スーパーマーケットの業界地図が今年を境に大きく塗り替わる。7月に西友、9月にイトーヨーカ堂が新たな親会社の傘下で再出発するからだ。これに伴い、イオンの“1強”時代の到来が見込まれる。
トライアル、KKR傘下の西友を買収
西友を7月1日付で買収するのは九州を中心にディスカウントストア「トライアル」を展開するトライアルホールディングス。約3800億円を投じ、米投資ファンドのKKRから全株式を取得する。これにより、連結売上高1兆3000億円規模の小売グループが誕生する。
トライアルは、「ドン・キホーテ」を運営するパンパシフィック・インターナショナルホールディングスに次ぐディスカウントストア2位。340を超える店舗を持つ。西友を傘下に収め、関東、中部、関西エリアでの事業基盤を迅速・効率的に確立するのが狙い。
西友の店舗数は約240。昨年、九州でのスーパー事業をイズミに、北海道のスーパー事業をイオン北海道に売却し、本州への特化を鮮明にしていた。
西友は旧セゾングループ(西武流通グループ)が2001年に事実上解体されたのに伴い、02年に米ウォルマートの傘下に入った(ウォルマートによる完全子会社化は09年)。
しかし、西友の業績が上向かず、2021年に米KKRに経営権が移った。ウォルマートが保有株式の65%をKKR、20%を楽天グループに売却したもので、その後、楽天も保有株をKKRに手放した。
セブン、コンビニ集中でスーパー事業売却
一方、セブン&アイ・ホールディングスはコンビニ事業に集中するため、スーパー、専門店、外食などの事業を約8100億円で売却する。具体的にはイトーヨーカ堂をはじめ、ヨークベニマル、ロフト、赤ちゃん本舗、デニーズなどが対象だ。受け皿は米国投資ファンドのベインキャピタル。
ただ、セブン&アイはベインが設立する買収目的会社に約35%、創業家も約4.9%を再出資し、経営への関与を残す。一連の取引は9月1日に完了する見通し。
セブン&アイは祖業である総合スーパーのイトーヨーカ堂で低収益店舗を次々に閉鎖し、衣料品販売からの撤退も決断。2023年には百貨店子会社「そごう・西武」を別の米国ファンドに売却した。
ここへきて構造改革を加速する背景には、昨年夏以来、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていることがある。
対抗策として創業家による買収計画が検討されてきたが、資金調達(8~9兆円)にめどが立たず、不発に終わったのは今年2月末。非中核事業と位置付けるイトーヨーカ堂などの切り離しが避けられなくなった。
セブン&アイはコンビニ事業への集中による単独路線を維持する方針に変わりない。そのうえで、外部提案(クシュタールの買収提案)と単独成長の二つの選択肢を並行して検討するというのが基本スタンス。
同社では5月末、スティーブン・ヘイズ・デイカス氏が社長に就任し、初の外国人トップに経営のかじ取りを委ねた。クシュタールの買収提案に対抗するためには、収益構造を強化し、単独成長路線に道筋をつけることが不可欠で、デイカス新社長の手腕が問われる。