本記事は、中島 健寿氏の著書『年上との話し方で人生は変わる』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

年上からの信頼は成功を引き寄せる
私が「年上からの信頼の力」を本気で理解したのは、23歳の時、ビジネスを始めて半年ほど経った頃だった。
当時の私は、まだ実績も知識も乏しく、ただただがむしゃらに動いているだけの若造だった。
そんなとき、ある年上の起業家に食事の席に誘われた。
その場では、私はとにかく話を聞いた。相手の話に耳を傾け、目を見てうなずき、素直に学ぼうとする姿勢を示した。自分を大きく見せる必要はない。分からないことは「分からない」と言い、感謝の気持ちを率直に伝えた。
数日後、その方から連絡がきた。
「君に会わせたい人がいる。紹介するから行っておいで」
そこから、ビジネスの流れが変わった。人がつながり、チャンスが広がり、組織が大きくなっていった。まさに、信頼が扉を開いた瞬間だった。
この経験を通して学んだのは、努力や実力よりも先に信頼が来るということ。
特に年上からの信頼は、自分だけでは届かない世界に連れて行ってくれる。
心理学の視点から見ると、これは「世代間伝達(generativity)」という概念で説明できる。人は年齢を重ねるごとに「若い世代に何かを残したい」という本能的欲求を持つ。だからこそ、年上の人は「応援したくなる若者」を本能的に探しているのだ。
また、社会学的にはこれを「社会資本(social capital)」とも呼ぶ。信頼やつながりは、単なる人間関係ではなく、未来を切り開く資産になるという考え方だ。
年上からの信頼は、結果が出たから得られるものではない。むしろ逆で、信頼されたからこそ、結果がついてくる。
誠実さ、素直さ、そして相手の経験を尊重する姿勢。
たったそれだけで、人生の風向きは変わる。
私自身がそれを、身をもって体験してきた。
引き上げられる人がうまくいく理由
努力は裏切らない。
そう信じて、誰よりも走り、誰よりも働いた時期がある。
1年間は365日。その内、364日は働いた。
けれどある時、こう感じた。
“自分だけの努力では、越えられない壁がある”と。
当時、ビジネスを始めて1年目。毎日必死だった。
朝早くから夜遅くまで働き、結果を追い、自己成長にも力を注いだ。
でも、成果は出ない。焦りだけが積み重なっていった。
そんなある日、信頼している方にこう言われた。
「努力できることも大きな才能だけど、誰かに引き上げられるのも才能なんだよ。無理に1人でやろうとするな」
その言葉にハッとした。
振り返ってみると、私は誰にも頼らず、心を開かず、ただ“頑張っている姿”だけを見せようとしていた。
でも、それは人の心を動かす姿ではなかった。
その後、「引き上げられる人」とは何かを考えるようになった。
最初は正直、答えが出なかった。「頼るってどういうことだろう」「自分の努力とどう両立すればいいのか」と悩んだ。
“誰かに引き上げられる”なんて、才能がある人の特権のようにも思えた。
でも、そうじゃないと少しずつわかってきた。
応援される人は、特別なことをしているのではなく、周りとの関係の中で「信頼されるふるまい」を重ねているのだと気づいた。
そこからわかったのは、「自分を信じてくれる人との信頼関係」が、努力の何倍もの速度で人生を前に進めてくれるという事実だった。
心理学では「援助要請のスキル(help-seeking behavior)」が高い人ほど、ストレスに強く、成果を上げやすいという研究がある。つまり、人に頼れる人こそが、結果を出しやすいということだ。
また、成功者の多くは、必ずと言っていいほど「誰かに引き上げられた経験」を語っている。それは運ではない。信頼される振る舞いと、頼る勇気が呼び込んだ必然なのだ。
努力は裏切らない。これは素晴らしい言葉だ。だが、それだけでは届かない世界がある。そこに行くには、「この人を応援したい」と思わせる人間力が必要だ。
言葉を付け加えるなら、「正しい努力は裏切らない」だろう。それが、引き上げられる力であり、人生を変える力である。
人生が大きく前進する場面には、必ず誰かの手がある。
そしてその手は、努力の先にあるものではなく、「人との関わり方」の中に存在しているものだ。

わずか3年で世界10カ国以上で展開し、1万人以上の組織を作る。
ビジネスの傍ら、現在は、これまでの経験をもとに「信頼され、引き上げてもらえる人になるためのコミュニケーション術」を軸にセミナーや講演を全国で展開。
また、10歳で野球を始め、中学時代には専用グラウンドもなくわずか5人しかいないチームを2年で日本一に導く活躍を見せる。15歳で日本代表として国際大会に出場し、アジア大会準優勝。白鷗大学足利高校時代には同校初の選抜甲子園出場を果たす。
大学時代には明治神宮野球大会で人生2度目の日本一を経験。それぞれの世代で常に学生野球の頂点を極めてきた。 プライベートでは5歳、3歳、0歳の三児の父。
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