本記事は、三冨 正博氏・中谷 昌文氏・川島 優貴氏の著書『AI時代!「ワクワク仕事」の成功法則』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスシーン、生成AIを活用したデジタルワークフロー、クラウド、DX、デジタルネットワークイメージ
(画像=メトロホッパー / stock.adobe.com)

挑戦と学習を尊重する組織へ

自分の、そして組織の「ワクワク」に気づき、それをAI導入の「目的」として明確に設定できたとき、プロジェクトの風景は一変します。これまで停滞していた空気が嘘のように、組織全体に新しいエネルギーが満ち溢れ、プロジェクトは力強い推進力を得て前進し始めるのです。

それは、ただ単に「やる気が出た」という精神論だけの話ではありません。

「ワクワク」を軸に据えることで、組織の文化そのものが、「挑戦」と「学習」を心から尊重する、しなやかで創造的なものへと変革していくからです。

「やらされ仕事」から「自分たちのプロジェクト」へ

「上からの指示だから」「決まったことだから」という動機で進められるプロジェクトは、どうしても「やらされ感」がつきまといます。メンバーは、決められたタスクをこなすことに終始し、主体的な意見やアイデアを出すことをためらいがちです。

失敗を恐れるあまり、前例踏襲の無難な選択に流れ、新しい挑戦を避けようとする空気も生まれるでしょう。

これでは、AIという革新的なテクノロジーを導入したとしても、その可能性を最大限に引き出すことはできません。

しかし、プロジェクトの目的が「自分たちのワクワク」と結びついた瞬間、それはもはや「誰かの仕事」ではなく、「自分たちのプロジェクト」へと変わります。

「どうすれば、あのワクワクする未来を実現できるだろう?」
「この課題を解決できたら、最高に面白いんじゃないか?」

メンバー1人ひとりが当事者意識を持ち、目を輝かせながらアイデアを出し合い、主体的に行動し始めるのです。

そこでは、役職や年齢に関係なく、誰もがフラットな立場で意見を交わし、互いの知恵と経験を尊重し合います。AIは、その対話を加速させるための「触媒」として機能し、メンバーの創造性をさらに引き出してくれるでしょう。

こうしたボトムアップのエネルギーがプロジェクト全体の推進力となり、トップダウンの指示だけでは決して到達できないような、革新的な成果を生み出していくのです。

「失敗」が「学習」に変わる瞬間

「挑戦」には、常に「失敗」のリスクが伴います。そして、これまでの多くの組織では、失敗は「許されないもの」「避けるべきもの」として捉えられてきました。

一度失敗すれば、評価が下がり、キャリアに傷がつく。そんな恐怖が、社員たちの挑戦する意欲を削ぎ、組織全体を萎縮させてきたのかもしれません。

しかし、「ワクワク」を軸にしたプロジェクトにおいては、この「失敗」の定義そのものが大きく変わります。なぜなら、その挑戦が「心からやりたいこと」に基づいている限り、たとえ期待した通りの結果が出なかったとしても、そのプロセスから得られる「学び」や「気づき」は、決して無駄にはならないからです。

「このやり方ではうまくいかないことがわかった。これも大きな前進だ」
「今回の失敗から、新しい課題が見えてきた。次はこう試してみよう」

失敗は、もはや「終わり」ではなく、次なる成功に向けた貴重な「学習データ」へと変わります。そして、AIはこの「学習」のプロセスにおいても、強力なパートナーとなります。

失敗の原因をAIと共に分析し、改善策を模索し、次のアクションプランを立てる。そうした試行錯誤のサイクルを高速で回すことで、個人も組織も、驚くほどのスピードで成長していくことができるのです。

リーダーに求められるのは、失敗を責めることではなく、むしろ「よくぞ挑戦してくれた!」と、その勇気を称え、失敗から得られた学びを組織全体の財産として共有する姿勢です。

挑戦と学習が尊重される文化が根づいたとき、社員たちは失敗を恐れることなく、AIと共に大胆な仮説検証を繰り返し、やがて大きなイノベーションの種を芽吹かせるでしょう。

「学ぶ」ことが、自然な「喜び」になる

「ワクワク」を原動力とする組織では、「学習」に対する考え方も根本から変わります。これまでは「会社から与えられる研修」や「昇進のために必要な資格取得」といった、どこか受け身で義務的なものと捉えられがちだった「学び」が、「自分のワクワクを実現するために、自ら求めるもの」へと変わるのです。

