本記事は、澤上 龍氏の著書『長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする
(画像=Rummy_&_Rummy/stock.adobe.com)

おカネがあっても豊かになれない

消費(需要)と生産(供給)はセットである。買いたい人(需要)ばかりでも、売る側(供給)が不足していたら経済は成り立たない。では、おカネを持っていても買うことができないとはどのような状況を指すのだろう。

供給過剰の経済

供給ばかりで需要がない経済(供給過剰)のケースが分かりやすい。たとえば企業がモノをつくりすぎ、在庫が余っている状態などがそれだ。買いたい人が圧倒的に少なければ、企業は大幅値下げをしてでもモノを売り捌きに動く。しかしいくら安かろうと要らないものは買われないので、最終的に不良在庫は廃棄する羽目になるかもしれない。

人員が過剰なレストランでも同様だ。雨などで客足が減れば、スタッフ数に見合う売上が立たず、赤字が続けば人件費を削減せざるを得なくなる。
モノやサービスが過剰なとき、企業は苦渋の決断で縮小に動く。モノを破棄することで赤字になったり、人を解雇することで解雇された人の生活が不安定になったり…… これが個別の個別企業の事象でとどまらずに社会全体に広がれば、それはすなわち経済が悪化する場面だ。
しかしなぜそのような状況になってしまうのか。

自由な経済では、企業も個人もより儲けたいと欲を出す。もっと買ってくれそうだなと生産を拡大し、お客さんにたくさん来てほしいとスタッフを拡充する。景気が良い時期ではその戦略が当たり大いに儲けられる。しかし好景気は長続きせず、どこかで引き締めるタイミングとなる。それが景気後退期だ。つまり、欲得に自由に行動できるからこそ景気循環が生まれる。仮に計画された経済であっても、生産過程や配送過程でのロスなどが積み上がり、どこかで歪となって経済という水面に波紋が生じる。その波紋が徐々に大きな波となり、つまり好景気・不景気の循環となっていく。

恐ろしいのは、供給不足の経済

一方で、需要ばかりで、供給が不足する状態はどうだろうか。単に買い意欲が旺盛な強い経済であれば、時間が経てば供給も充実されるだろうから問題ない。しかし供給不足はそれだけではない。もっと恐ろしい事態も想像しておいていいだろう。

企業がしっかりとした富を得られず、真っ当なサービスを提供できないとしたらどうなるか。極端なケースだが、たとえば日本中の飲食店が疲弊しきってスタッフ教育に余裕がなくなり、安心・安全な食材を提供できなくなったら? 安全かどうか分からない食材を出されても、他に選択肢がない以上、仕方なく受け入れざるを得ない。

かつての日本や途上国の映像を見ると、衛生環境が劣悪だと思わされるものがあるが、それが当たり前の状況であれば疑問も持たずに受け入れるだろう。仮に今、かつてのような状況に戻ってしまった場合、私たちは素直に受け入れられかは疑問だ。

もっとおカネを払うから清潔に、そして安心・安全の食を届けてくれ。そう願っても、企業が疲弊をしてしまったら元も子もない。仮におカネをたくさん持っていたとしても、供給側が充実していないとおカネの使い道が限られてしまうという極端な事例を述べてみた。

次にこのようなことも考えておきたい。「自分、自分」の独りよがりでおカネ持ちになれたとする。しかし普通に暮らしている知人・友人はそんなわけではなく、貧富の差が生まれてしまうケースだ。ちょっと贅沢な遊びをしたいと思っても、その遊びに付き合ってくれる友人はいない。一度目はご馳走してあげたとしても、何度もおごることは相手のプライドを傷付ける。または、本当の友人ではなく、おカネ目当ての関係に成り下がってしまうかも。

長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする
(画像=長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする)

社会全体で豊かになることが不可欠だ

おカネがあっても豊かになれないとはつまり、社会全体で豊かさを獲得しないとおカネがおカネの役割を果たさないということ。おカネは社会・経済を循環するもの。その循環を断ち切り、自分の手元だけを充実させても意味がないのだ。
知人・友人のみならず社会全体におカネが行き届き、そして個人と企業が同じ速度で成長できるような関係をつくらなければ、本当の豊かさは得られないだろう。したがってキレイごとではなく、真に豊かさを求めるならば、社会全体を豊かなものにする意識を持たなければならない

もちろん努力した人、才覚ある人が多くのおカネを手にする自由な国であるべきだと思う。しかしそうした、おカネを手にした人たちが社会全体を豊かにしようという意思がないと、必ず歪が生まれる。
おカネ持ちだけでなく、おカネを手にした人すべてが「おカネに想いを乗せられる」ようになればいい。
おカネ自体に価値はない。おカネは使うことに価値がある。だとしたら、一緒に使ってくれる知人・友人のみならず、使う相手である企業と共に成長を目指さなければならないのは至極当たり前のことなのである。

長期投資家の思考法 資産を増やし、社会を豊かにする
澤上 龍(さわかみ・りょう)
日本初の独立系直販投信、さわかみ投信代表取締役社長。1975年千葉県生まれ。2000年5月にさわかみ投信株式会社に入社後、ファンドマネージャー、取締役などを経て2012年に離職。その間、2010年に株式会社ソーシャルキャピタル・プロダクションの創業、2012年に関連会社の経営再建を実行し、2013年にさわかみ投信株式会社に復帰、同年1月に代表取締役社長に就任。現在は、「長期投資とは未来づくりに参加すること」を信念に、その概念を世の中に根付かせるべく全国を奔走中。コラム執筆や講演活動の傍ら起業や経営の支援も行う。

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