業がおかしくなったとか、自分が考える未来が変わったなどのシナリオ変化には丁寧に対応すべき。自分の信じる相手を複数に分散させるっていうのも資産運用の王道だ。

長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする
澤上 龍(さわかみ・りょう)
日本初の独立系直販投信、さわかみ投信代表取締役社長。1975年千葉県生まれ。2000年5月にさわかみ投信株式会社に入社後、ファンドマネージャー、取締役などを経て2012年に離職。その間、2010年に株式会社ソーシャルキャピタル・プロダクションの創業、2012年に関連会社の経営再建を実行し、2013年にさわかみ投信株式会社に復帰、同年1月に代表取締役社長に就任。現在は、「長期投資とは未来づくりに参加すること」を信念に、その概念を世の中に根付かせるべく全国を奔走中。コラム執筆や講演活動の傍ら起業や経営の支援も行う。

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