「あの新しいAIツールを使いこなせれば、自分のアイデアをもっと面白い形で表現できるかもしれない!」
「この分野の知識を深めれば、プロジェクトの課題解決に貢献できるはずだ!」

学びは、もはや「コスト」ではなく、「未来への投資」となります。そして、その動機が内発的なものであるがゆえに、学習の質も、その後の定着度も、格段に高まります。

社員たちは、誰かに強制されるまでもなく、自ら情報を収集し、セミナーに参加し、AIとの対話を通じて新しいスキルを習得していくでしょう。

こうした「学習する組織」への変革は、変化の激しいAI時代において、企業が持続的に競争力を維持していくための、最も重要な鍵となります。そして、その変革の起点となるのが、社員1人ひとりの「もっと知りたい」「できるようになりたい」という、純粋な「ワクワク」に他ならないのです。

「ワクワク」が経営のOSを変える

個人の、そしてチームの「ワクワク」が、プロジェクト全体の推進力を高め、挑戦と学習を尊重する文化を育んでいく。この変化は、やがて組織の隅々にまで浸透し、経営そのものの「OS」をも変革していく可能性を秘めています。

これまでの経営が、売上や利益といった「数字」や、トップダウンの「管理」を中心に動いていたとすれば、これからの経営は、社員1人ひとりの「ワクワク」や「情熱」といった、目には見えない「エネルギー」を中心に動いていくことになるでしょう。

リーダーの役割は、社員を管理し、指示することから、彼らの内なるワクワクを引き出し、それが組織全体の目標と共鳴するように導く「ファシリテーター」や「伴走者」へと変わっていきます。

AIは、その変革を力強く後押ししてくれるはずです。AIが定型的な管理業務を補助してくれることで、リーダーはもっと人間的なコミュニケーションに時間を使うことができます。AIが多様なデータを可視化してくれることで、組織全体の「ワクワク」の源泉がどこにあるのかを、より深く理解することができるようになるでしょう。

「ワクワク」を起点とした変革は、決して一朝一夕に成し遂げられるものではありません。しかし、その小さな火種を大切に育て、組織全体で共鳴させていくことができたとき、あなたの会社は、AI時代に真の価値を発揮する、創造的で、人間味あふれる、新しい経営の姿を体現しているに違いありません。

AI時代!「ワクワク仕事」の成功法則
三冨 正博(みとみ・まさひろ)
1987年青山学院大学経営学部卒業後、アーサーアンダーセン東京事務所に入所。1919年から9年間、アーサーアンダーセンのサンフランシスコ、シアトル、アトランタの3拠点で公認会計士として経験を積む。2000年に日本に帰国、ベンチャー企業でCFOとして部門を統括する。2001年に株式会社バリュークリエイトを共同創業。ベンチャー企業から大企業まで企業の規模・業種を問わず、経営者に企業価値創造の視点を提供している。慶應義塾大学大学院経営管理研究科非常勤講師、株式会社SUMCO社外取締役。日本とアメリカの公認会計士の資格を持つ。 「ワクワクtoできる」の2軸のマッピングは、大学受験に失敗した19歳からひたすら自分のワクワクを追求する中で経験した自身の成長を見える化したフレームワーク。
中谷 昌文(なかたに・よしふみ)
長年にわたり教育現場で指導にあたり、さらに米国・英国・中国への留学経験を通じて経営学や金融学、教育学を深めてきました。教師時代の経験を礎に、社会起業家として数々の教育・ビジネスプロジェクトをスタート。NIKEのエアマックスを日本に広めた経験や、児童支援として続ける「ランドセル基金」など、社会に貢献しながら結果を出す活動を続けています。
川島 優貴(かわしま・ゆうき)
AIパートナーズ株式会社 代表取締役 経営者や従業員のAI教育分野を中心に、AIを活用した学びとビジネス支援に取り組む。 子ども向けAI教育「ロジカルAIスクール(ロジスク)」を主宰し、小学生を含めた幅広い世代にAI時代を生き抜く力を育む活動を展開。 企業研修や講演も多数行い、実践的かつわかりやすい指導に定評がある。 最新のAI活用法をわかりやすく伝えることで、多くの人が「ワクワクする未来」を切り開くことを目指している。

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